第113話
パーティーの次の日は周辺国家との条約の締結だ。
……とは言っても、実際俺は居るだけで、全て孔明に丸投げだけどな。
孔明と王、又は大臣が話している間に忘れたのでどんな条約があるのかが書かれている資料を読んで確認する。
うーん、これと言って変わったことは………ん?
聖女条約?………………ああ、セラン王国との条約か。
聖女をできるだけエスリメに近寄らせないようにする。もしもなにかの間違いで入国して問題を起こしたとしても、それはセラン王国の本意ではなく聖女の暴走であるため賠償はするが、それ以上突っ込んだことはしないでください的なことが書かれている。
まあ自然災害は止められないからなあ。
賠償してくれるんだからいいか。
条約の締結はつつがなく行われ、招待客は続々と国へ帰っていき、バタバタから開放された俺は通常の生活リズムに戻っていくのだった。
…………なーんてモノローグ入れてみたが、そうは問屋が卸さなかった。
今回の式典をきっかけに、エスリメへの移住希望者がたくさんやって来たのだ。
そのうち半分以上が冒険者や冒険者ギルド関係者とその家族。
グランドマスターであるリードがエスリメに住むので、強制的に冒険者ギルド本部もここに移転することになったのだ。
「冒険者ギルド本部が私の居るべきところではない!私が居るべきところが冒険者ギルドなのだ!」
と帰国の際に言っていた。
しかし、当たり前だがパーティーの後もリードは職員たちに反対されたらしい。
そりゃ動機が娯楽だからなあ。
だが、リードはその場で職員たちに反論。
エスリメはテレポートゲートのおかげでどこの国にでも短時間で行ける為便利であるので、多くの冒険者が移動に利用している。
冒険者ギルド本部は各国の高難度依頼が集まる場所、ならば国と国との中継点のエスリメに置いた方が以前本部があった場所よりも、依頼を受ける冒険者たちの時間のロスが少なく済む。
そしてエスリメ国内では犯罪を起こすこと自体が難しいため、トラブルに巻き込まれる可能性が低い等、言って説き伏せた。
最初は渋々付いてきた職員たちもエスリメの食事や文化を気に入ってくれているらしい。
リードはたまりに溜まった有給を使って遊んでいる。
ここで俺の中である疑問が生じた。
俺の国では働かない奴にでも最低限のDPは手に入る。
個人の強さによってDPは変わるけど、一般的な大人ならば食費と光熱費や水道費などなら賄えるくらいは手に入る。
給料のシステムだけで言えば共産主義に近いと思う。
なのでニートの増加を懸念していたのだが、リードみたいな生活をしているのはほんの一握りの者たちだけで、他は真面目に働いている。
そのことを孔明に相談すると、彼は呆れてものも言えないと首を振った。
「心配だったならすぐ言ってください。あなたは分かっていると思っていました」
「てことは孔明が解決してくれたって訳じゃないのか」
「均の未来予知でなんの問題もないと分かってましたからね。エスリメは特殊な社会なので私の予測があまり効きません。ソ連とかの共産主義、社会主義はどれだけ働いても給料は同じ。ここはエスリメは同じですが、基本は資本主義の方向で政治を行っています…………ああ、ベーシックインカムってことでしょうか」
DPは手に入るが、それは生活最低限。エスリメの娯楽を楽しみたいならばある程度は働かないといけない。
自分から働きに来る上に、エスリメの仕事はほとんど出来高払いなのでサボることはない。
だからニートが少ないのだろう。
「他にも働く理由はあるでしょうけど、逆に働かない人たちは、リードさんみたいに元々大金を持ってる人たちや、ここに来る前に死ぬほど働いて休みがほしい人とかでしょう。結局その人たちも時間が経てばまた働き始めるでしょう」
なるほどなぁ。確かに娯楽あふれるエスリメでただ食っちゃ寝生活するのはもったいないだろう。
ここがエスリメだからこそニートができなかった訳だ。
住民に対しての甘やかし具合がちょうど良かったってことだ。
住民とは違い、DPの支払いの必要のないダンジョンマスターたちはニート化してるやつがほとんどだからな。
あいつらやれと言われるまでずっと遊んでるから。
自分から働くのは老師や均だけだ。
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