第44話 魔大陸

「さてと、どうやって神に対抗するかだよね」


 話を元に戻す。それに対して少しだけ苦い顔をする、リリシア。


「私にいい考えがあるの。ダンジョンよ」


 ダンジョン。私も一回クリアしたことのある場所だ。あそこが残っていたら、私はともかく、リリシアの強化はできる。


「それは、無理です」

「無理?」

「はい。ですが、先ほど新たなダンジョンが発見されたという情報が入りました」

「新たな?」


 私は後ろ髪を軽くさする。


「魔王。あなたにも魔大陸に渡ってもらいます」

「魔大陸? あの大陸だよね」


 海の向こうにある大陸、それが魔大陸。だけど、私じゃ、行くことすらかなわなかった。

 海は大いに荒れていて、竜で渡ろうとしても、竜が恐れて、大陸に向かおうともしない始末。

 どうしようもなかった。


「そうです。まだ誰にも踏破されていないダンジョンがあるのです」


 なるほどね、じゃあ!


「じゃあ今度こそ飛べる可能性も生まれると!」

「そうです」

「だから、すぐに行ってください。さもないと神が来てしまいます」

「わかった」

「じゃあ行きますか」

「え?」


 抱き着かれた。


「え? え? どういうこと?」


「飛びます!」

「はあ?」


 と、次の瞬間私は宙に浮いていた。リリシアの手の中で。

 確かに魔大陸に向かうのに飛ぶのは必然だ。でも、もやっとする。


「え? え?」

「いい加減慣れてください」

「嫌そうじゃなくて、ここまできてまた、飛べることを自慢しようとしてるの?」

「そんなつもりないですって!」


 そして猛スピードで飛んで行く、やっぱり飛べるだけじゃだめだ。私の自由に飛べないとなあ。

 ストレスがどんどんと溜まっていく。


「ん?」


 目の前に狂暴そうな見た目の、翼竜がいる。見た目的に、恐竜みたいな感じだ。


「魔王、倒してください」

「わかった!」


 手で風の刃を作り出す。


「えい!」


 それを素早く飛ばす。その刃が翼竜の首をはねる。


「よし!」


 私は間髪入れずにガッツポーズした。


「調子に乗ってると、落としますよ」


 冷たい女だよ。ガッツポーズくらい許してほしいな。

 その後も、数体の魔物を倒しながら向かうことしばらく。


「着きました!」


 リリシアがそう言った。


「早!」


 まだ体感一時間もたっていない。海を渡るのに、それだけの時間しか経っていないっていうことか。

 本当ムカつくなあ。


「さてと、行きましょうか」

「あ、はい」


 急に言われたから返事も敬語になってしまった。



 魔大陸、そこには沢山の魔族がいた。一応私は魔王だから魔族は大量に見ている。でも、こんなに濃い魔力を持った魔族は見たことがない。全員ラドルフよりも強い。つまり私の部下よりもここらにいる農民のほうが強いということだ。

 すごいな、でも、アニメとかにもそういうのがあったな。いきってた魔王よりも、別の星の同種族の農民の方が強いみたいなことが。

 あれ、何のアニメだっけ。見たの昔だから忘れちゃった。


「行きますよ!」


 そう言ってリリシアはぐんぐんと進みだす。まるで私に遅いとでも言いたげに。


「歩いてるって」

「なら、ながら歩きをしないでください。時間がないんですからね」

「はいはーい」


 ここでいっそ大虐殺を起こしても面白いなと思ったが、リリシアに怒られるだろう。今度は一人でこよう。私がしたいことをする為に!


「ここです!」


 そう、リリシアがダンジョンを指さす、


「なるほどここね、じゃあ行くか!」

「待ってください! 食料ないんですよ!」

「あ、そっか」


 前回も持ってきてたな。


「まあ、まずは長老のところに挨拶に行きましょうか」

「うん!」


 そして長老の家に来た。


「ここってこと?」

「はい」

「なんか、たいして大きくなくない?」

「別に王様長老皆あなたみたいな暮らしをしてる訳じゃないんですからね」

「分かってるって」

「……あなたみたいなクソみたいな暮らしを……」

「聞こえてるよ!」

「ああ、それはすみませんでした。私はまだいとこを殺されたことと、あの子を玩具扱いしたことを許してる訳じゃありませんから」

「それは分かってるよ」


 あなたが私のことを嫌いだってことも。

 てか、十二年経っても恨みは忘れてないのか。



「今度こそ行きますよ」

「はーい」

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

「詩織さん、ここは敬語使ってください」

「はーい」


 敬語なんて面倒くさいよ。


「君か、リリシアが言っていた詩音というのは」

「はい、そうです」

「むむむ、邪悪だな」

「失礼だなあ」

「いえ、あなた邪悪ですよ」

「え! あなたまで?」

「ええ」


 やっぱり、リリシアは……私のこと結局嫌ってるんだね。


「まあ、邪悪でもなんでも、神と戦ってくれるのなら構わないが」

「それで、なんであなたは神を殺そうとしてるの? 別に魔族という立場なら神に従えばいいのに」

「私は別に世界なんぞ欲しくはない。確かに一〇〇〇年前に、多くの魔族が移り住んだ。だが、それは間違いだ。我々魔族が魔力の恩恵を受けられるのは、まさしくこの暗黒大陸に他ならない。私にとって神は、この魔力に溢れし世界から我々を遠ざけようとしているのだ。その代わりに! 神族を住まわせようとしているのだ。闇の王に対抗するために!」


 なんか話が見えてこないなあ。


「闇の王は私が倒したはずじゃあ?」

「あの闇の王は魔王の体を依代にして現世に現れただけだ。本体は今も闇の国にいる」

「なるほどねえ。てことはまたあいつを倒さなければならない訳だ」

「そういうことだ」


 面倒くさいなあ。


「それで、滅ぼされるのは人間じゃなかったの?」

「そうじゃ、だが、魔族をここから追い出すために人間を滅ぼすと神は言ったんじゃ。つまり人間が滅んだら、我々はこの大地から永久に追放されるのじゃ」


 ほーん。


「まあ、結局神を放っておいたら、あなたたちも困るってわけね」


 そして私は立ち上がり、


「よし、ダンジョン行ってきますか!!」


 そう言い放った。


 結局待てと言われて、いろいろと教えてもらう。ダンジョンの仕組みなどについて。今回のダンジョンは、時間の流れが変ということもないらしい。

 そして食料をもらい、ダンジョンに向かう。


「じゃあ」

「ええ」

「行こっか」


 そして私たちはダンジョンの中に入った。

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