第11話 帰還

「着いた?」


 衝撃を感じたので、そう呟いた。すると、国の近くの森だった。あの組織があった場所の近くだ。(組織の名前は忘れた)


「りゅおん」


 そして私は歩いてアリゲルド王国へと向かう。


「何なのこれは?」


 そこにあったのは、魔族がいじめられていた。顔を踏まれたり、シンプルに殴られるといった暴行を受けていた。


「あのすいません」


 その場にいた男に話しかけた。


「今って和歴何年ですか?」


 私の知っている国とは明らかに違う。


「三千二十五年だ」


 嘘でしょ? 二十年経ってるんだけど。


「そうですか」


 つまり、ダンジョンのせいだ。私が読んだ漫画でもそう言うシーンがあった。全く、困った。二十年も経ったらそりゃあ世界が変わるかあ。


 まずは歴史を調べないと! と言うわけで図書館みたいなところへと向かった。ここで、調べ物が出来るらしい。


 そして本を手に取り読む。私は漫画の方が好きなんだけどなあ。


「竜歴三〇一〇年、魔族をアースランドリアの戦いで、人間軍が破り、そのまま魔族の国は滅ぼされえる。人間側の魔族への恨み甚だしく、そのまま魔族の立場は弱くなってしなった。ある時は拷問を受け、ある時は子どものおもちゃとなり、恐ろしい迫害の日々に会う民族。それが魔族だ。とはいえ、全滅した訳ではなく、そのまま集落を保ち暮らしている魔族もいる」


 なるほど……これ、面白いチャンスかも。魔族と人間をぶつける。そしたら戦争になる。イベントを起こせる。これはチャンスだ。私が楽しめる。


「よし! これで私の暇な現状を打破できるでしょう!」


 考えれば、そろそろ異世界での暮らしも飽きてきたところだ。


「そうだ! 私が天下を取るのも良いわね!」


 天下を取る。言葉の通り、王様になると言うことだ。それで残虐な政治を行う。この手で!!!


 ふふふ、面白くなりそうだ。それでこそ異世界に来た意味があると言うもの。何故みんなその力を正義で使うのか……悪に使ってこそ快感を得られると言うのに。次にやることは決まった。今人間がやっていることをまんま人間に返す。


 さーてとまずは部下集めだなー。とはいえ、まだ飛ぶためにしたいことがある。それをしてから魔族を集めて、戦争を起こそう。


 やりたいこと! それは、実験。それ一択だ。


 つまり、まだ私は飛ぶことをあきらめていないということだ。挑戦をやめた時に人間は終わるみたいなそんな感じの言葉を聞いたことがある。


 つまり私は飛ぶことをあきらめなければ、飛べていないことにはならない!!


 という訳で私は竜を出して、飛ぶ挑戦を始めた。ドラゴンを召喚できるのなら、竜を身にまとう方法もあるんじゃないかと言うことだ。それができ、そして飛べたら私は幸せのあまり、興奮することになる。そんなに幸せなことはない!!


 という訳で、竜を出した。


「りゅおおおん」


 元気に鳴いている。これから始まるのは訓練だ。私は手を止めるわけには行かない。飛ぶためにもね。そして、竜を目の前に、兎に角いろいろな方法を試す。だが、相も変わらず飛べないし、竜を憑依出来る気配もない。


 ちなみにあのダンジョンへと再び向かったら、そこはもうすでに私を拒絶していた。全く、一回クリアしたらもう入れないとは、本当面倒くさいことだ。


 だが、確かに竜に憑依できるかもと言うようなことも書いてあった。

 そして私は別の可能性に気づいた。それは竜を使役した数だけ、強くなれるのではないか。そしてそれがある一定まで行ったら飛べるのではないかと言うことだ。


 ちなみに別の魔物を使役したら、全然だめだった。使役できなかった。全部使役できたらいいのに、まだその段階にはなかったようだ。

 ちくしょうダンジョンでは、簡単に使役できそうな感じで書いてたじゃん。……竜の方が使役難しいイメージなのに。


 そして、竜を探す旅に出た。運のいいことに、竜には同胞を探す能力があるらしく、竜の示すその場所に行った。


 半信半疑だったが、そこには本当に竜がいた。竜の力で体力を使わずに移動できるとは言え、重労働だ。正直言って面倒臭い。


 だが、その先の輝かしい未来の可能性を考えるだけで、やる気が出てくる。


 しかし、竜を倒すのも一苦労だ。弱い竜もいるが、強い竜もいる。ゲームの周回の時に、そのクエストのクリアが地味に面倒くさいときに運営に軽くむかつく。あれに似た気分になっている。


「あと何体?」


 もうそろそろ本格的に飽きた。単純作業はもう終わりにしたいところだ。


「次はこいつかあ」


 数にしておよそ百体目、目の前に聳え立っているこの竜だ。


 この竜は名ありのようで、人間側からも恐れられている。


 なぜこの竜にしたかの理由は簡単な話だ。こういうのはキリの良い数字で覚醒することが多い。そこで強い竜を倒せば、なんかこう漫画みたいに覚醒するんだろうなと言う希望的観測だ。

 とはいえ、本当に覚醒してくれたらいいなとは思う。いくらそれっぽいことが書いてあったとはいえ、私の勘違いと言う可能性さえあるのだ。


 とはいえ、私の忠実なる僕を増やすことは間違いではない。ただ、戦闘では3体までしか出せないという重大な欠点があるけどね。


「さあ、戦おうか! 竜王リントヴルム!!」


 そして私はその竜、竜王リントヴルムと対峙する。竜王を倒すために。私の能力を上げるために!

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