二百八羽 ☆ リュリュエル、運命!
「それにしても愛を忘れた珍客が大勢だったが、この場所には何が?」
「世話になって申し訳ないが、教えられんな」
「ここには<異渡りの水鏡>っていうのがあるのさ!」
「ハニー!? 教えたらいかんだろ!?
すっかりボケが治ってるし!
なんでここのこと教えるんだ!?」
「ナタデココいいねぇ。今から食べに行かないかい、ダーリン?」
「ボケは治ってなかった! 食い物のセレクトが若くなってる!?
今からニポーン旅行!?
まったく! まあ、天使だからいいか?
せっかくだ、神殿の奥に案内してやるからついて来い!」
「ふぅわああああああああ!
なんて
外からは壁だったのに、中からは透けて見えるんですね!
たゆたう湖が星々をうつしだして幻想的!
風情あふれる植栽に庭石がまるで巨大な箱庭!」
「澄んだ水が美しくとても愛にあふれている!」
「あれれ? なんだか水面に何かが浮かんで見えてきましたよ?
……ボクのフィスエルです!
ふぃわ! シャワーを浴びてます!」
(へっくち! なによ! だれかうわさしてる? 大事なところはシャンプーボトルやシャワーホースで見えないわよ!)
「愛の目隠し! 超えてはならない禁断の愛だ!
ん? 消えていった……」
「おててをどかしてください〜。
あれれ? 今度はなんだか違うお顔が見えてきました!
これは……マオ様! マオ様たちです!
なんだかあいかわらず大ダメージなご様子!」
「ん? マオ様?
どうやら俺には違ったものが見えているようだ。愛のかけ違い!」
「また、違うお顔が!
ふぃわ! また違うお顔!
なんだか悲しそうにしているツノが生えた小さい男の子さんに立派そうな少女さんです!
このお方たちは誰でしょう?」
「ここは一体? 愛のなぜ!?」
「悠久の時を経て、亡者どもしか寄らなくてしまったここは……神にも忘れられた地、<異渡りの水鏡神殿>だ」
「行きたいと思ってる場所や、会いたい人物のところに行けるのよ。時間も超えてね♡
若いころはよくニポーンにデートに行ってたわ!」
「なんと! それでは愛ある歴史を変え放題ではないか!」
「歴史はどうあっても変わらん。
変えたと思ったつもりでもそれがただ一つの道。
現在も過去も未来もすべて一つに存在しとるにすぎんという話だ。
つらくとも、悲しかろうともな。
それに、そんな都合よく行きたいとこには行けんものだ。
時を超えることがあるとすれば、それは時という理に必要とされていることなのだろう。
そんなことも知らずに、未練がましい亡者どもがこの地に集まるわけだ」
「ダーリン! あたしはそんなことないと思う!
それじゃ何しても未来は変わらないって言ってるようなものじゃないのさ!
あたしとダーリンの愛があれば運命だって変えられるだろ♡
そうじゃなきゃ、大昔からここを守ってる意味ないじゃないのよ!」
「ぐぅ」
「リュリュエルが愛のうたた寝!
鼻ちょうちんが愛にあふれてシャボン玉のように飛んでいく!」
パチンと割れて!
「むにゃ……おはようございます?」
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