波打ち際、煌めく光④
「大体、あのメンバーでビーチバレーなんてしたら…」
弾むボールは一つでは済まなくなってしまい、最早ボールはおろか俺はコンしか見れなくなってしまうだろう。
いや、それすらも困難だ。
確かにコンはこの場にいる皆に比べたら胸のサイズは控えめだが、決して無いわけではない。
コンの所作に応じて可愛らしく揺れるのだ。
水着なので、それはより顕著に見え…理性はギリギリと締め上げられている。
つまり!
「組む相手如何に関わらず、俺が目覚めかねない…!」
どんな時でもコン以外の神様に襲い掛かること、他の誰かに見られている状況でそういうことをすることはないと断言できる。
かと言ってそう易々とコンを求めるのは…愛し合っているとはいえ、軽んじているみたいで良くない。
ビーチバレーを回避する、かつ全員と楽しく穏便に過ごす。
両方やらなくちゃならないのが俺の辛いところだな…。
「うーむ。全員を宥めるにしても逃げちゃったからな…話をする前にお仕置きされかねない」
「全くじゃ。せめてわしは連れて行かぬか、たわけ!」
「いやぁ面目な…何でコンが此処にいるの?」
木陰に隠れ1人うんうんと唸っていると、突然コンが俺の隣に立っていた。
そしてそのまま、胡座をかいていた俺の上に前からちょこんと座る。
相変わらず軽い。それでいて柔らかくて…いい匂いだ。
「お主のことじゃから争いになるのを避けたんじゃろうが…まぁそれは良い、その優しさはわしも好きなところよ。けどのう、あそこは謝るのであればわしと一緒に逃げてほしかったのじゃ!」
「うっ…ごめん…」
ふにっと胸板にコンの胸が当てられ、トクン…トクン…と彼女の愛しい鼓動が伝わってくる。
ドクンッ、と一際強く鼓動が高鳴る。きっとそれは、コンにもハッキリ伝わった。
何故なら…幸せそうに瞳を細めつつ、俺の背中に脇の下からコンの腕が回されたのだから。
「紳人との大切な時間が…減ってしまうじゃろう?」
「コン、そこまで俺のことを」
「当たり前よ!それに…」
「それに?」
「勝とうが負けようが、彼奴らが大人しくしておるわけないのじゃ」
「あぁ…本当だね」
微苦笑を浮かべるコンに、つい笑ってしまいながら頷く。
あのウカミたちが仮に俺とコンに負けたとして、素直に二人きりにするはずもない。
あんなことやこんなことで揶揄いに来たり…或いはこっそり見られている可能性だってある。
縁日で見られてた前科もあるし。
「あまり考えすぎなくて良いよ、楽しそうだからやる程度で良い」
「流石にざっくばらんすぎない?」
「神じゃからな」
コンがドヤッと得意げな顔になり腰に手を当て、誇らしげになる。
はらりと髪が揺れ、狐の耳と尻尾をゆらめかせる様は色っぽくも可愛くて…やはり俺はコンのことを愛しているんだなと強く感じた。
「まぁ…じゃからって自らわし以外と二人きりになろうとしたり、流されすぎたら…愛の鞭じゃからな?♡」
ビタン!と微笑ましく揺れていたはずの尻尾が、鞭のようにしなり地面に跡がつくほど激しく打ち付けられ、首が取れそうな勢いでブンブンと繰り返し頷き。
「よろしい」
そんな俺にくすくすと小さく肩を揺らして、コンは笑った。
その姿は木漏れ日に輝き、あまりの美しさに息を呑むほど俺は見惚れてしまう。
「さて、惚けてないで早う戻ろうではないか。…わしをずっと見ていたいのなら、吝かでは無いがの」
「っ!それは、返答に困るよ…」
「じゃろうなぁ」
「つまり」
「当然わざとじゃ♪」
顎に人差し指を当ててえへっとあざとさを見せるコン。可愛い(確信)
やめてよね、俺とコンが勝負して…俺が勝てるわけないだろう?
愛し合っているとはいえ、俺はコンの心を直接見ることはできない。
だからなのかは分からないけれど…コンが俺にときめくことより、俺がコンにときめくことの方が何倍も多い気がする。
惚れた弱みだろうか。
悪い気はしないけれど…このままやられっぱなしというのも、男として立つ瀬がない。
「やれやれ…ま、戻ろうか」
「うむ」
「ただし」
「ん?ぬやっ!?」
ひょいっとコンの肩と膝裏に手を入れてつつ落ちないようにしっかりと俺に寄せる、所謂お姫様抱っこでコンを持ち上げた。
「この格好で良ければ…ね?」
「……お主、こんなキザなことをするようなやつじゃったかのう」
「こんな俺は嫌いかな」
「大好きじゃ!…しかしわしは今日とこのお姫様抱っこも、忘れぬぞ。強気のお主は
「なら俺は、コンが意外と押しに弱いということも覚えておくよ」
軽口を叩き合うと、ついキザすぎる自分が可笑しくて我慢できずに笑い出してしまう。
コンも俺の首に腕を回しながら釣られて暫しの間笑い…やがて、ゆっくりと元来た道を戻り始めた。
出会ってからの今日までを一つずつ思い返すかのように。
……尚、皆と合流する直前でコンは下ろした。茶化されるのは流石に恥ずかしいからね。
そして、その後のビーチバレーでは俺が取り損ねたアマ様のボールが砂浜にめり込み。
跳ね返ったボールに突撃され俺は五メートルほど宙を舞い、海へと飛び込むことになるのだった。
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