第1章

1.花に帰す①


 死した大地に、神が舞い降りた。


 神は生命の輝きをその身にまとい、世界で唯一つの光となって、果てしなく続く闇を照らした。

 神を中心とし、光は荒野へと広がっていき、光が満ちたところに生命が生まれた。


 乾ききった大地に水が湧き、草木が芽吹いた。

 暗澹あんたんたる鈍色の空は澄みわたり、朝と夜が訪れるようになった。

 海の底には神のおとが宿り、ときに新たな大地を造り出した。


 そうして世界は在るべき姿を取り戻し、生きとし生けるものたちが息づく場所へと、瞬く間によみがえっていった。


 神は、自らが再生した世界に悠久の安寧あんねいを与えるべく、それを護るものたちを創造した。己がこの大地を離れても、生命が脈々と繋がり、その姿形を崩さぬように。

 それらは四つの地に分かれ、〝守神もりがみ〟として、自らが治める地に存在するあまねくものたちに加護かごを与えた。

 そして、生命は〝守神〟の加護の下で、永きにわたり繁栄はんえいを続けた。

 

 これは、創世神そうせいしんリンドネールの神話。

 世界誕生の物語の一部分にすぎない。

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