最期

 前世の僕は何者かになりたかった。

 なんで産まれてきたのかも、愛も何かわからなくて。

 ただ、自分とは違う輝いていたあの子が死ぬのが嫌で、変えようとして……それで、機会を得た。

 変えられた。

 彼女を救った。

 前世は、ただ縋っていただけだった。

 でも、今世は胸を張って言える。

 一人のオタクとして、しっかりと推しをしっかりと推し続けることができた。


「ふふっ、綺麗だ」


 十分だ。

 天使に向けて魔法が確実にその体を打ち抜き、魔力の暴発。

 その光が自分を飲み込んでいく様を静かに眺め、僕の体を溶かしていく───


「……ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」


 だが、それよりも前に人影が僕の前に降りてくる。


「んな……っ!?」


 その人物。

 それは、自分が助けることを欲していたノービアたんが僕の前に現れ、天使の爆発に抗うように結界を展開していた。


「な、何しているの!?」


 そんな彼女に僕は慌てながら声を上げ、自分の魔力を搾り取って結界を発動させてノービアたんのに合わせていく。


「そ、それはこっちのセリフです!?何をぼー立ちしているのですか!?」


「こっちのセリフだよ!?な、なんで僕の前に立っている!?い、今すぐ逃げて!少しはもたせてみせるから!」


「嫌ですよ!?」


「いや、この戦争の主役はノービアたんのなのだけど!?ここで死なれると困るのだけど!」


「それは当主であるゼーア様も一緒でしょう!?」


「いやいや!僕はすでに十分!リスタ教国での名声があれば僕の血筋の正当性は完ぺき。あとはペークシス

僕の命の優先度は下がる!別に僕なんていなくていい!」


「な、なんてって何ですか!?何をそんなに……なぜ急にそんな自分を卑下するのですか?!」


「逆になんで僕をそんな生かそうと!?」


 急に始まってしまった僕とノービアたんの押し問答。

 それに僕はただただ困惑の声を上げる。



「私は貴方のことが好きだからっ!」



 だが、その質問の答えは僕の想定を超えた。


「……はっ?」


「だから、生きてっ!!!」


 な、何を……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る