その間の出来事
その夜、柚木と別れ際に連絡先を交換した。
別段下心は無かった、なんて格好付けるつもりは無い。
単純に可愛い女子高生とお近づきになんてなれる機会を逃すのは、あまりにも勿体無いから。……と、まぁそんな下心もあった。
けど、でもそれはとは別に彼女が心の支えを求めていたことは明らかだったし、それに僕が……何か彼女のためになることをしてあげられるのかというと、それも微妙だったが、何か彼女の助けになれるのなら……僕なんかでよければ、その手助けをしてあげたいと素直にそう思ったのだ。
そう思えたのは彼女が最後に見せたあの笑顔のせいかもしれない。
その笑顔は、今まで見たどんな女の子の笑顔より綺麗で……そしてどこか儚げだった。
そんな彼女の笑顔を僕はもう一度見たいと、そう強く思ってしまったのだ。
だから連絡先を交換した。
それはきっと僕のエゴだ。彼女が僕なんかに何を求めているのかなんてわからないし、もしかしたらただの気紛れなのかもしれないけど……それでも僕は彼女とまた会って話がしてみたかった。
だからその日を境に僕と柚木はよくメッセージを交わすようになった。
それから、僕は仕事の合間に、柚木は気が向いた時に、僕は彼女の学校や家庭のことを聞きながら、自分の過去や現在の葛藤を少しずつ話すようになった。
僕もそれを日々の楽しみにするくらいには彼女に依存していて、多分、柚木もそうだったのだろうと思う。
そう、依存だ。
それは根本的な解決には至らない唯の傷のなめ合い。
だが、ぬるま湯に浸るようなその快楽に、僕は逆らえなくなっていた。
そんなある日、柚木から突然のメッセージが届いた。
「今日、学校に行ってみようと思う」
僕は驚きながらも、それを応援するメッセージを送り返す。
正直、彼女が学校に行こうが行くまいがそれは彼女自身の価値には関係ないことだと思っていた。
けれど、彼女のその言葉を聞いて……彼女は彼女なりに何かを変えようとしているのだと気づいたのだ。
彼女が少しずつ前に進んでいることが嬉しかった。
……だからこそ、気付かなかった。
いや、気付かない振りをしていたのだ。
僕は彼女の肝心な部分に触れるのを……恐れていたんだと思う。
僕も彼女と同じように、自分の価値というものを見失いそうになって……。
だから……がむしゃらに足掻く彼女が、そのまま周りの空気に窒息しかかっているのを、無視……したのだ。
死にたがりの君と何者にもなれない僕 ほらほら @HORAHORA
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