一方

「ノービアたんが主人公と婚約者の関係になれるよう頑張らないとね!」

 

 パーティー終わり。

 自分の部屋に帰ってきた僕は改めて決意の言葉を漏らす。

 ノービアたんはゲームの通り、天使だった……あの子がバッドエンドでその人生を終わらせてしまうなんてことあっていいわけがない。

 そんなこと許せるわけがない。絶対にありえない。


「ふんふんふーん」


 僕が目指すのはノービアたんのハッピーエンド。 

 彼女が今際の際でも妄想していた好きな人と結ばれて、子供にも恵まれ、家族みんなで穏やかに楽しく暮らすという夢を叶えてあげる必要がある。


「ふふふ……黒子として、必ずや力になってあげるからね」


 本来であれば推しを見守る壁として彼女の幸せを見ていたいけど、何もせずに壁として見守っているだけじゃ彼女はハッピーエンドになれない。

 推しを推す者として、彼女のハッピーエンドを探し求めて文字通り人生を懸けた僕が必ずや、この世界では君を幸せにしてみせよう。


「そのためにはまず、宗教関係だよねぇー」


 彼女の一番の問題は聖女という生まれとそれに見合った力。

 そして、それを利用とする者どもの存在である。


「対立を煽る……だけじゃ足りないな。未だ八歳である僕に出来ることは少ない。最悪、力で解決することもできるけど……今の僕じゃ流石にまだ弱いな。まだまだ修行が必要だ」


 僕はゲームに出てきた幾つものピースを組み上げながらノービアたんを助けるためのチャートを組んでいく。


「……とりあえずは最初の鬱イベントを解消することから始めて行こうかな」


 今の僕に出来ることはそんなに多くない。

 それでも、この現状でも出来ることを行うべく行動を開始するのだった。


 ■■■■■


 とりあえず行動を起こす。

 そう決意した僕はとある人の元に訪れていた。


「ノービア・ライスカーナ。彼女の件で少々話したいことがあるのですが」


「……八歳の餓鬼が何の用でしょうか?」


 僕が話しかけた人。

 それはノービアたんの護衛兼メイドとして常に彼女の隣に立っている女性である。


「餓鬼、だなんて酷い言い草だなぁ?」


「その通りでしょう?少しあの御方と触れあっただけで調子に乗るのも大概にしてください。我々の関係者以外に聖女様についてお話することはありません、お引き取り願いますか?」


 おちょくるような僕の言葉。

 それに対して、メイドは拒絶の構えを見せる。


「えぇ?そうですかぁ?……もし、僕は貴方の妹を救う手立ても、今すぐに殺す手立ても知っていると言っても?」


 原作知識。

 それはこの世界を生きる上で、あまりにも有利すぎる点である。

 僕は目の前にいる女性を知り尽くし、どう交渉を進めていけばいいのか、そのすべてを知っている状態なのである。


「……どういうことだっ!?テメェッ!」


 確実に地雷を踏みに行った僕に対して、メイドは僕の胸ぐらを掴み上げながらガン飛ばしてくるのだった。

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