第40話
紳人と神使、似た者同士?①
あの後、気絶して目覚めたのは数分後。
流石にアマ様たちも驚きの回復力だったようで、若干変なものを見る目で見られてしまった。
至って普通の人間…のつもりではあるんだけれど。
まぁその後は正常に眠りについて、やっぱり一波乱あった激動の朝が過ぎアマ様たちとは宿の外で別れた。
「またいつでも来るんじゃぞ〜!」
「アマ様はお仕事しましょうねぇ」
「助けておくれ!」
別れ際にアマ様が何か言ってた気がするけれど、コンもウカミも背を向けて歩き出していたので気のせいだろう。
さて、今日は日曜日。
だけど神様は左右に居るので、死んだように生きる心配はしなくて良い。
「この後はどうするの?お家に帰ってゆっくりする?それとも、まだ何か「見つけました〜!」えっ」
キョロキョロと辺りを見回したが、まだアマ様の海を離れて少ししか経っていないので他の神様の姿は見えない。
「上じゃ、紳人!」
「ッ…」
バッと顔を上げた俺の視界に映ったのは!
「わ、わわ〜!?危ないのです〜!」
---青と白の、青空のようなストライプだった。
「むぐぅ!?」
顔にそれが押し付けられたかと思えば、ドシーン!と勢いよく地面に押し倒されてしまう。
危うく訳もわからず頭を強打するところだったけど、頭の下にとてももふもふしたものが敷かれていたので無事だ。
この感触は…コンの尻尾で間違いないだろう。
どうやら、咄嗟に尻尾で助けてくれたんだね。二つの意味で頭が上がらないや。
「うぅ…柔らかいクッションの上で助かったですよ」
「これこれ、わしの旦那と尻尾をクッション扱いするでないぞ」
「へ?ひゃわあ!ごめんなさいですぅ!」
身動ぐ気配がしたと思えば突如として視界が開ける。うおっまぶしっ。
「コン、尻尾ありがとう。お陰で助かったよ…痛くなかった?ごめんね、俺が不注意だったよ」
「なぁに。見ての通りもふもふじゃからな、この程度へっちゃらじゃ。紳人が無事であればそれで良い」
「本当?良かったぁ…」
余裕綽々と言った様子でその尻尾を揺らして微笑むコンに、思わず胸を撫で下ろした。
俺を庇ったせいでコンが痛い思いをするのはあってはならないことだから。
不意に視線を動かすと、ウカミは微苦笑を溢しながら隣で所在なさげに立つ見慣れない
黒い髪と狐の耳尾を持ち、巫女服を着ながらも指を遊ばせる彼女へと声をかけた。
「えっと、貴女は大丈夫ですか?すみません俺が居たばかりに」
「いえいえそんなです!クネツこそ、おっちょこちょいで…ウカミ様たちを見かけたと里の者に聞いたので慌てちゃったです」
自分の名前を一人称にする、微笑ましいクネツがしょんぼりと項垂れる。
里の者という単語が気になるけれど…そんなことはどうでも良い。
ひとまずは、
「俺のことは気にしないで。君に怪我が無くて本当に良かった、次からは足元に注意するんだよ」
「-----」
落ち込んでいるクネツを元気付けてあげないと。
俺はコンのお陰で、クネツは俺が下敷きになった結果無傷だったのだから気にしなくて良いんだ。
さわさわ…と無意識にその頭を撫でながら微笑んでいると、全員の稀有な視線が俺に注がれていることに遅れて気付く。
「あっ…す、すみません!俺ってば失礼なことを…!」
「い、いえ…気にしないで、です。敬語も使わなくて良いですよ?クネツは神使、神様たちの使いですので」
ポンと自身の胸に手を当て、にへっと人懐っこい笑みを浮かべるクネツ。
神使…初めて見たよ。
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