第45話 塊
センターゲートから、約2時間飛行し、今回訓練を実施する場所に到着した。
「沙月さん、ここ日本だよね?」
「日本というかまだ本州ですね。三沢基地の近くを通り、海沿いに北上していましたので、恐らく下北試験場だと思います。」
「下北試験場?だとしたらここ何県?」
「青森県の太平洋側に位置してます。ここでやるんですね……。」
「ここって演習場とは違う感じ?」
「ここはミサイルやロケット砲などの装備品の試験場ですね。詳しい事は私も分かりません。言えるとしたら、大規模な爆発等あっても、ごまかしが効く場所ですね。」
「沙月さん、その状態、疲れない?」
「疲れますが、非公式とはいえ、防衛省や内閣府、外務省らしき官僚がおりますので、気を抜けない感じですね。
…………悠一さん、帰ったらご褒美を所望します。」
「りょうかい!何が良いか考えておいてね。…………但し俺が出来る範囲でね。」
「ぇぇ〜けち。………考慮します。」
「結はここでなにするの?」
「私は魔法の観測係かな?ここに観測用機材を運び入れてるから、その調整と訓練中の監視。」
「なんか、仰々しい機械がたくさんだね。」
「これ壊すと、数億は軽く飛ぶから気が抜けないのよね。」
「何事も無いことを祈るよ。」
「何その他人事みたいなこと言って……カッコイイ所見せてよね♪」
「かっこいいねぇ〜善処します。」
少し周囲を確認していると、松岡所長が自衛隊の人と歩いてきた。
「相楽君に大丈夫かな?今から少し離れた場所に移動してもらい、その場所でマールス師団長とセレス殿下と相楽君で、訓練をしてもらうが行けるかな?」
「はい。大丈夫です。」
「では、移動してもらおうかな?卯花曹長。申し訳無いが車両の運転を頼むよ。」
「はい。わかりました。」
沙月さんと一緒に停められているハマーみたいな車両に近づくと、セレスさんとマールスが待っていた。
「すいません。お待たせしました。」
『ユウイチ〜♪これに乗るの?』
「そうですよ。『セレス』さんと、『マールス』さんは後ろに乗ってください。俺は助手席に乗りますね。」
『えぇ〜ユウイチは私の隣よね?』
「え〜っと、とりあえず乗りましょうか?セレスさんはここですよ〜」
と言いながら、左の後部座席のドアを、開け、セレスさんが乗り込むと、そのドアを閉めた。
「『マールス』さんは反対側の扉から入ってください。」
『おう。』俺は回り込み、マールスさんを右側の後部座席のドアを開け入ってもらった。
俺自身も助手席に乗り込むと、沙月さんが、車両のエンジンをかけ、予定場所まで、進んでいった。
結や松岡所長と他たくさんがいる所から、500メートル位移動し平坦に整地され機械がたくさん設置されている場所に到着し、セレスさんとマールスさんを車から出てもらい、車は少し離れた位置まで戻っていった。俺、セレスさん、マールスさんは、徒歩で観測用の機材等が置かれている場所の中心部へ進んでいった。
『ねぇ、ユウイチ、この機械は何に使うの?』
「たぶん魔法を使う時に出るエーテルとかを観測する機械かな?なんかいろいろな種類がありますね。」
『すごいね。』
「『セレス』さん、そろそろやりましょうか?」
『うん。じゃあユウイチ、いつものやって♪』
「いつもの?あぁ〜手を繋ぐのですね。」
セレスさんの左手と俺の右手を重ねて集中するように手を握った。
『じゃあ、ユウイチ………いくね。
久々に全力を出せそうだよ♪』
セレスさんが意識を集中し、セレスさんの身体に俺の魔力が流れていく。
そして、水の塊が顕現した。
ただ大きさが尋常では無い、直径が10メートルは超えていそうだ。
その塊が…『えいっ♪』とセレスさんが軽く一声と手を前に振り出すと、急加速し、200メートルほど先に「ドン!!」と重低音が響きながら着弾した。
そして、水が制御から離れ、室内での練習時は霧散していた水が、霧散せずに着弾地点から溢れ出し、その周辺を洪水の如く吹き飛ばしていった。
そして、着弾した跡はクレーターになり、大きな水たまり……池が完成した。
(えぇ………改めて水こわっ。この質量だと普通のビルとか倒れそうだよな?着弾した後もヤバい。あたった周辺も水攻めされてるよ。)と俺が引いてると、
『ユウイチ♪どんどんいくね!』
と可愛い感じのテンション爆上がってます的な、セレスさんがいた。
俺の手からセレスさんにエーテルが流れ出し、また水の塊が顕現した。先ほどとはまた違った塊が目の前にあり、直径は人の身長より少し大きい2メートル位ではあるが、数は一個ではなく、8個あり、それが空中で〇の形に並んでいた。
セレスさんが『次行くよ♪』と軽い感じで、水が一つずつ飛び出していった…………連続でガトリングガンの如く連射している。
水が円を描く様にセレスさんの手の前で動き、円の最下点で飛び出していき、その抜けた所に水が顕現しと、発射と顕現を繰り返していった。
飛び出した水は、先程のクレーターの池に直撃し、バババッと言う音と共に水しぶきをあげていた。
(これは何発出てるの?1秒で2〜3発位は余裕で出てそうな。ってか、これ発射音無いから、相手に気づかれずに撃てるよな?けどエーテル使ってます。みたいな感覚があるから、魔法使える人には気づかれる………こっちの世界だとわかんない人しかいないな?ヤバいよな!?)
30秒程すると、セレスさんが
『ユウイチ、疲れてない?大丈夫?』と俺を心配そうに見ながら、水を発射するのを止めずに言ってきた。
「全然問題無いですよ。」と返すとセレスさんがちょっと引いていた。
(あれ?まぁ確かに身体の中から、何か抜けているのはあるけど、ちゃんと集中すると、確かに少し減っている感じ?がするかな。)
『そうなの?じゃあ、もう少しスピード上げてもいい?』と考え込むような仕草でセレスさんが言ってきたので、すぐに首を縦に振ると、セレスさんが余裕そうな顔から真剣な顔になり、水が飛び出すスピードと発射感覚が短くなり、先程の「バババッ」の水の着弾音の感覚が短くなり「バァー」と音がずっと続くような水の着弾音が聞こえてきた。
(まだ連射速度上がるんだ〜スゲェーなセレスさん。秒間何発出てるのかさっぱりわからないな。ここまで速かったら、連続した水の塊を…いや、水の棒かな?みたいに見えるし。あ〜着弾場所が、水しぶきでカーテンのようになってて全然見えなくなってるな。)
それから、水の発射が1分位続き、発射が止まった。セレスさんを見ると、汗をかいているが、いい運動したと言わんばかりのいい笑顔をしていた。
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