絶対に襲いかかりたくない転生者ゴブリンと、それはプライドが許さない残念女騎士の不毛な攻防

ルピナス・ルーナーガイスト

第一章 絶対に襲いかかりたくない転生者ゴブリンと、 それはプライドが許さない残念女騎士の不毛な攻防

1、転生者ゴブリンと残念女騎士

「すっごく、興味があるんですよね? 女の人の、カ・ラ・ダ🖤 ホラ、でしたらぁ……」


 女が腰をくねらせしなを作った。

 が、


 ――見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ見ちゃ駄目だ……っ。


「ぐぬぬっ、これでもこちらを見ないのですね。……ゴブリンに抱かれたいとは思っておりませんが、見向きもされないなど女騎士としての沽券に関わります! ほら、見なさい、こっち! ピチピチ(死語)の女体がありますよ!」


 とある洞窟――だが洞窟とは思えぬほどに様々な調度品が設えられ、この世界の一般的な平民よりも物が揃ったその場所で、枯れ草のクッションと毛皮のシーツで作られたベッドに寝そべった美女が、“緑色の彼”を誘惑していた。

 物は揃っているとは言え壁は剥き出しの岩肌である。そのような場所に在っても尚輝くように美しく、その金髪は波打って艶めき、肌も磨き抜かれたように肌理細やか。

 場違い感甚だしい。が、


「ちょっとゴブリン!? ほら、女の人の躰ですよ、にょ・た・い・で・す・よーっ!」


 些か以上に残念臭が薫る。


「グギャギャ……」――いったいあいつは何を言ってるんだ。ただただ残念感だけは伝わってくるんだが、……くそぉ、異世界転生って、勝手に翻訳される言語チートとかあるもんじゃねぇのかよ。


 彼女が呼びかける“緑の彼”は遠い目をした後溜め息を吐く。


 ――この女騎士、やっぱ拾ったのは間違いだったよなぁ。美人でエロいけど……はぁ。


「ちょっと! 何か溜め息を吐いていませんか!? このっ、……くっ、犯せ! 男の人はこう言うのが好きなのでしょう?」


 くっおか。

 なんて語呂の悪い。


 そして些か以上に外していた。


「ぐぬぬ、ゴブリンなのに私に目を寄越さず……くっおか!」


 否、彼女を助けたゴブリンは興味がないのではなく、必死で我慢をしていた。何故ならば、彼は、躰はゴブリン、心は人間の転生者ゴブリンであったから。


 ――また後でヌいて来よう……じゃないと襲いかかりそうでヤバい……。


「くっおか!」


 哀愁の漂うゴブリンの背中に、今日もまた残念女騎士の声が投げかけられるのである。……

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