第5話:馬車

 道を行く。ぽくぽくぽくと。馬車が行く。


 川柳を一句、詠ってみたがどうだろうか?


「オジサァーン」


 私は涙ながらに叫ぶ。


「あん? どした?」

「お尻痛いし馬車の旅は飽きたぁ!」


 そんな私の不平不満にオジサンは苦笑いを浮かべて答える。


「諦めろ。馬車の旅なんてこんなもんだ」

「ふうええええ!」


 ぶぅ垂れるが、こればかりはどうしようもないようだ。仕方がないので質問を続ける。


「あと、どのくらいぃ?」

「そうさな。あとひと鐘分ぐらいかな」

「それってどのくらいさ?」

「うぅん。そう言われても、ひと鐘分はひと鐘分だ」

「わかんないよぉ!」


 そう言ってウリが敷き詰められた荷台でゴロゴロする。さっき隙間を作ったので、そこに寝転がらせてもらっている。


「おい! 潰したらどうする気だ!」

「だぁいじょうぶだよぉ」

「まったく……」


 そう言って呆れた様子のオジサン。しかし私はマイペースを崩さない。ガタゴトガタゴトと馬車が行く。その荷台で私は空を眺めているとピーヒョロロと鳴き声が聞こえる。トンビだろうか?


 この世界にも居るのか。


「おじさぁーん」

「あによ」

「空が青いよ」

「あたりめぇだ!」

「鳥が飛んでるよ」

「鳥は空を飛ぶものだ」

「うぅん。暑い。太陽が…… 眩しい」

「夏だからな」

「夏?」

「おう」

「ふぅん。秋まであとどのくらい?」

「あん? そうさな後、3ヶ月もすれば、麦の刈り入れが始まるな」

「ふぅん? ところで1年って何ヶ月?」

「あん? 12ヶ月だろ?」

「1ヶ月って何日?」

「30日だな」

「ふぅん?。んじゃぁ1日って何時間?」

「知らん」

「知らないの?」

「おう。そいうのは教会に聞いてくれ」

「うぅん。教会ねぇ?」


 何やら宗教と聞くと面倒臭そうなので考えるのを放棄した。


「まぁいっか。どーでも」


 そんなことより日常だよ。生活をせねばならん。私は街についた後のことを考える。


「ねぇねぇおじさん!」

「あによ」

「私に出来る仕事ってあるかな?」

「あん? そうさなぁ、伝手はあるのか?」

「ない!」

「んじゃあ、冒険者とか傭兵とかそういうのしかねぇな」

「冒険者! あるの?」

「おう」

「どんな仕事?」

「うぅん。そうだなぁ、街の中のトイレの汲み取り、下水の掃除。他には土木作業をしたり、採取をしたり、護衛をしたり、魔物を狩ったり。そんなんだな」

「冒険の要素、低! ただの何でも屋じゃん!」


 するとオジサンは大笑い。


「あっはっは。そうだな!」


 まぁいっか。


 私が冒険したければ、冒険をすればいい。ギルド関係なしに。


 ただそれだけのことだ。

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