心のうち
ダンスが終わるとすぐにパーティー自体も閉幕となった。
「いやぁぁぁぁ、もぉー、困っちゃうなぁぁぁぁぁああああああぁあああ!」
そして、パーティーが終わり、自分に貸し出された部屋の方へと戻ってきた聖女であるノービアはベッドの上で赤く染まった表情を片手で抑えながら転がっていた。
「殿方の手に初めて触れちゃったわ!し、しかも……手の甲にき、キスまで……わ、私がこのまま自分の手の甲に、にき、キスなんでしてしまったら……か、間接なんちゃらにっ、なってしまうのっ!?」
片手で抑えながら、全然抑えられていないせいでバッチリ前が見えているノービアは自分の片手を見つめながら悶える。
「……い、いやぁー!それは流石にしちゃだめよっ!私!いくら、いくらなんでも……はしたないにもほどがあるわ!」
誰もいない部屋の中でノービアはやりたい放題である。
恥も外聞もなく、一人の乙女として好き放題自身の純情を爆発させていた。
これまで、聖女としてあまり人と関わらせてもらえず、当然の如く同年代の少年と交流を持ったことなどない。
されとて、恋愛小説なので乙女心だけは際限なく膨れ上がらせていたノービアにとって同年代のイケメンはあまりにも劇薬だった。
劇薬過ぎた。
ゼーアは確実にノービアの恋愛観をこれ以上ないまでに破壊してしまっただろう。
始めて会った日から好感度マックスで精神年齢の高い大人などゼーアを除いているわけがない。
そして、そんな彼がノービアのスタンダードになってしまった。
「体、がっちりしていたなぁ。それにリードもしてくれて……カッコよかったなぁ」
ノービアはゼーアのことを思い出しながら表情を緩ませる。
「お、男の人、デュフ……あの身体で、抱きしめられたら、えぇ……いやぁ、私は聖女なのに!清廉潔癖でいなきゃいけなのぉ!そ、そんなことしたら、だ、ダメだからなんだよぉ!」
そして、そのまま妄想に身を焦がす。
「……」
しこたま妄想の世界に飛び立ち、楽しんだ後に彼女が視線を向けるのは自分の手の甲である。
「……えいっ!」
しばらくの間、眺めていた彼女は意を決した様子で自分の手の甲へと己の唇を堕として口づけを一つ。
「あぁー!しちゃったぁ!し、しちゃったぁ……!間接キスだぁ!ぶへっ、ふへへ」
我慢できずにゼーアとの間接キスをしてしまったノービアは更に悶えていく。
「私の婚約者は、あの人が良いなぁ」
そして、悶えながらもニマニマと幸せそうな笑顔を浮かべるノービアは素直な感想を漏らすのだった。
■■■■■
その裏で。
「ノービア・ライスカーナ。彼女の件で少々話したいことがあるのですが」
「……八歳の餓鬼が何の用でしょうか?」
本格的に悪役貴族、ゼーア・アウトーレが動き出していた。
陰謀の影が渦巻く。
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