第45話 ダンジョン

 

 ダンジョンの中に入ると、大量の魔獣がお出迎えしてくれた。


「あの時と一緒だね! リリシア準備はいい?」

「もちろんです」

「行くよ! アイスヘルストーム!」


 と、氷のつぶてが空を舞う。その氷はどんどんと速くなり、時速三百キロくらいの速さで魔獣たちにダメージを与えていく。


「ダークサラウンドニードル!」


 リリシアは闇で魔獣を囲い、魔獣を闇のとげで串刺しにした。


「ナイス!」


 と、氷のつぶて一気に動きの取れない魔獣たちに当てる。


「これでだいぶ減ったね」

「減りましたね」

「ならいっそこいつら操ってもいい?」

「どういうことですか?」

「私人を操れるでしょ? 実はあれ魔獣相手にも使えるんだよね。こうやって!」


 と、魔獣たちを一気に仲間にしていく。


「まあこれで罠避けには使えるでしょ」


 それに対して彼女はまっすぐとこちらを見てくる。私何かしましたか? なんちゃって。


「さてと咲き進もう?」

「そうですね」


 と、二人で少しずつ進んでいく。魔獣を先頭にして。


「あ!」


 先頭の魔獣が落ちる。そのまま下の激流の川に落ち、流されていく。


 これは……


「魔獣を先頭にしていてよかったー!」


 魔獣はそのまま滝の底に落ちていった。おそらく滝は百メートルの高さはありそうだ。


「じゃあ私を担いで」

「わかりました」


 と、本当は頼るのは嫌なのだが、仕方ないからリリシアを抱きしめ落とし穴を乗り越える。魔獣は流石に仕方ないから川に捨てた。落とし穴を乗り越えられそうにないからね。

 罠除けとは言ったけど、本当に罠除けにしかならないとは思っていなかった。


 そしてその先で道を塞いでいたのはゴーレムだった。


「これは、おそらく強いですね」

「だね!すぐにやっちゃおう!」


 すぐに飛び跳ねゴーレムの真上に行き、下に向けて鋼の槍を向ける。


「えい!」


 全く歯が通らなかった。ただものではない、このゴーレムは。

 ちなみにだが、竜はこのダンジョンに召喚できない。異空間だからなのだろうか。


「私がねじ伏せます。ダークホール」


 リリシアは闇の渦を生み出し、ゴーレムを沈めようとする。実際にゴーレムはその身の重さのせいで闇に沈んでいった。


「あっさりだねえ」

「まあ私有能なんで。あなたよりも」

「確かに今回は私よりも有能だったわね」

「今回は を強調させないでください。さて、進みましょうか」


 リリシアが先に進むことを提案してきた。むう、私が負けたみたいじゃん。


「分かってるよ。速くしないと」

「神対策が十分にできない」

「なんで先に言うのよ。私がセリフを取るとしてたのにー」


 と、駄々をこねてみる。ただ彼女は私に見向きもしないで進んでいった。


「ひどくない? あやしてよ」

「あなたは子どもですか?」

「私は結構長い間生きてるよ」

「ならなおさら恥ずかしいと思ってください」

「そんなこと言われても私永遠の十四歳なんだもん」

「そうですか。それは結構ですね」


 そして歩いていると、広い広場が見えた。


「え? もう?」

「どういうことですか?」

「あの時はこんな広い空間にボス? みたいなやつが現れたの。それでそいつを倒したらパワーアップみたいな」

「じゃあボスとやらを倒しましょうか」

「ちょっと待って、変なの。だってまだ一時間もここにいないでしょ」

「確かにこんなに早く着いてしまってはただの観光ですね」

「だからさあ、これは罠よ」


 罠以外考えられない。実際さっきも落とし穴があったのだから。


「でも、他の道は見当たりませんが」

「確かにそっか。なら行くしかない?」

「みたいですね」


 と、一歩踏み出す。すると入り口のドアが閉まった。


「え? どういうこと?」

「これは……」


 すると周りから炎の弾が大量に発射される。


「罠と言うよりも……耐久戦みたいですね」

「うん。だね!」


 と、互いにくっつきあい、バリアを展開する。


「耐えるわよ」

「ええ」


 と、バリアを互いの力でカバーしあう。そうすることで、耐久力が通常の六倍程度になるのだ。


「これ、ずっとこうしてなきゃならないの?」

「当たり前じゃないですか」

「そろそろ飽きてきたんだけど」

「それは諦めてください。どうすることもできませんし」

「えー」


 そして三〇分後に炎は完全消滅した。


「これはもう先に進めるってことで言い?」

「みたいですね」

「じゃ、レッツラゴー」

「走らないでくださいよ」


 そう言われたがもう無視。何しろ三〇分間も走っていなかったんだもん。エネルギーがあふれてて仕方がない……あれ?


「魔王!」


 次の瞬間私はマグマの底に落ちた。いや、落ちたというのは語弊がある。


「ありがとう」


 落ち切る前にリリシアが助けてくれたのだ。


「もう。何かあったらどうするんですか」

「ごめん」


 素直に謝っておく。私は謝るという行為自体嫌いだが、今回の場合は悪いのは完全に私だ。仕方がない。

 とはいえ、まあ屈辱だ。むかつくから一撃殴りたい。


「じゃあ進もっか」

「なんで、どじった本人が指示してるんですか……」

「いいじゃん」

「私はあなたのそういうお気楽な性格を心配してますよ」

「私はお気楽なくらいがちょうどいいの!」


 と、無理やり強引に進む。するとそこには今度は数体のゴーレム、数体のドラゴン、数体のミノタウロスがいた。


「これって、前はいなかったけど、こいつらが、このダンジョン特有のモンスターだったりするのかな?」


 と言うか、こういうのって日本のゲームにあった気がする。こんな感じのダンジョンが。


 前のダンジョンは正直言って罠が多かっただけでたいしてモンスターとかは出ていなかった。でも今はこんな魔獣モンスターが出ている。こんな楽しいことはない。


「ねえ、私一人で相手してもいい? なんか乗ってきた!」

「いいですけど、負けないでくださいね」

「分かってるよ!」


 と、早速……


「ファイヤーブレイズ!」

 と、炎を放つ。


 その攻撃をゴーレムは体で受け止め、そのすきにドラゴンが尻尾を振り回し、それが私の体に当たる。

 曽於衝撃で後ろに弾き飛ばされるが、受け身を取り、なんとか地面に着地する。


「ぐふう」

「大丈夫ですか?」

「だいじょーぶだいじょーぶ」


 見ててよ。


「ウォーターブレード!」


 と、ゴーレムに当てるが、その隙にドラゴンがまた私の背中を尻尾で払ってきた。


「ムカつくなあ!」


 と、雷をドラゴンに直接当てる。しかし、ドラゴンにはあまり効いてないみたいだ。まあゲームでもドラゴンは強いイメージあるし。仕方ないか、


「なら、もう!」


 と、力一杯込めたパンチでドラゴンをぶん殴る。竜の召喚はできなくても、竜の力を身に宿すことは出来るんだ!


「りゅおおお!」


 ドラゴンが怯む様子を見せる。


「やった?」


 と、その瞬間ゴーレムが私の頭上からパンチをする。


「いったー!」

「大丈夫ですか? 援護しましょうか?」

「いやいや、大丈夫。手出ししたら怒るよ」


 と、くるりんと立ち上がり、そのままパンチした。しかし、


「いった」

 ゴーレムの硬さで私が逆にダメージを受けてしまう。困ったな。あ、でも!


「クイックサンド!」


 と、砂を波のように放つ。しかし、ゴーレムには完全に塞がれてしまった。だけど、


「これでいいんだよ」


 と、内から砂を操り、動きを鈍らせる。ゴーレムの体内に砂が入り込んだらこっちのものだ。とりあえずゴーレムは放置してもいい。


「このすきに!」


 と、ドラゴンに再三殴りかかる。ドラゴンは抵抗し、炎を吐く。でもその程度の火力なら私のバリアで防げる。


「行くよ! 死ね!」


 と、ドラゴンの頭を思い切り貫通した。


「ふう」


 と、ドラゴンの血を舐める。クソまずい。舐めなかったらよかった。


「さて、次行こ!」

「はい!」


 彼女の手を借りずに一人で倒せたのは本当嬉しい。これで私の実力を証明できただろう。いやー、気持ちいいよ。

 勝つのはさ。

 最高の気分だ。


 数歩歩くと、また広い空間に出た。


「ここは……なんか多いね」


 そこには何十、いや何百もの魔物がいた。


「ねえ、また?」

「そのようですね」

「ドラゴンか、ゴーレムをテイムしとけば良かったよ。まあそんなこと言っても何も始まらないよね!」


 と、水を下に敷き、水を急回転させる。これで足場がふらつくだろう。さらに、足場を崩したならと、上から隕石を降らす。これで上手く瓦解させることができるだろう。


「やった! あれ?」


 結局半数の魔獣は倒れた。だが、半数の魔獣は死ななかった。


「はあ、面倒くさ」


 と、腕から炎を出そうとしたその瞬間、魔獣が闇によって消滅した。


「私が倒そうとしてたのに!」

「だって、時間かかりそうだったから。それに全員倒すって今回は言ってなかったですし」

「……仕方ない。今回は私の寛大な心に免じて許してあげましょう」

「……行きましょう」

「あ、待ってよー!」


 と、走って行く彼女を私は走って追う。

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