違和感《グランツ side》①
◇◆◇◆
「────やはり、何かがおかしい」
皇城の一室で調査資料を眺める私は、思わず眉を顰める。
トントンと指先でリズムを刻みながら嘆息し、天井を仰ぎ見た。
────と、ここで窓の方から見知った人影……いや、幽霊が姿を現す。
「なんだ?珍しく、行き詰まってんな」
不思議そうに首を傾げ、ルカはこちらへ歩み寄ってくる。
そして、執務机に置かれた書類を覗き込むものの……
「あー……何書いてあんのか、さっぱり分かんね」
と、肩を竦めた。
『記号にしか見えねぇ……』とボヤく彼を前に、私は少し笑ってしまう。
「ベアトリス嬢の傍に居て、少しは文字を勉強したんじゃなかったのかい?」
「したよ。したけどさ、この書類は難しい言葉ばっか使ってんじゃん」
『こんなん読めねぇーよ』と悪態をつき、ルカはジロリとこちらを睨みつけた。
『口頭でさっさと説明しろ』と言わんばかりの態度に、私は小さく
この態度は出会った時から変わらないな、と思いながら。
まあ、別にいいけど。
皇子という立場上、こんな風に接してくれる人は居なかったから……なんだか、新鮮なんだよね。
『そうでなくても、ルカは特殊だし』と思案しつつ、私は書類を手に取った。
「先に説明しておくと、これは────第二皇子ジェラルド・ロッソ・ルーチェの調査資料だよ」
「はっ?」
鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔で固まり、ルカはまじまじとこちらを見つめた。
「第二皇子のことなら、もう何度も調べただろ?」
ベアトリス嬢を殺した人物が愚弟と判明するなり探りを入れていたため、ルカは怪訝そうに眉を顰める。
『今更、何を調べるって言うんだ?』とでも言うように。
「今回はジェラルドの周辺……いや、
「それは何でまた……」
『ますます訳が分からない』と零し、ルカはガシガシと頭を搔く。
こちらの真意を図りかねている彼に対し、私は苦笑を漏らした。
「いや、ちょっと気になってね……ほら、ジェラルドの強さが予想以上だっただろう?魔法をあんなに上手く使えるなんて、知らなかったし……」
騎士の証言から察するに、使用されたのは恐らく雷系統の魔法。
コントロールが難しいソレを、いとも簡単に使いこなすなんて……どう考えても異常だ。
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