戦闘

 凄まじい。

 八歳という信じられない若さで当主という頂点に輝いたゼーア・アウトーレ。

 その彼が戦闘している仕草を間近で見るクォーレはただすごいとしか思えなかった。


「……っとと、危ないなぁっ」


 木刀一つでプロテスタントの隠れ家へと襲撃を仕掛けたゼーアは今、狂信的な修行の果てにたどり着いた実力を持つ彼ら、プロテスタントを相手に圧倒的な力で無双し尽くしていた。


「ほっ」


 プロテスタントの放つ数多の魔法をただの木刀一本でかき消したゼーアはそのまま彼らの頭を全力で木刀を殴って頭を潰し続けている。


「ど、どうなっているのだ……相手は一人で、実質武装なしなのだぞっ!?」


「む、無理ですっ!?あれは正真正銘の化け物です」


「あ、悪魔だ……これは悪夢か何かに違いない……俺は、夢でも見ているのだ。我らが主の意思をくもうとする我らにこんな、現実が待っているはずが」


 そんな怪物ぶりを披露しているゼーアに対して、プロテスタントたちもこれ以上ないほどに恐れおののいていた。


「はっはっはっ!真なる力は武器にあらず、ってねっ!」


 そんな彼らに対して、ゼーアは容赦なくその暴力で敵を叩きのめしていく。そこの動きに一切の無駄はなかった。


「か、囲っても無理なのか……?ど、どうやって避けているのだっ!」

 

 どれだけ多くの人に囲まれようとも足さばきだけで敵を翻弄し、次々と叩きのめしている。


「ありゃっ?」


 そんな戦闘の果てに。

 勢いよく人の後頭部へと叩きつけた木刀が嫌な音を立ててへし折れてしまった。


「まっ、流石に無理か」


 流石にあれだの暴力性でもって振るわれた数々の連撃を前にしては、ただの訓練用でしかない木刀に何かを出来るはずもなかった。


「い、今……なのか?」


 呆気なく折れてしまった木刀を前に、ゼーアは何の感慨もなくそれを投げ捨てて床に落ちていた剣を拾ってそれを握る。


「よっと」


 それを手に持つゼーアはゆっくりとその剣を構える。


「……っ」


 それを一目見た瞬間、クォーレは全身が痺れるような感覚を味わう。


「さて、行こうか」


 本物の実剣をもった僕は不適な笑みと共に相手との距離を詰めていく。


「うわぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!?」


「ど、どうすれば……っどうすれば勝てるというのだよぉっ!」


「……無理だ、こんなの。どうやって勝てというのだ」


「は、ははは…」

 

 そこから巻き起こされるのはまごうことなく剣技による血が血で洗うスプラッタの世界だった。

 戦意が折れるのは実に直ぐだった。


「……あれが、私の完成形」


 何処までも美しい剣技。

 周りの言われ続けていた……身体能力も魔法もないただ剣を振るだけの地味な剣。

 それでも、自分が振るい続ければそれらの意見を封じられる。

 己の強さを誇示出来る……そう信じてがむしゃらに剣を振って振って、既にもう半ば折れかけていた己の剣。

 その完成形かと思わせるものをゼーアが振るっていた。


「美しい……」


 派手なものは何もない。

 岩を砂に変えるような身体能力も、辺り一面を銀世界に変える魔法も、それら多くの剣における不純物たる派手さなどない。

 ただ、振るわれる剣だけの美しさを前にクォーレはただ感嘆するのだった。

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