Part,14 Dormitory-EX
福岡支部に着くと、風葉と彩葉、夏芽の3人が寮の部屋を案内しようと福岡支部の前で待ってくれていた。光斬とネセントはわざわざ出迎えてくれた3人に向けて、軽くだが礼を何度もしていた。
「出迎え、ありがとうございます」
ネセントは何度も礼を行いながら言うと、3人は礼をやめるように手で止めようとする。光斬とネセントは3人の「なんとしてもやめてほしい」オーラを感じとったため礼をやめると、福岡支部へ共に入った。
福岡支部に入ると、福岡支部内にある大きな広場を通って左手にある大きな寮らしき建物の前で止まった。
「これが私達が住んでる寮ね。基本的にここで寝泊まりすることになってるよ」
風葉の言葉を片耳に入れながら、光斬とネセントは外観を眺めていた。にしても、10人で住むにしては大きすぎじゃないかと思ってしまう。それほどの大きさの建物が目の前にある。一般的なビルを3つ並べたような横幅をしており、高さが20m程ある大きな豆腐のような建物だ。この寮を見慣れている風葉、彩葉、夏芽の3人は固まってる光斬とネセントを見て、初めてこの寮を見た時の記憶を思い出す。
「大丈夫。みんなそんなリアクションするから」
彩葉は自分もそんな感じのリアクションをしたことを思い出し、2人は何もおかしくないとフォローする。彩葉はそのまま2人に近づいて肩を叩き、現実に戻す。
彩葉は振り返って寮へ向かうと、それに続いて風葉と夏芽も向かう。光斬とネセントも置いていかれまいとついて行き、寮内に入った。
「ここって確か寮だよな?」
光斬は目の前に広がる、ホテルのロビーのような共有スペースを見て驚いた。ネセントは入口近くにある寮案内図を見て確認すると、1階は全て共有スペースとなっており、共有のリビングはもちろん、ダイニングにアイランドキッチン、ショッピングモールばりの大きさのトイレに、終いには大浴場がある。ネセントは彼の言ったことが彼以上にわかっていた。
「元々福岡支部って5000人規模の組織だから、この大きさになるのは必然なのよ。……今は訳あって10人だけど」
風葉はさぞ当たり前のように言うが、2人は片耳に挟むくらいの感覚でしか聞いていなかった。そのため、風葉の言ったことをすぐに頭から抜けてしまう。
「え? なんて言いました?」
光斬は素直に聞くと、風葉はもう一度言ってくれた。
「この福岡支部って、元々は5000人規模の組織だったんだよね」
「多くないっすか?」
光斬は改めて聞くと、福岡支部が5000人という大規模な組織であったことに驚きを隠せない。今は10人という小規模な組織であるため、2人は頭の中で福岡支部が5000人もいる想像をしてみるが、規模感が違いすぎて想像がつかない。
「想像がつかないです」
ネセントは5000人もいる想像がつかないことを正直に風葉へ伝える。すると、風葉も彩葉も、夏芽もネセントの言うことに首を縦に振る。実際、3人とも5000人規模の福岡支部を体験したことがない。
「確かに、そう言われれば私も想像つかないわ」
「私もです」
彩葉も夏芽も想像つかないことを風葉に伝える。すると、案内する本人は顬に汗が垂れていた。
「私も実は、想像つかないんだよね。まずまず神の代行者に入ったのが去年だから……」
風葉一行はそれから寮内の共有スペースを次々と回っていった。ーー共有スペースの案内が終わって、残りは光斬とネセントの部屋がどこなのかという話だけだ。
(事前に聞いた話では男性は2〜4階、女性は5〜7階らしいけど。流石に部屋くらいは別になっちゃうのかな……?)
この寮は7階建てになっており、1階がまるごと共有スペース、2〜4階に男性の部屋、5〜7階に女性の部屋があるとされている。5000人規模の寮なため、複数人が同時に寝泊まりする用に部屋は設計されている。そのため、基本的に1部屋2人で過ごすようにしている。更にルールがあり、部屋は基本的に変わることはなく、1度決められた部屋になれば変わることはないのだ。そのため、事前に部屋が分けられている8人はそのままということになる。ここでひとつ、疑問が思い浮かぶ。
(1人の部屋になるのか、私達が同じ部屋になるのか。どっちなの?)
ネセントは疑問に思った。男性と女性をしっかりと分けて考えているのであれば1人の部屋になる可能性が高いし、寮のルールに従うのであれば男女混合の部屋になる可能性が高い。福岡支部はどのような決断をしたのか、少し気になるネセントだった。
ネセントは横を見ると何も考えてなさそうな顔をした、本当にただぼーっとしているだけの光斬がいた。これを見ると、さっきまで寮の部屋について考えていたことが馬鹿らしく感じる。
(逆にこのくらいでいいのかもしれない……、のかも?)
風葉達が乗ったエレベーターの行先は5階。先にネセントの部屋を案内するのだろうかと2人は思ったが、夏芽がそんな考えを覆す発言をする。
「光斬君、ネセントちゃん、2人相部屋だよ」
どうやら、寮のルールに従うらしい。光斬とネセントは同じ部屋と言われたが、特に驚きはしなかった。それよりも、光斬はネセントが同じ部屋でかなり安心しており、ネセントは光斬が同じ部屋でかなり嬉しくなっていた。共に安堵に似た表情を浮かべていたことから、夏芽は驚きを隠せず表情に現れていた。
(驚かないの……?)
2人は案内された506号室に入ると、早速荷解きを始める。
「光斬ー」
「どうした?」
ネセントは彼を呼ぶ。彼もそれに返事し、耳を傾けながら荷解きを続ける。
「色々考えたんだけどさ、なんで同じ部屋になったのかわかんないんだよね」
「お前がわかんなかったら俺にわかるわけないだろ。ただでさえ俺馬鹿なんだから」
「馬鹿ってそんなに言う物じゃないよ」
「いいじゃねぇか。実際馬鹿なんだから」
「悲しくならない?」
「既になってる」
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