徒に咲く、戯れの花②
キーワードは…ってこれ以上はいけない。
如何にこの状況を乗り切るか、だけど…ウカミたち
いや、かなり良い案ではあるが正直水着姿のコンに向き合ったまま体を洗われたら元気が溢れてしまい、確実に一大事と化すね。
それは本当にまずい。
男の子だね〜と笑ってくれたならまだ良いけれど、男の子だもんね…と理解を示される方が気まずくて一生引きずってしまう気がする。
もう一つ言ってしまえば、俺は以前似たような状況に陥った際気絶してしまっているのだ。
その間、無事である保証はない…!
コンはかなり純粋なのでウカミたちにあれやこれやと乗せられてしまう可能性もある。
己の貞操をしっかり守りたいのであれば、まずはコン以外と一緒に入ることを避けなければ。
……正直、嘘は付きたくないけど。
嘘も方便。ここはあの手で行こう…!
「じゃあ、こうしよう!」
『?』
パンと手を打って皆の注意を引きつつ、努めて明るく提案する。
キョトンと俺を見る視線の中鞄から取り出したのは…こんなこともあろうかと忍ばせておいた、トランプだ。
「
「ふむ…良かろう!紳人が言うのであればわしに異論はないぞ」
「私も大丈夫です」
「腕が鳴るのじゃ…」
「負けませんよ〜?」
全員が食い付いたのを見て、かかった!と俺は内心笑みを浮かべながら山札をシャッフルしてカードを配り始める。
この勝負どう転んでも俺の勝ちだ。
作戦というほどでもないため、簡潔に…説明しよう!
まず、コンを含むこの四神がババ抜きに興じている隙に俺はトイレと称して部屋を後に。
そのまま速攻でお風呂場へと向かい、体をしっかり洗い脱衣場に戻り着替える。
最後に部屋へ戻り「ごめん、盛り上がってるみたいだったから先に入っちゃった!」と嘯けば。
お小言は貰うかもしれないけど、俺の理性と貞操は保たれるという寸法さ!
ふふふ…我ながら完璧な作戦だ、この作戦に穴があったら入りたいくらいだね。
「紳人?どうしたのじゃ、楽しそうな顔をして」
「あぁ…俺、こういうディーラー的なの好きだからさ。楽しくって、つい」
「そうか。お主が楽しいのなら…わしも楽しいのじゃ」
配られ、揃った手札を場に捨てながら微笑むコン。
良心の呵責に激しく苛まれるも鋼の意志で何とか堪え、俺は立ち上がった。
「それじゃあ、俺はちょっとお花摘み行ってくるね」
「気を付けるんじゃよ〜」
「了解」
口々に見送られ逸る気持ちを抑えて廊下へ。
部屋の中から見えない位置まで来たけれど、まだ油断は出来ない。
足音から向かったのがトイレではないとバレてしまう。
あくまで慎重に、冷静に。ステイ•クール…本来と使い方は違うけど。
そして。
ついにお風呂場へと辿り着いた俺は、『女』『男』の赤と青の暖簾を前に一瞬足を止めた。
普通に考えれば、迷うことなく男の方に入るのが自然だ。
けれどもし、彼女たちが何らかの理由で此処に訪れたら?
これまた一瞬の躊躇いもなく、男湯へと飛び込んでくるだろう。
で、あれば!
「実質の貸切だから、許してくださいっと」
俺は、意を決して女湯の方へと飛び込んだ。
思い返してみれば……この時の俺は、どうかしていたとしか思えない。
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