第112話
最後に来たのは冒険者ギルドのグランドマスター。冒険者ギルドのトップだ。
彼は31才とダルシメンの首長よりかは年を食ってるが、他と比べるとなかなか若い。
「私はリード。君のことはジェノルムからよく聞いてるよ。かしこまらずに普段通り楽に話そう」
「…………そういう事なら。エスリメはどうだ?」
「最っ高!飯はうまいし、文化も沢山。風景も故郷を思い出すよ」
「それは良かった………………ん?」
俺は慌ててリードを鑑定し直すが、やはり特に変わったことは書かれていない。
孔明のことがあるから勇者かもと思ったが、それも違う。
「こ、故郷の名前は?」
「日本。君や孔明と同じだと思うけど?」
「……勇者じゃないようだが?」
「あー、相手の素性を探る能力でもあるのかな?それじゃあ分からない。だめだよ。私は転生者だからね。正体も明かしたし、そんなに警戒しないでくれたまえ」
異世界召喚があるんだから異世界転生もあるのか?
なんにせよ、なんだかんだで分からなかった謎が解けた。
相手の出身地や住所、家族構成やエスリメに来た目的なら分かるが、生まれる前までは流石の鑑定様でも分からないからな。
「孔明はともかくどうして俺も日本人だと思った?」
「名前見たら分かるよ」
そうだったー。こんなことなら偽名でも使えばよかった。
「ジェノルムが携帯みたいなもの使ってた時からおかしいとは思ってたけどね」
「…………何が目的だ?」
「君の目なら分かるんじゃないのかい?」
リードのエスリメに来た目的は文化を思う存分体験する。
「漫画、音楽、小説、ゲームってところか」
「フッ、大正解」
くっそ!腹立つなこいつ。
思わせぶりなこと言っといてただ遊びに来ただけかよ!
「私が死んだ後の地球の発展はめざましいと他の転生者から聞いているよ。一度は諦めたものが手の届くところにある!この気持ちが君には分かるか?」
うーん分からなくもない。
俺は召喚後、数十分でショップにマンガを見つけただけでかなり安堵したのだ。
31年待ったリードの気持ちはそれ以上だろう。
「てゆーか、俺に言わなくても普通に店で売ってるぞ?」
「え?売ってるのかい?図書館に行ってマンガが無かったから、てっきりダンジョンマスター居住区の大図書館にしかないのかと思ってたよ」
まあそっちにもあるんだけどな。
てかもう図書館行ってたのかよ。
「ならば今すぐにでも大人買いしよう。うん。フッフッフ、今まで生活費以外で消費せずたまりに溜まった金を使うときが来た!」
「週刊誌はどうするんだ?まさか毎週ここに来るってわけにもいかないだろ?」
早速パーティーを抜け出そうとしてギルドマスターの一人に羽交い締めされたリードが、俺の言葉に反応してばっ!と振り返ってきた。
「…………あ、新しいのもあるのかい?」
「俺が居なくならない限りずっと入荷し続けるぞ」
週刊誌だけでは無く月刊誌も俺は毎回読んでる。
「…………………………私は、この国に住むぞー!」
「グランドマスター正気ですか⁉本部をここに移すということですか⁉そんな急な……」
「うるさい!私はグランドマスターだ!私が冒険者ギルドの法だー!」
ギルドマスターたちの静止を振り切り、リードのエスリメ移住は決定した。
最後の辺りは駄々こねる子供みたいだった。
更にリードはエスリメが危機に陥った際は冒険者ギルドが総力を挙げて支援するとまで言ってくれた。
もう我が国に怖い物はなくなった。
こういったこと以外は事件らしいこともなくパーティーは無事終わった。
子供や婦人方が、甘味に群がってたからケーキ屋や駄菓子屋の在庫を増やしておこう。チースも忙しくなるぞ。
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