第69話~陰謀の影~

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「・・・そして死から蘇り我が下僕となるのだ」

引き続きベタでベタとしかいえない展開が継続中だよ

紫の法衣を着た肉がほとんどなく骸骨に皮を貼り付けたような男が私と美香に向けて何か大声で呪文を詠唱してるんだけどね

どうしたものか?男は手の法杖を振り回し一心不乱に術へ集中をしてるんだけど悲し過ぎる状況なんだ

何かわからないデバフが連続して私達を襲ってるんだけど込められた魔力が弱過ぎてアンチデバフを発動しなくても無効化状態なんだよ

「死者操術!」

法杖を私達に向け決めポーズをして術を完成させたと思ってるけど「だから何?」な感じで普通に立ってる私達を見て

「えっ!?あれ!?呪文間違えちゃったかな?」

術の成功を疑ってなかったので混乱して男は固まってしまったね


刻を少しだけ戻すと脳筋モードの美香が鍵を破壊した扉を抜けると地下に向かう階段だった

階段の先は両側に独房が数部屋並ぶ廊下でその先には尋問や拷問に使う部屋につながる扉がある

扉の向こう側に魔法結果の存在を感じるので目的地だね

美香は脳筋モード連荘中でためらうことなく扉を蹴破り部屋に入っていく

まあ魔法結界の強さから中にいる術者は雑魚レベルだから私も気にせず美香に続き部屋の中に入る

「この場所を見つけるとは少しは骨のある奴がいたか!」

床に書かれた大きな魔法陣の中央で法衣の男が偉そうに話かけてくる

男の周りには数人の衛兵とメイドが糸の切れた操り人形みたいな体勢で倒れてるよ

「おお絶世の美女が二人とは!反魂後のお主らは特別に私の側近としてやろう」

なんか品のない笑みを浮かべて呪文の詠唱を始める


術に失敗したのでなく私達の魔力に対して込められた魔力が弱すぎて効果がなかったんだけど男は理解できないみたい

普通に考えればアンチデバフ系の魔法を使うか魔法結界で術を遮らなければ術が無効化されるなんて思いもしないよね

「彩美ちゃんどうする?」

”邪力を感じるから方程式を読み解くのは勘弁だよ”

「じゃあ拷問だね!」

”そこは尋問といいなさい!”

真面目に答えようと頑張ったけど笑いが込み上げてしまい漫才のツッコミみたいな口調になってしまったね

美香の気遣いが本当に嬉しいよ

先史代の能力が解放されてからシリアスモードになってしまうことが多い私に脳筋を演じたりボケを演じたりして少しでも笑って安らぐ刻を作ってくれてる


「えーい!ごちゃごちゃ何をおしゃべりしてる!」

自分に恐れどころか存在自体を流されてる男が我慢できなくなってきたね

「死人達よ二人を殺せ!安心しろ死後は反魂術で蘇らし私の側近として・・・」

男のおしゃべりが続いてるけど倒れていた衛兵やメイドがノロノロと立ち上がる

起き上がった者達は白く濁った目と血の気がない白い肌で既に死人化していることがわかる

”あっまたしても出番なしですか!?”

銀乃剣を抜いた美香が死人達の間を一瞬で走り抜け全員の首を落とし霧散させちゃったよ

「・・・無駄な抵抗をしなければ死の苦しみを無駄に味わうこともなく!?」

なんか自分の演説に溺れていたみたいだけど気が付いてしまったね

「あれ?死人達は!?」

本人は真面目全開だと思うけど気の毒になるほど道化師になってるよ


「お前達!何者なんッガフ」

相手をするのも面倒になってきた美香が一気に間を詰め手刀を軽く男の首に決めて昏倒させたよ

「彩美ちゃん血の盟約は大丈夫かな?」

先史代の視界に切り替え男を見る

何回見ても邪力を帯びた命の流れは慣れることなく吐き気を感じるよ

しばらく流れを観察していると他とは規則性の違う流れを見つけた

手を伸ばし乱れた方程式を男の体内から摘まみ出す

「バン!」

摘まみ出された線虫をすかさず美香が踏み潰したよ


「さてこれで心置きなく拷問できるね」

これは男の成仏を祈るしかない状況だね

「はぎょう!」

唐突に男の悲鳴が地下室に響く

床で仰向けに寝た状態の男の股間を美香がヒールでグリグリしてる

ああ始まってしまったよ他人事で思い出せない感覚でも本能で逃げ出したくなるよね

「さて今回の首謀者はお前か?」

美香の尋問でなく拷問が始まったよ

「はて?何のことだ?」

拷問をうける悪役セオリーとか忘れて素直に答えたほうが苦しむ時間は少ないのにね

「あぎゃあああがああ!」

ヒールをグリグリしながら美香が

「では目的はなんだ?」

質問を伝えグリグリを少しだけ緩める

「うぎょお全でばあああ魔王おうおうざざまのおお御心おおおのまああまああに!」

美香さんもう少しグリグリを緩めないとだよ


「ぜーぜーぜー」

突然グリグリが納まり男が荒い息をついてるけど美香はヒールで股間を探ってる感じに見えるよ

「これは二つあるから一つなら問題ないよね」

えっ今はなくても体に染みついた本能で何をいってるかわかったけど無理!ダメ!二個あるから一個なら問題ないとかじゃないんですよ!

「クチュ」

ああああああ!確実になにがか潰れた音だよ!

「うごおおおおおおお!」

凄まじい悲鳴を上げ男の体が痛みから反射的に丸まろうとしてるけど仰向けで股間を踏み押さえられているのでバタバタと見悶えする状態になってる

数秒後に悲鳴が止み口から泡を吹き白目でのびてしまったよ


「もう一つはどうしようかな♪」

なんかノリノリで場所から予想するに残ったもう一つをブーツの爪先でコンコンとつついている美香さんです

男に情けを掛ける必要はないけど元男として同情はしちゃうよ

「あふううう・・・話す・・・話すから・・・」

息を吹き返した男が蚊の鳴くような声で降参を伝えてくる

「ありゃもう終わりなのつまらないなあ」

降参はしたけど痛みで話せるような状態ではないので美香が痛み止め程度のヒールを施す

痛みが治まった男だが立つのは無理で床にあぐら座りになる

「儂の名はギイで西武辺境を受け持つ司祭だ」

男が話しだとサトス卿の息子チャムが活動資金を提供する代わりに自分の計画を手伝うように持ち掛けてきていた

チャムは邪教団を使い父に代わり街の盟主になり権力を手に入れる計画を立てていたところへ教団本部より指令が届く

「年始に街を訪れる皇女を捕らえ血の儀式をおこなへとな」


”マドカに血の儀式!?”

「血の儀式ってなに?」

私の記憶にしかない物語の続きだから美香はわからないよね

”ダブネスの血を大量に飲ませて邪力を与え血の力で正気を失ったところを洗脳して邪教団に従属化させる儀式だよ”

教団本部から指示と同時に新たな血の詰められた小瓶も届けられた

「儂は指示に従い小瓶の血を飲み力を手に入れた」

血を飲むと体は燃えるように熱くなり三日三晩に渡り高熱にうなされた

目が覚めると肉が削げ落ちた今の姿になった代わりにいくつかの反魂術が授けられていた

勘のよい美香が気がつく

「それって!ネクロマンサーの血を飲んだの?」

”間違いないね継承の術を施された血を飲ませ強制的に能力の一部をわけ与えたね”

血を飲ませることで自分が使える術の一部を授けるなんて都合のい伝承の術は当然だけど得る対価が必要な設定をしていたはず


”う~なんだっけかなあ”

物語の続きを紡ぐ前に考えていただけの多くの設定の一つだから記憶が曖昧だよ

「どうしたの?」

”伝承の術は簡単に力を手に入れられるかわりに対価を設定していたのだけど思い出せないの”

「それは彩美ちゃんにしかわからなよ」

またも存在を無視されている状態に耐えられなくなったのか

「お前たちは何者だ!なぜ血の儀式や伝承の術を知っているのだ!」

男が騒がしくなったよ

「うるさい!」

またも美香に首筋へ手刀を入れられ気絶させられたよ


”あっ思い出した!”

「なになに?」

”飲んだ血で内臓が焼かれているので食事をしても栄養を吸収出来なくなり餓死しちゃうんだったよ”

「見せ場のない微妙な設定だね」

”まあ使い道もなく考えている途中の設定だしね”

あといくつか聞きたい情報があるので部屋にあった水差しを法衣男の頭上でひっくり返す

「うげっほ」

水を浴びせられ法衣男が目を覚ます

”支部と本部の場所を教えろ”

「本部の場所は知らない定期的に巡回司教か司祭が本部の指示を伝えに来るだけだ」

邪教団の本部を知る者はかなり限られているのか面倒だね

”では支部の場所は”

「街の南にある廃墟の地下だ」

聞きたいことは以上なので鬼火を男に使う

「あぎゃあああ燃えるうぎょお」

悲鳴が上がり数秒で男は燃え尽き霧散して消え去った

「おっといきなりの鬼火だ」

”残った男の血が次の厄災につながると面倒だしね”

「しかし容赦のない彩美ちゃんだ」

え~と最近の美香さんにいわれると少し不本意を感じてしまう私がいます

”さて地上はどうなってるかな?”


「さて汝は何の目的があり今回の騒動を起こした」

両腕を胸前で組み仁王立ちで問い詰めるマドカの前に両膝立ちで座らされたチャムは首筋にガイルが剣を当て動きを制している

「これがサトス家当主に対する王家の扱いかあ!」

出来るだけの凄みを込めているつもりなのだろうが高い声が焦りで裏返ってしまい喜劇にしか感じられない

地下室から地上に戻り邸宅の中庭に出ると捕らえられたチャムが尋問を受けていた

美香が地下室から肩を貸し連れて来た男にチャムが気がつくと表情が氷つく

「ち・ち・父上」

マドカも男に気がつく

「これはサトス卿ご無事で何よりだ」


地下室でギイの尋問を終え地上に戻ろうと並ぶ独房の前を通り過ぎようとした時に気配をわずかに感じた

「パン!」

もうねえコメントはいいですよね美香が脳筋モードで気配のした独房の施錠された扉を引き千切り開ける

引き千切った扉を投げ捨て独房に飛び込んだ美香は隅でボロ布に包まり丸まる男を見付け抱き起し優しく話しかける

「話せますか?」

男の様相より誰か美香はわかっていての対応だね

「儂はロン・サトス・・・サトス家の当主・・・」

かすれる声で男が返す

美香に続き独房に入った私が見たのはボロ布がはだけ拷問のあとが生々しいサトス卿だった

指は全てあらぬ方向を向き爪は全て剥がされて痛々しい状態だ

頬はこけ無精髭は伸び放題で垢まみれだが目は鋭い眼光を放なっている

”まずは回復しますので”

目で合図をすると美香がサトス卿にヒールを施す


多重空間のポーチからワインの瓶を取り出しサトス卿に渡すと喉を鳴らし一息で飲み干した

口の端にこぼれ出たワインを手の甲でサトス卿は拭う

”何があられました?”

「理由はわからぬが反乱を起こした息子に監禁され拷問をうけていた」

”何のために拷問を?”

今は亡き夫人の連れ子であったチャムはサトス家との養子縁組をサトス卿から認められていたなかった

慣習では正統な跡継ぎがいない場合は十六歳になると連れ子に養子縁組で相続権を認めるのだがチャムの素行に問題を感じたサトス卿が認めずにいたからだ

反乱を起こしサトス卿を亡き者にしても養子縁組が成立していない状態でチャムはサトス家を継ぐことはできない

そこでチャムはサトス卿に養子縁組の届け出を王都に送るように迫ったが拒否をされ拷問にて申出書にサインを迫っていた


拷問の理由を語り終えたサトス卿は私が渡した新たなワイン瓶を一口飲む

「状況を教えてもらえぬか」

息子の反乱とギイを亡ぼしたことを伝えると

「すまぬが息子の元へ連れていってもらえぬか」

ヒールで傷は癒えているが監禁と拷問で弱った体は自分で支えることができず立ち上がれないサトス卿に美香が肩を貸す

「そなた達は?」

”水晶級冒険者の彩美です”

「黒曜石級冒険者の美香です」

”訳あってマドカ様に同行して光の国へ向かっております”

肩をサトス卿に貸した美香と共に地上を目指し歩みはじめる


美香の肩を離れ震える足を気合で踏みしめマドカの前にいき深々と礼をするサトス卿だった

「このたびは愚息が・・・」

それは突然だった

「もう終わりだ!」

とチャムは大声を放つと手を口に当て何かを含んだ

大きく喉仏が上下し嚥下が見て取れた直後に

「ぐおおおおおおおおお!」

喉が千切れそうな唸り声をあげたチャムが弾けるように立ちあがる

マドカの横にいた七海がなにかを感じ魔防壁を自分達とチャムの間に出現させる

光壁の表面がさざめくと同時にチャムの横にいたガイルが大きく跳ね飛ばされる

大きな波動を放ったチャムは服を引き裂き体が大きくなっていく


チャムの体が一回り大きくなり上半身の服が弾け飛ぶ

「・・・・おおおおお!」

唸り声が納まると肌が白くなり目が白く濁ったチャムがマドカを目掛けて跳躍する

”死人化したのか!?”

いや違う!口元に見える二本の乱杭歯!あれは死鬼の上位体であるバンパイアの証!

マドカと真矢は抜剣をし跳躍してくるチャムに備え構えている

ガイアで死鬼との戦いに苦戦しているマドカ達では死鬼の上位体であるバンパイアの一撃を無傷で防ぐのは難しい

”ダメ!正面から受けては!”

私の叫びに七海が応じてチャムと二人の間に魔防壁を再び出現させる

跳躍中に大きく息を吸い込み二人の前へ着地する寸前に雄叫びをあげる

「ぐわあああああ!」

地面に届いた雄叫びは地面をえぐり大きな土埃をあげる


”ごほっ・・・まったく想定外すぎるよ”

声を上げたあとだったので舞い上がった土煙を少し吸い込んでしまい喉が痛いよ

チャムは伝承の術を施されたネクロマンサーの血を飲み込んだのは間違いないね

血に施された特殊な伝承の術でバンパイアに突然変異した

しかし本来であれば伝承の術は数日を要して肉体や精神に変化をおよぼす術のはずだ

一瞬での変化をおよぼす術の代償が死人に化した証である白く濁った目なのか


土煙が納まり視界が開けたチャムは後ろに下がり攻撃へ備えているマドカと真矢でなく二人より近い位置にいる七海に向かい跳躍をする

力いぱい七海を踏みつぶすように着地をしてまたも大きな土煙をあげる

土煙が風に流れ視界が開けるとバックステップをして攻撃を避けていた七海がチャムへ回し蹴りを決める

弾け飛んだチャムは地面を跳ね勢いよく転がり私の前で跳ね起きる

腕を大きく振りかぶり殴りにきたところをバックステップでかわし回し蹴りを決め再び弾け飛ばす

”こら!七海!狙っただろ!”

テヘペロって唇から見える舌先が可愛い過ぎるぞ!


私達の中央に出来た空白地帯で跳ね起きたチャムをマドカの後ろに控えていた随行の団員達が飛び出し取り囲む

次の獲物を探すチャムの動きは七海と私の蹴りをうけたダメージをいっさい感じさせない

これは無理な術で瞬間変化した肉体に魂は追い付けず壊れてしまい本能のみで暴れている状態で痛みも感じていないね

死鬼と違いバンパイアは心臓も脈打ち仮初の命といえ生者なんだよ

だからアンデッド属性でなくてバンパイア属性となり死鬼と違い死の概念もあるはずなんだけどね

バンパイアは死ぬと灰になるので死人のバンパイアは存在しないんだよ

では死人でバンパイアの特徴を持つとなるとバンパイアに吸血され眷属になった場合なんだけど吸血の主なしにチャムは眷属にされたのか親なき子とか完全に設定外な状況ですよ

う~ん深く考えるのはやめよう物語は独自の道をすすんでいるのだから私の設定外の出来事もあって当然だよね


手近な団員から順に襲いかかるチャムに対して団員達は防御で受ける愚かな行為はせずに避け続け攻撃の隙を狙う

チャムの攻撃は疲れを知らず途切れることがなく団員達は攻撃の隙を見い出すことができずにいる

攻撃の合間にチャムの視線がサトス卿を捉えた

白く濁った目に一瞬だが生気が戻る

「お前が!お前が!お前がああああああああ!」

激しい憎しみが一瞬だけ死者へ生者の意識を取り戻させたのか!?

サトス卿に向け大きく跳躍をし踏み潰しにくる

再び巻き上がる土煙が風に流されると着地地点にサトス卿はおらず左右に首を振り標的を探すチャムが見えてくる

すでにサトス卿は美香に抱きかかえれらチャムの攻撃範囲を脱していた


う~んどうする

運良く死人化から逃れた邸宅の衛兵達が外での異変に気が付き集まりだしている

私がチャムを倒すのは簡単だけど今後を考えると今の状況はマドカのカリスマ性を見せる場所には最適なんだよね

よし一芝居打つよ!

金乃剣を抜きチャムの反撃を誘う隙を見せつけ斬り掛ける

隙を見つけたチャムは大きく腕を振り上げ殴りにきたよ

チャムを斬り裂くのは余裕だけど剣を横に倒し剣の平地で拳を受けマドカの方向に向け弾き飛ばす

”マドカ様!お渡しします!”

阿吽で意図に気が付いた七海が即座にマドカと真矢に光の加護を施す

施された加護はチートを存分に発揮したレベルで二人の体は溢れ出てしまった加護の力で光輝く

まあ闇属性の二人が光り輝くとは之如何にな状態ですがね


「しかと受け取った!」

弾け飛んできたチャムをマドカは返答と同時に左肩から袈裟切りにし続いて真矢は右肩から袈裟切りにする

四片に斬り裂かれたチャムは断末魔を上げる間もなく灰となり風に舞い散り霧散する

「マドカ様」

震える足を踏ん張り歩みマドカの前まできたサトス卿は片膝をつき敬意をしめす

「無事でよかったサトス卿」

「反乱を計画したファンに幽閉されておりましたところを彩美殿に救出いただきました」

「傷は美香の回復魔法で癒えておるが体力の消耗が激しいな詳しいことは明日の出立前に聞くので今日は休め」

「有難きお言葉を・・・」

マドカの言葉に張っていた糸が切れ倒れ込むサトス卿を衛兵が抱え邸宅内に連れていく


私の仕込みを全て理解したうえでマドカが私へ声をかける

「邸宅内の状況どうだ彩美?」

”死人化した衛兵とメイド達と死人化の術を施した者は全て滅し安全は確保いたしました”

「ご苦労であった詳細は明日の朝食時にサトス卿を交え報告会をおこなうので参加を頼む」

”御意”

危機が去った今宵はファンの反逆に関する背景の解明などは明日に先送りを決めたマドカだね

「今宵は私のおごりだ存分に飲み食いを楽しめ!街へゆくぞ!」

マドカは旅の疲れと貧しい夕食に戦闘での疲労困憊を労うため団員達を引き連れ街に繰り出したね

「彩美達はどうする?」

”ちょっと野暮用を済ましたら合流するよ”

「では待ってるぞ」

察してくれたマドカは深く問わずに団員達を連れ街に向かう


馬を駆り七海と美香と一緒に街を出て南に向かう

出立前に厩務員から馬を受け取るときに聞いた目標の山へ向け数リーグほど馬を駆ると目的の廃墟に辿り着く

廃墟を探索するとすぐに朽ち果てた寺院らしき跡地に地下につながりそうな扉を見付ける

さて扉の先はどうなっているのか?どう対処しようか?と考えていると

「ドッガーン!」

木の扉を粉々に蹴破り中に入って行く七海と追従する美香だよ

”おーい!七海!”

「腹が減った!手早く終わらせよう!」

これは空腹で脳筋モードの美香より危険な感じになってる七海だよ


「お前達は何者だ!」

二人に少し遅れて破壊された扉の中に入り地下へ続く階段を降りると男達の声が聞こえてくる

「神聖な神殿でなにをする!」

神聖の意味が一般常識と違う気がするな~とか現実逃避をしながら二人のあとを追う

「バキ!」

と骨の砕ける音と断末魔が数回聞こえ静かになった部屋に入る

石造りの部屋は祭壇らしき棚と数人が座れる丸机と椅子だけがある八畳くらいの部屋で床には灰色のローブをまとった首の向きが不自然な数人が倒れている

わかるよ部屋に突入した二人の手刀で頸椎を砕かれ即死だよね

祭壇の前では仰向けで七海に股間を踏まれている紫法衣姿の老夫が青い顔で汗を流してるよ

「な・な・なんだんだお前達は!」

老夫がひきつった声をあげる


一人だけ法衣を着た一番偉そうな奴だけを残していたね

「ここは教団の支部で間違いないか」

七海の尋問に空腹でイライラ感が伝わってくるよ

「何のことだ?」

老夫の股間を踏みつけている七海の足に力が入る

「うごおおが!」

悲鳴も気にせず七海が再び確認をする

「もう一度聞くが教団の支部ではないのか?」

足の力が少し緩められ老夫の返答を待ってるね

「そうだダブネス様を我々西辺境の者が祭る聖なる場所だ」


「サトス卿を襲った理由はなんだ」

「儂は知らぬ!」

再び七海の足に力がはいり老夫が見悶える

「うぞじゃなあああいいぐうえ」

七海の拷問じゃなかった尋問を見ながら気がついたけど老夫から邪気を感じないよ

床に転がるローブの死体からも残留する邪気を感じることはできないね

もしかして!?

”お前達は穏健派か?”

私の質問に気が付いた七海が足の力を緩める

「そうだ!強硬派は全員領主様の館へいった」


「穏健派?強硬派?」

美香が私と老夫のやり取りに悩んでるね

”邪教徒の多くは強硬派でダブネス復活のためであれば血を流すことをいとわない宗派と表現していいかな”

「では穏健派は祈りをるだけの宗派になるのかな」

”うん七海の考え方で問題ないよ”

ここも物語に紡いでいない部分の設定だよ

理由は各々だけど神々に見捨てられたと感じ者が神の代わりに魔王であるダブネスを崇めるが暴力行為は否定する数少ない人達だね

「あっガイアでも同じ宗教でも違う顔があるのを習ったの思い出したよ」

”そうそう右派と左派や保守派と革新派とかの場合もあるけど同じ信仰でも辿る道筋が違うことはよくあるよね”

では殺戮が全てのダブネスが穏健派を許したのかだけど穏健派の祈りからわずかながらでも力を得られていたからだけど詳しく設定を考える前で何の力かわからないよ


”質問に素直に答えれば安らかな死を与える”

「答えますのでどうか安らかに」

答えないと七海が股間グリグリで安らかじゃない状態になるのは想像できたみたいだね

”一連の出来事に関与はしているのか”

「強硬派のギイとドラ息子が中心ですすめていたが我々は詳しいことを知らない”

その後に聞き出せた情報は多くなかった

この支部は珍しく対立することも多い穏健派と強硬派が同じ場所で活動をするが祈りの刻以外は互いに不干渉なので他派に関して詳しくわからないらしい

計画で知っていたことは強硬派の信者は首謀者二人以外に数名いたがギイにより死人化され領主宅に連れていかれただけだった

”じゃあお前が消えればこの支部は消滅でいいのかな”

「はい」

”血を流さずともダブネスを崇める限り私は許すことができない”

「覚悟は出来ております」


祭壇の前で祈りを捧げはじめる老夫を背に二人を促し地上へ戻る

地上に戻り鬼火を地下室の入口から中に放つと地下室があった部分の地面が静かに大きく陥没していく

「彩美ちゃん大胆だねえ」

大胆といわれてなんと答えればですが支部ならダブネスの血が保存されている可能性もあるので禍根を残さないためにも完全に消し去っただけなんですが

「腹が減ったよ!街に帰ろう!」

七海の魂の叫びが廃墟に響く


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