紳人と神使、似た者同士?④
こうしてはいられない!
俺が取るべき行動は…ただ一つ。
「サラバダッ!」
脱兎の如く逃げるのみ…!
迷わず背中を向け、その場から一目散に逃げ出した。
「てゃ!」
「うわっ!?」
しかし。一瞬にして俺の首にパシッとコンの尻尾が掛けられてしまう。
「ダメですよ弟くん?」
「一緒に来て欲しいです〜♪」
続けて両腕をウカミの尻尾に、両足をクネツに絡め取られ完全に身動きが取れなくなった。
もふもふ故に痛くはない…寧ろ幸せ!
でも今ばかりは
「いやだぁ!絶対何かあるゥ!」
「そんな…ただ、クネツたちのもふもふに熱烈な歓迎があるだけですのに」
「もふもふだって?」
耳聡く拾った単語に、反射的に反応し思い切り振り返る。
「はい!きっと紳人さんが人間だと知ったら、皆喜んで触らせてくれますよ」
「で、でも…失礼じゃないかな…?」
「此処でクネツの誘いを断る方が失礼です!」
クネツの言うことも一理あるな…。
まぁ確かにそうだよね、うん。やっぱり誘われたのにみすみす断るのは申し訳ないもふ!
「
『……』
しまった、つい思考が漏れてしまった。
「お主というやつは…」
「ま、待ってコン!これには深い訳が!」
「問答無用じゃ!もふもふなら誰でも良いのかぁ!?」
「ちががががっ!!」
首の尻尾に締め付けられ壊れた機械のような声になる。く、苦しい…!
コンがプンプンと怒りながら両手を下に突き出し、耳を忙しなく揺らしながら頬を膨らませる中。
何とか声を出そうとするも首が締められ言葉にならない声しか上げられないので、状況はじわりじわりと悪化していく。
「ぐぉぉぉぉ…!」
「他のもふもふに浮気せぬよう、今ここで教え込んでくれる!」
「……何となく分かるです。これ、いつものことなんですね?」
「お察しの通りです…」
何だか苦笑いを浮かべるウカミたちがいる気がするが、今はそれどころではない。
というより何故か腕と足の拘束が外れないので動きようがないのだ。
「……お主には、わしが居るんじゃから。好きなだけ…もふもふして良いんじゃぞ?」
「コ、ン」
拗ねるように口の中で呟くコン。物凄く可愛い!
和服の袖をはためかせながらいじいじと指遊びする姿も愛らしく、今すぐに抱きしめたい。
「お、れは…」
せめて意識を失う前に、全身全霊で俺は声を上げた。
「コンを…愛、してる」
「!」
「絶対、浮気、しない…!」
「紳人…ふふ、約束じゃぞ?」
フッと嬉しそうに頰を赤らめるコンの微笑みと共に、しゅるりと首にかかる尻尾の力が緩んでいく。
あぁ、約束だ。浮気はしない…!
でもちょっともふもふを撫でさせてもらうことはあるかもしれないけど。
「……」
ピクッと肩を弾ませたコンが、尻尾の動きを止めた。
そして何と、ドンドンと先程よりも強く締まって…!?
「少しは…反省せぬかぁぁぁ!!」
「ごめんなさぁい!!」
ゴキリ!
「ヌァァァァ……」
こうして俺は己の未熟さにより、結局気絶させられてしまうのだった。
〜〜〜〜〜
「全く、紳人はもふもふと聞けばすぐ目の色を変えおって!その癖、最近はじっくりわしの尻尾をモフらぬとは…」
「コンはもっと弟くんに自分を求めてほしいんですね?」
「当然じゃ。これは気絶してる間にしっかり仕込んでおかねば」
「起きたら説教とかじゃないです!?」
紳人の上に毛布代わりにわしの尻尾を被せながら、何やら驚いておるクネツに諭す。
「此方の方が確実じゃし、紳人は理性が働きすぎて襲うなんて真似は出来ぬからな。意識が無いうちにそのリミッターを解除するしかあるまい」
「なるほど…なるほど…?」
「弟くんのもふもふ好きは本当に筋金入りですから、里に行く前で丁度良かったかもしれませんね!」
……その時の何とも言えない表情のクネツが気に掛かり、これは後に聞いたことなのじゃが。
"神様と人間が一緒に暮らしたらこうなっちゃうのかな?"と思ったらしい。
はて、特段変わったことなど思いつかぬがなぁ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます