欠片はぷかぷかする1話

 潮の香りが漂う海の街。カラフルなレンガに道は整えられながらも様々な植物が植えられており、とても爽やかだ。

 ペットの動物たちは人間に怯えることもなく悠々自適に過ごす。人間も忙しくなく、おおらかだ。ここの人たちは移動用の動物に乗るのも嫌がるほど、のんびり穏やかに歩くのを好む。太陽に自然も動物も人も抱かれて。


 そんな街の海辺近くにある城。古いが修理も怠らず、アンティークのような美しさを保っている。

 窓から覗く威厳のあるその顔。

 妻には先立たれており、子供や孫は彼の主催するパーティーに演技として仲良しのふりをしにくるだけだ。代々家系で仕えている執事ですら、黙々と仕事をする。ここには慣れた使用人しかいない。だけど誰も彼もが黙って仕事をしている。人はいるのに、音が聞こえない不気味な城。

 特に彼は世間体を気にすることなく、海を眺めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る