第111話
俺の話で起きた拍手が止むのを待って、建国を宣言すると再び大きな拍手が起きた。
後ろのダンジョンマスターたちが小さくサムズアップしてくれた。
どうにか上手く行ったみたいだ。
少し前までアガリ症の陰キャ高校生だったにしては良くやったと思う。
礼をして再び舞台裏へ戻ると、足の力が抜けて座り込んでしまった。
「ほっほ、ユースケ様にこのような弱点があったとは」
「茶化すなよ。俺はまだ16のガキだぞ。いくらでも弱点はあるさ。だから支えてくれ」
「御意」
老師を含め、全てのマスターが俺に向かって跪いた。
「雄亮さん、兄さんが呼んでます」
堅苦しい儀礼服を脱いで均に付いていくと、ニヤニヤとした顔の孔明が待っていた。
「何だよ」
「いえいえ、まぁまぁ良い演説でしたよ。噛まずに言えてましたし」
演説の原稿は孔明は関わってない。俺が考えて老師に文章になってるかチェックして貰っただけだ。
「そんなこと言うなら原稿考えてくれても良かったのによ」
「ああいった場では自分の言葉かそうでないかはバレやすいんですよ。ましてやこういった行事に慣れている、各国の王や重臣たちならば確実に見抜くでしょう」
確かに自分で考えてない原稿にはあまり感情は入らないかもしれない。
でも自分で作るとあんな感じで良かったのかと不安にもなってしまう。
「大丈夫。各国の招待客は褒めてましたよ。あの若さで動じずに話すことができる者はそう居ないってね」
原稿の内容には触れてくれないのか……。
「何はともあれお疲れ様でした。でも、この後パーティーがあることをお忘れなく」
パーティーは今回の為に作った会場でのビュッフェ形式だ。
マスターたちや俺は堅苦しいのは苦手だし、アレルギーとかもある上子供も多いから自由に食べたいものを取るほうがいいと思ったからだ。
パーティーに招待してあるのは各国の王と家臣、ギルドのマスターたち、名のある商人と冒険者たちだ。
会場に居るみんな礼服だけど、食べ物のとり方でそいつの身分が想像できた。
興味深そうに一品ずつ食べてるのが王族や貴族、料理の味付けや調理法についてヒューマンスライムに聞いてるのは商人、見境なくがっついてるのが冒険者だ。
「よう、ユースケ」
「ジェノルムか。ギルドはどうだった?」
「十階建てなんて聞いてねえぞ!最高じゃねえか!」
喜んでもらえて何よりだ。怒ったような口調だったからビビった。
今気づいたけどセラン王はクレイジー聖女を国においてきたみたいだ。
当たり前か。確実に速攻で国際問題になる。
もし連れてきてたら入国拒否してた。
ジェノルムをきっかけに次々と各国の代表が挨拶をしてきた。
まずエスリメが国の中にあるガタカ国王、恰幅が良く人の良さそうなおじさんだ。
王様たちの中で一番料理を食べていた。
次にセラン国王。ジョーカーとのバトル時に王女を逃してしまったことを謝罪してきたので笑って許した。
あれは誰に責任があるという話じゃない。災害だ。
ダルシメン連邦の首長は20代くらいの青年だ。若いのに選挙で選ばれるなんてすごいな。
聞いたところによると、天才と呼ばれていて画期的な事業で成功して莫大な財産を築いているそうだ。
ストリア連合の連合長はムキムキマッチョマン。もうすぐ50代になろうかというのに筋肉に衰えが見られない。
午前中に行ったトレーニングジムが痛く気に入ったらしい。ぜひ筋トレ器具を購入してほしい。
クロノ帝国の皇帝は木の枝のように痩せ細った老人であったが、目つきが鋭く常にナイフを突きつけられてるような錯覚をした。
軽く二言三言話しただけだったが、何か測られてるような感じがして落ち着かなかった。
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