第7話 不登校児と猫と食

「お腹すいた!」

相変わらず、ごん吉は1日に一回はこのセリフを言う。

「さっき食べたばっかりじゃん!」

「ちょっとしか食べてない!」

「ちょっとじゃないでしょ、おやつじゃないんだから」

ごん吉は、朝ごはんとして、カリカリと、猫パウチと、さらに猫草まで食べていた。

「はるは、お腹すかないの?」

はるは、実はごん吉に負けないくらい、食べることが大好きである。朝はあまり食が進まないが、昼と夜はよく食べるほうだ。しかし、はるは小学校に通いはじめて数ヶ月で、食べることに罪悪感を抱くようになっていた。

「空くけど、あんまり食べると太っちゃうよ」

はるはそっけなく答えた。

「太ったらだめなの?」

ごん吉は自分のお腹を眺めながら悲しそうだ。

「ごん吉は、かわいいからいいけど、わたしみたいなブサイクが太ったら、意地悪な男子達にからかわれるの、だから、わたしが太っちゃだめなだけ、ごん吉は健康だったらそれでいいの」とはるは疲れたように言った。

「よくわからないけど、人間の世界は大変そうだ」

「そ、大変なんだよ。人間界は。だから私は逃げちゃったんだけどね。」

はるは、手元のシャツに視線を落としながら少し暗い顔を見せた。

「じゃあもう太ってもいいじゃん!」

「そうゆうことじゃない。でも、たまにはいいかもね。せっかくだし、いつも食べれないおやつ食べちゃおっかな。」

はるは、ごん吉におやつをあげて、自分もクッキーを頬張った。そのクッキーは幸せの味がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る