第6話 父の帰宅

 そうこうしていると、父親が帰宅した。

はると父の寛治は仲が悪いとも、良いともいえない微妙な関係だった。

寛治は、よく酒を飲んでいた。平日仕事終わりの夕飯時も、休みの日の昼下がりも。そんな酔っ払った父に絡まれるのが嫌で、はるは父を避けていた。

そんな、父でも、ごん吉にとっては自分を育ててくれた母親と呼べる存在だ。

父が玄関まで帰ってきているのが、音で分かると、玄関で待機し、

父を出迎える。そして、父のズボンのすそに自分の匂いを擦り付ける。

そんなごん吉に足元を取られて、帰宅後の父はいつも歩きにくそうだ。


 夕飯を自室で食べていると、父がやってきた。はるは、なんとなく自分のテリトリーである自室に、父が来るのが嫌いだ。

「はる、学校に行っていない間、なにしているんだ?」

「洗濯物畳んでる。」

「その後は?」

「なにもしてない。」

父は大きくため息をついた。

「学校に行かないならせめて勉強でもしたらどうだ。」

「言われなくてもわかってる。そういえば、今日、ごん吉が喋った。」

父は怪訝な顔をした。

「ごん吉が喋った?まぁ、ごん吉はよく喋るからな、構ってほしい時とか」

「ごん吉が喋れるの知ってたの?」

「いつもにゃー!とかにゃっ!とか喋ってるじゃないか」

「そうじゃなくて、ほんとにごん吉が言ってることが分かるの!」

父の顔がさらに怪訝になった。

「熱でもあるのか?」

父がおでこに触ろうとしてくる。

「触らないでっ!」とその手を跳ねのけると、はるは

「もういいから、勉強すればいいんでしょっ。」

と強制的に会話を終了させた。

そんなはるの態度に、父はそそくさと階段を降りていった。




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