第5話

〜よく分かる闘道入門〜


第2章 闘道を行う上での基礎知識


闘道は日本の霊刀技術の発展に伴い、日本の武道を統合させて生まれた新世代のスポーツです。


選手は、自身が試合で使う武器、契約した霊刀、技を使用するためのエーテルチップ、選手の安全を確保し、同時に勝敗の基準となるバリアを発動するジェネレータの4つが必要となります。


選手が試合に使用できる武器の種類は、クラシックルールの場合、刀、薙刀、槍の3種類です。


エーテルチップは霊力の動きを制御するチップです。闘道では、エーテルチップに設定した4つの技のみ試合で使用することができます。


エーテルチップを使って設定することは以下の通り


・試合に使用する技の設定

・バリアティックフィールドと技の出力のバランス設定

・使用可能霊力量の制限(一部ルールに対し使用)


ジェネレータは前述の通り勝敗の判定基準となり、選手の身を守るバリアを発生させます。バリアの発生には霊力を使用し、その強度は技を発生させる際に使用する霊力の出力に依存します


〜試合の流れ〜


試合前に選手は審判団に試合で使う武器とエーテルチップを提出し、違反がないかをチェックしてもらいます。


違反がなければ選手は25×25mの正方形のフィールドにて、お互いに礼をして試合を始めます。


どこを攻撃してもルール違反にはなりませんが、バリアが破壊されたとき、明らかに故意な追撃を加えた場合、失格となります。


バリアが破壊された選手が負けですが、制限時間のある試合の場合、バリアの損耗率が高い選手が負けとなります。



「――なるほど、ふむふむ」


『なあ、ご主人、そろそろ帰らぬのか?もう陽も傾いてきてるぞ』


「え?……あ、もうこんな時間か」


しばらく本を読みふけっていると、いつの間にか時間が流れて夕方になっていた。2時間ほど入り浸っていたらしい。


「帰ろうか」


本を閉じ、元あった場所に戻して図書館を出た。基本的な闘道のルールは頭に入った。あとは家に帰って調べよう。


学院の敷地を出て、少し歩いて河川敷に降りた。夕日が水面に反射して輝いている。


『キレイじゃのう、ご主人』


(そうだね)


天は僕のところに来るまで暗い場所に閉じ込められていたので、こういった景色を見ると本当に喜んでくれる。


『ご主人、夏は川に行かぬか?わしは川釣りがしてみたい』


(いいね。鮎とかが釣れるだろうなぁ)


向こう岸では少年たちが汗を流し野球に興じている。おっ、打ったぞ。行け行け、走れ走れー!


うわ、アウトかー、惜しかったなぁ。


『…ご主人、素振りのする音が聞こえるのじゃが』


(え?どこから?)


『進行方向じゃ』


「言ってみるか」


天の指示通り進んでみると、ようやく僕の耳にも素振りの風を切る音が聞こえてきた。


「あれ…」


腰ほどまである長い銀髪を一つにまとめ、身の丈ほどある大太刀を振るう少女。


確か彼女は、僕が学院に来た時に校門の所でぶつかった子だ。


しかし大太刀か…まさかあの子が風早の一人娘?


「……そんなワケ無いか」


。こんなのが高校生でも最強なんてありえない。


特に重心の傾きがひどい。両手で大太刀を持っているのに、右手しか使わず振っている感じだ。


「あのー!そこの銀髪の人ー」


見るに耐えなかったので少し口出しさせてもらおう。


「…なんですか」


見るからに不機嫌だ。


「刀を振るとき、もう少し重心を左に傾けたほうがいいですよ。あと左半身の筋力トレーニングもしたほうがいいです」


「…急に、なんなんですか」


「いや、素振りが気になったから――」


「お気遣いいただきありがとうございます。結構です」


こちらに流し目を一度送っただけでまた素振りを再開する。


「……ひどい素振りだ」


そう呟いた瞬間、切り返された刀の切っ先が僕の喉元に突きつけられた。速度は速いな。


「今、なんて?」


「っ、いや、落ち着いてください」


「今、なんて言ったんですか?聞こえなかったので、もう一度言ってもらってもいいですか」


切っ先がぐっと首に押し当てられた。


『ま、不味いぞご主人、この少女、相当怒っておる』


(そんなもの見れば分かるよ)


「…重心が偏っていて、お世辞にも綺麗な素振りとは思えない、です」


「っ!」


『ご主人!なぜ煽るようなことを…』


「あなた…初対面の方に失礼だと思わないんですか?」


「間違った剣の振り方で続けても一生強くなれないと思ったので」


「これでも私、生まれてこの方、剣では負けたことないんですけど」


「それ周りが弱すぎるでしょ…」


なんでこんなのが勝てるのだろうか。


「そこまで言うなら、今ここで勝負してみますか?」


少女の目線が僕の腰に落ちた。


『駄目じゃご主人!陽灯から目立つ行動は抑えるように言われておるじゃろ!』


(今の僕は陸自隊員じゃなくただの高校生だから問題ない。それに力は抑えるし、霊刀も使わないよ)


「勝負を受けないとこの場で首を刎ねられそうなのでお受けします。ルールは?」


「私の技量を知ってもらうんですから、霊刀の使用は禁止。純粋に刀で一本取った方の勝ちです。もちろん寸止めで」


「…ハンデ、要ります?」


僕がそう言うと、少女は青筋を浮かべながら引きつった笑みを浮かべた。


「要りません。あなたこそハンデが必要では?」


「ううん、多分負けないしいらない。早速始めようか」


5歩ほど離れて、腰に差した刀に手をかける。


さて、最高峰、とは言わなくとも最高の育成機関の生徒なのだから、高校生でも上位に入ると思われるその実力、見せてもらおうかな。



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最強の霊刀使いと最強の剣士たち 〜加減を知らない最強のスパルタ教育〜 梢 葉月 @harubiyori

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