因縁

 クォーレとフリーナ。

 先に動いたのはクォーレの方であった。


「……しッ!」

 

 剣を握るクォーレがその場を蹴り、フリーナの方へと迫る。


「凍てつけ」


 それに対してフリーナは剣を振ることで吹雪をまき散らす。


「……それは見た」


 人体を容易に凍り付かせることのできるフリーナの息吹。

 それを前にするフリーナは自身の身を包み込む魔力の膜を作ることで吹雪にも耐え抜いてみせる。

 

「……っ」


 そのままにフリーナとの距離を詰めることに成功したクォーレはその手にある剣を振りかぶって彼女へと振り下ろす。

 そんなクォーレの一撃をフリーナは氷の盾を展開することで防いで見せる。

 それを前にしてもクォーレは冷静。

 直ちに態勢を立て直して次の手でフリーナを狙う。


「貫け」


 そんなフリーナを狙ってクォーレは地面より一つの巨大な氷柱を展開して迎え撃ってみせる。

 自分の背後から盛り上がってくる氷柱をその場から飛ぶことで回避すると共に、その足を氷柱へとつけて跳躍。

 上空の方からフリーナを狙う。


「流石にそれは隙だらけよ?」


 上空を舞うクォーレを狙って次々とフリーナは魔法を発動して狙い撃ちにしていくが、それらを彼女はすべて回避してみせる。

 それに相対するフリーナは魔法を発動して氷の盾を再度で展開する。

 ここまでは先ほどと同じ。

 だが、ここからは違う。


「……ッ!?」


 自身の手にある剣の温度を炎の魔法によって熱していたクォーレはそのまま氷の盾を切断することに成功したのだ。


「燕返し」


 氷の盾が斬られたのを見て慌てて後ろへと下がっていくフリーナを狙ってクォーレは地面へと振り下ろされる最中にあった剣を強引に持ち上げて逃げる彼女を追う。


「んなっ!?」


 自身から剣が離れることのない現状に焦ったような表情を浮かべるフリーナは慌てて剣を前に差し出して不格好ながらも防御してみせる。


「……っ!」


 そして、そのままフリーナは魔法のオンパレード。

 多種多様にして強大な氷の魔法を幾つもの展開して自分のすぐ前にいるクォーレを狙いすましていく。


「ふぅー」


 だが、それらをすべてクォーレは回避してみせる。

 一切無駄のない動きかつ最小限の動きで回避する。そして、回避不可能な攻撃に対しては魔法で対抗する。

 そんな無駄のない布陣でフリーナの猛攻を耐えるクォーレは次々と剣を振るい、徐々に相手の態勢を崩させていく。

 この間に派手なことは何もない。

 他の追従を許さない圧倒的な身体能力も、すべてを圧倒する

 ただ、剣を振るうだけで的確にフリーナの態勢を崩し、隙を晒して行く。


「……ッ!!!」


 その果てで。

 これまで狙った行っていなかった足技を解禁したクォーレは迷うことなくフリーナの浮ついた足元を素早く蹴り出す。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「……っごく」


 床に尻をつけて倒れ込んだフリーナの首筋。

 そこへとクォーレは剣を差し込むのだった。


 

 

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