第115話
「…………ドラドラ?」
山から出てきたのは黒いドラゴン。うちのダンジョンでドラゴンはドラドラだけだ。だから、多分ドラドラなんだろう。
進化、したのか?
調べるとブラックドラゴンになっていてた。
光り物が好きなドラゴンの中でも特に財宝への執着心の強い種だ。
カラスみたいだな。
だが当たり前の話だけど、ここはドラゴンのフロアとは直接繋がってない。
と言う事は本能か何かでここに宝の山があると知ってわざわざやって来たってことだよな。
「お前そんなにここが気に入ったのか?」
「グララララー!」
本人的にはそうだよー、と言ってるのだろうが、もう以前のような可愛らしさは皆無で顔面の凶悪さが増すばかりだ。
ドラドラじゃなかったら俺気絶してたかもしれない。
「はっ、ゆ、ユースケ様?これは…………」
手を震わせながらゼカイが聞いてきた。
ドラドラの声でようやく三人は正気に戻ったようだ。
「宝物庫。やっぱ王様なんだから持ってないとなー」
地上の国王たちが持ってるのに俺だけ持ってないと恥ずかしいじゃないか。
それにいざって時に使える。
例えば俺の命を狙ってきた暗殺者に命乞いをする時。
た、頼む。この財宝をくれてやる。だから命だけは…………だめか?
「いくらなんでも多すぎませんか⁉」
「何を言うか。財力=国力だぞ!」
「であるならばエスリメは既に世界最強の国ですよ!」
正直言うとこの宝物庫の使いみちを具体的に考えてはなかった。
作りたかっただけだから作った今はもう満足してる。
だが、馬鹿正直にそんなこと言ってしまうと孔明に殺される未来しか見えない。
ハハッ。均のように未来予知できるようになったぞー。
今更になって自分の危機的状況に気づき冷や汗をかき始めた。
考えろ俺。どうにかしてこいつを活用するんだ!
「どうしよう!」
「ユースケ様、このような案は?」
セクメナが俺に名案を授けてくれた。
「それだ!ありがとう!」
俺は全力でリードのところへ走った。
急げ!孔明に知られる前に!
がやがやと喧騒に包まれているここはエスリメの冒険者ギルド本部。
一階〜二階にかけて巨大な依頼を貼り付けるボードが置かれており、世界中からの依頼がここに集まってくる。
以前の本部にはこんな物はなかったが、テレポートゲートで世界中のどこにでも数十分でいくことができるエスリメに移転したため、グランドマスターのリードが設置したのだ。
一階と二階にそれぞれ依頼の受注カウンターがあり、その上には巨大なモニターが設置されていて、スライムダンジョンに関する情報が表示されている。
その情報も様々な物があり、ダンジョンの新しいエリアを見つけた。この通路にはこのようなトラップがある。ここではこんな種類のスライムが居た。いま需要のあるスライムはこれだ等だ。
現在スライムダンジョンは第一迷路の半分程が攻略されていて、日に日にダンジョン攻略をするためにエスリメへやって来る冒険者の数も増えている。
なにせダンジョンの情報は高く売れる。しかもいま一番熱いスライムダンジョンだ。
自分たちもこのビッグウェーブに乗り遅れてなるものかと高名な冒険者が集まり、それに続いて中堅、初心者冒険者たちがやってくる。
このようなことなら数年に一度はあるが、スライムダンジョンはその先がある。
当然だが、冒険者は依頼を受ける為に絶対にエスリメに入る。
そこで彼らが目にするのは快適な生活。食べたことのない美味しい食事。見たことも聞いたこともない娯楽の数々。
しかもそれらはとても安価で提供されているときた。
彼らの考えることは一つ。住みたい!
人間は一度上を知ってしまえばもう今までの生活では満足できない。
交通の便も良く、福祉も整っており税も無い。努力すればするほど生活の質は確実に上がる。
これほど住みよい国はない。
そこに待ってましたと言わんばかりにある大量の空き物件。
ここまで環境が整ってると、普通ならなにか裏があるのではないかと疑ってしまうが今までそういった声が上がったことはほとんどない。
その理由は入国時に渡されるパンフレットにある。
そのパンフレットにはダンジョンマスターについても書かれており、ダンジョン内に住むこと自体が税のようなものだということを入国時にほとんどの人間が理解しているのだ。
こうしてエスリメには永住する冒険者が右肩上がりに増え、雄亮と孔明は高笑いをするのであった。
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