第33話 秋暑し 🧵



八月や声なき声の地に満ちて

文月も半ばの空のさびしめり


絵日記の水彩ペンや秋に入る

初秋の郵便バイクターンせる


縫糸のコバルトブルー秋暑し

流木をあそばせルンバ秋の風


涼新た古墳山なる大日かげ

舌まるめ水飲む猫や秋の声


けふからは色を変へたる処暑の風

山並みの一歩前出る九月かな


底紅や新婚さんのアパートに

ほほづきや姉が鳴らせば弟も


風船かづら雲は都を目ざしゆく

ビロードの鶏頭色をきはめけり


コスモスや黒犬の尾のちらちらと

実むらさき昼は人かげ失せにけり


秋の日や斜にかぶりてベレー帽

ひとひらの月と無数の星ぼしと


新調のまくらにのせる夜長かな

長き夜や壁の鳴る音いづこから




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