第23話 じやがいも 🥔



酷暑下を車を飛ばしきみ来る

遠くからフリーのあかし夏帽子


手を振り合ふ阿吽の呼吸夏木立

思ふれば三十年の交り青葉かげ


ペン捨てて鍬もつきみの夏衣かな

丹精のじやがいもずしりレジ袋


常のごと文学談義夏の雲

沈黙も対話のうちや蝉しぐれ


涼しさは農に徹する余生かな

身につきし土着の暮らし夏蓬


若き日の記者のきみ見るてんと虫

へうへうと家族を語るソーダ水


蜜豆の透きし寒天ひとすくひ

床を這ふスローなジャズや冷房音


夏館ぎつしり並ぶパイプ椅子

夏シャツの指揮者の背を見てをりぬ


たちまちに合唱の波大暑かな

涼風やともに歌へるわらべ唄


夏夕べ期日約さず別れけり

じやがいものほつこり甘し夏の宵




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