二百八十九羽 ☆ リュリュエル、竪琴!

「アホか! なにをカッコつけてるのよ!

どこをどうしたら惚れ直すっていうの!?

そんなにハアハア苦しそうにしてるのに、ハグとちゅ〜を要求するポーズをとるな!」


「ハアハアの意味がもしかしなくても違うんじゃない?」


「だってぇ〜!

悪魔でもミーノを大好きな気持ちに変わりないじゃないかい!

泡で作ったエンゲージバブルリングを贈るから、結婚して!」


「せんわ! 大体、そのリングでかすぎるわ!

わたしを拘束するつもり!?」


「アンダーバストサイズで、たぷんがほどよく強調されていいんじゃないかい!」

「アンダー!? サイズぴったり!?

それが目的!?」


「縛れるものなら一生縛りたい!

大好きなミーノに、ずっとそばにいてほしいじゃないかい?」

「縛りつけたい欲求がすぎるわ!

ミーノは自由気ままな略奪系海賊よ!」


「なにこの束縛系悪魔女子と自由がほしい気まま女子な百合ケンカは?」

「かなりこじれたお二人ですね!」


「大体、王立海軍艦隊司令官で中将でしょ!

シーバ、化けてたの!?」


「化けたもなにも、あっちも本業じゃないかい。

人族に混じって出世してすごいじゃないかい?

海軍の仕事は戦。

世界を巻き込んだ大海戦を仕掛ける計画があってねえ。

死者の大量生産と魂の回収、神器の獲得がわたしの本当の仕事じゃないかい。

死ぬことが決まってる働き者の部下たちが慕ってくれるのはうれしいじゃないかい?」


「うそ……じゃあ、ずっとみんなやミーノをだましてたの?」

「だましてごめんねぇ。

育てた部下の末路を思うと、ちょっとさみしいじゃないかい?」


「なんで漂流していたミーノを助けてくれたのよ!?」


「それは……ミーノがかわいくてかわいくて!

どうしようもなかったんじゃないかい!

お願いミーノ! 悪魔なわたしの愛を受け止めて!

想いが熱々バブルハート♡」


「そんなにミーノのことを愛してくれてるの!?

助けてくれてありがとう。

むかつくけど、決してシーバのことを嫌いだったわけじゃないの」


「ほんとじゃないかい!?

受け取って!」


「でも……いるかこんなもん!」


ミーノ様に殴られて、ぽよぽよぽよんなあわあわハート!


「ふわ? それじゃあ、ボクがシーバ様に授けたギフトは……」


「悪魔のわたしが授かるわけないじゃないかい。

泡は元々、わたしのスキル。

授かった風にてきとうに思いついたスキル名を言っただけじゃないかい。

それっぽくしたり、うまくいかないように演技するのは大変だったじゃないかい?

おかげで大事な艦隊をうっかり壊滅しちゃったじゃないかい!?

さて、ここに長くいると消滅しかねないからねえ?

その祭壇に安置された神器をもらおうじゃないかい!」


「神器って!?」


「ふぅわ!?

とっても素敵にサンゴで小ぶりな竪琴が輝いてます!」


「ダメじゃ!

その竪琴を絶対にシーバ、悪魔に渡してはならん!」


「おじいちゃん!」


「聖なる宝物庫の入り口に、ミジウノ様と荒くれ船乗りゴーストさんたちがいっぱいです!」

「ゴーストが聖なる力場に入ったら間違いなく昇天しちゃう!

そこから一歩でも入っちゃダメよ!」


「わかっとる!

こうなったら昇天するわけにはいかん!

ミーノ! なんとしても神器を守るんじゃ!」

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