園田遥香の取材④
――本当に呪いかもしれない。
調べれば調べるほどそうとしか考えられず、遥香は恐怖を感じ始めていた。
あれから、志気雄以外の失踪者について彼女は調べた。
そして、行方不明になる前に全員の近くにある存在がいたことが分かってしまった。
「一体誰なの?」
まだ小学生ほどの少女。名前は分からない。
近所づきあいをしていないせいで、誰もはっきりと覚えていないのだ。
「この子が呪っているの?」
遥香の手元には、原因と思われる少女の写真があった。しかしハッキリしたものではない。
イベントの際に、偶然写ったものだった。ただしぼやけていて、片隅に小さく少女がいるという状態のため、顔が分かるかどうかギリギリのラインだった。
遥香からすれば、ぼんやりとしていても少女は可愛らしく、普通の子にしか見えなかった。
呪いと口にしたが、実感が湧かなかった。虚ろな言葉に聞こえて、思わずため息を吐く。
「名前もあやふやって……今は人との関わりが希薄よね」
近所の住人から聞いた話では、少女はマリアだか、マリナだか、マリヤと呼ばれていたらしい。少しでも名前を分かっただけで収穫だと、ハードルが低い達成感を覚えていた。
「おせっかいな人がいてくれれば。どこに行ったのかさえ不明なんて」
少しの収穫は得たが、すぐに行き詰まってしまった。分かっている範囲で最後の失踪者は、半年前にいなくなった。
遥香は家を訪ねたが、アパートの下の階に住んでいたという母娘はすでに引っ越した後だった。
「せめて勤め先か、通っていた小学校を調べられれば」
雑誌の記者では、調べられる範囲にどうしても限界が来る。
勤め先を見つけるにしても膨大であるし、少女が通っていたかもしれない小学校にあたりはつけたが、個人情報を教えてもらえるわけがない。
手に入ったのは、少女の不鮮明な写真だけ。
呪いがあるかもしれない。調べるにはいいネタだった。しかし、行き詰まっている状況だ。
「……新しい失踪者でも出てくれれば……」
そう呟いて、遥香はハッとした。
今、自分はなんてことを考えてしまったのか。最新の失踪者が現れてくれれば、記憶もまだ残っているので情報を得やすい。
そう合理的に考えてしまったことに、彼女は漠然とした。
「……のめり込みすぎてる」
これも少女の呪いかと、遥香は冗談交じりに笑ったが、声色には本気が混じっていた。
「……あ、はるちゃん」
そこに東嶋が現れた。遥香は救世主が現れた気分で、彼を見る。しかし、その顔が憔悴しきっている様子だったので驚く。
「ど、どうしたんですか?」
心配した彼女の問いに、東嶋は顔に手を当てて答えた。
「これは……とんでもないものを引き当てたのかもしれない」
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