警戒
僕が無事にライゼンデに勝利して決勝へと進むことになった後。
とうとうクォーレとフリーナの二人が戦う準決勝の時間となっていた。
これまで、二人とも何の問題もなく無傷で勝ち上がってきた……そんな二人の状態は上々であり、今。
「「……」」
向き合っている二人の間には極度の緊張が走っている。
『流石に自分の決勝相手となる二人の戦いであれば真剣になるか?』
「……ッ!?」
ただ一人で、二人の争いを見ているつもりであった僕の元へと一つの声が届いてくる。
その声……それは、ゲームでも良く聞いた大精霊であるイフリートの物であった。
「……大、精霊様?」
えっ?なんで僕がライゼンデの隣にいるはずの大精霊から声をかけられているの?
そんな困惑を抱えながらその場で固まる。
『あぁ、そうだとも……君が、この場で暗躍していることを感じ取ってね。その思惑を聞いておこうかと思って』
「……ッ」
自分の隣にいるであろう、何故か聞こえてくる大精霊の言葉へと僕は静かに冷や汗を垂らす。
何を、答えるべきか?
『……だが、私は結局のところ何も出来ないからね。あの子の願いが叶うのを私はただ祈るのみよ』
警戒する僕に対して大精霊は勝手に言葉を続ける。
「……それは僕も同意ですね」
僕は大精霊への返答を、慎重に悩みながら口を開く。
「ライゼンデの才能を僕は高く評価しています。いずれ、自分を超えていくこともあるでしょう……そんな存在の調査には余念がないですから。ある程度、彼の目的も知っています。その上で僕は彼を応援するつもりです」
『そこに、嘘はないか』
僕の答え、それを聞く大精霊は首を縦に振ってくれる。
『……君が何をしようとも構わない。でも、ライゼンデに害を為すなら許すつもりはないから』
「そのつもりはないのでご安心を。自分の目的の障害にライゼンデの目的はならないので」
『それならいいわ。それじゃあ、貴方の弟子の雄姿をそこで見届けてあげてね……他人を大事にしなさいよ。それじゃあね』
「はい……?」
去り際、僕の方へと残していった大精霊の忠告に自分は首をかしげるも……その頃にはもう大精霊の気配はなくなっていた。
「……まぁ、良いか」
そんな頃には、既にクォーレとフリーナの戦いのゴングは鳴らされていた。
審判は支配開始の声を叫び、二人は互いに隙を探りながら僅かに動き続けている。
「……必ず、勝つわ」
そんな中で、クォーレはゆっくりと構えを変えながら自分に言い聞かせるかのように小さな声を響かせる。
「……」
それに対してフリーナは何も答えることなくただ剣をかまえ……否。
「……待っていたよ。私の方も」
少しばかり顔を伏せたフリーナは小さく口を動かしてクォーレにも聞こえないような言葉を漏らすのだった。
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