第71話 柳井実季という女2
私たちを乗せた飛行機はJFK Airportを離陸した。
飛行機がぐんぐんとスピードを上げて、離陸するその瞬間、地球の重力に逆らうGが私の体をシートに押さえつける。
先生が取ってくれていたチケットを自分たちでグレードアップしたので帰りはビジネスクラスだ。
今回のアップグレードはちゃんと自分で行った。
今回乗る飛行機は、吉弘くんによると、ボーイング777‐300ERという飛行機らしい。
長距離路線だからファーストクラスもビジネスクラスも設定があるのだとか。
最近の中近距離路線はファーストクラスってないんだってね。
知らなかった。
吉弘くんと密着できるエコノミーでもよかったと言えばよかったけど、
今回はさすがに疲れが…。
贅沢なのは百も承知なんだけどね…。
いやぁ、それにしてもいろんなことがあったなぁ。
初日から徹夜耐久レースとか…。
先生が私呼ぶような時は毎回そうだからいいんだけどさぁ……。
まぁある程度覚悟はして行ったよね。
吉弘くんにはあえて詳しく話さなかったけど。
反応が見てみたくて。
そしたら案の定、目の下にひどいクマの先生が出てきて、
吉弘くんも動揺してたなぁ。
でも、先生って私からすると出会った頃はもっと酷かったイメージなのよね。
昔はもっとたくさん仕事受けてたし。
私もそのとばっちりでさ~。
でも、そこからの吉弘くんはもう凄かったわ。
先生のエサも効果大きかったけど、先生を助けなきゃ感の凄さよ。
いや、私は別にエサに釣られたわけじゃないけど、まぁもらえるものは…ね?
今回たくさん買ってもらいました。
先生もめちゃくちゃ稼いでるんだから。ね?
まぁなんとかあの地獄を3人で終わらせて。
次の日は吉弘くんが留学&進学を考えてるジュリアードへ。
まさか吉弘くんジュリアード行きたいとは思わなかったよ。
どっかの音大は狙ってると思ってたんだけどね。
ジュリアードか~って感じ。
そうそう、ジュリアードに行くんだけど、
その日の朝、彼、トレーニングウェアで食卓に降りてきたからさ…。
目のやり場に困ると言うか…。
いいもの見せてもらいました、合掌。
それで、みんなでジュリアードに押しかけて、吉弘くんの面通しを終えて、やっとお買い物へ!
これを待ってたのよ。
先生のおすすめのお店に行く車の中で、留学するときの注意点を
私なりに吉弘くんにレクチャーしといた。
実は私も2年の時留学したのよね、イギリスの王立音大に。
音楽院と音楽大学とあるけど、私が行ったのは音楽大学の方。
先生のお力添えでなんとか行くことができたのだけど、本当にいい経験させてもらったわ…。
毎日目まぐるしく進んでいって、気づいたら一年経ってたって感じ…。
いやぁ、お買い物は気合い入ったわ。
先生もストレス発散で相当買い散らかしてたけどね。
ウィンドウショッピングがてらプラプラして、気に入ったのがあれば即購入。
せっかちの先生らしいわね。
あんまり接客されたくないタイプの人だから。
吉弘くんの時計も、
あら似合うわね、店員さん、これくださる?
の3秒で決まった。
先生、それ世界3大時計メーカーのフラッグシップで
ウン万ドルでっせ。
いやまぁ確かに似合ってたけど。
そのあとも吉弘くんのバッグ探しや、前から注文していた先生自身の宝飾品をとりに行ったりいろんなところに行った。
この日が一番充実してたな。
あとはもうひたすら練習練習練習。コンサートに行ってまた練習練習練習。
日本での生活とあんまり変わらなくないか?
強いて言うならご飯がとてもおいしいということ。
年が明けてからは、吉弘くんのお姉さんにみんなでお会いしたね!
会ってみてびっくり、私でも知ってるプロゴルファーだった。
あんまりファンです!みたいな空気を出さないようにしたけど、
シンプルすごい人だった。
しかも突然ドライバー飛距離対決とか始まるし!
てか商品ベンツってやばくない?
どうなんだろ?
吉弘くん勝つのかな。
ベンツとか大きいこと言うくらいだから勝算はあるんだろうけど…。
そしてお姉さんがゴルフクラブを持って素振りをしてたんだけど、
やっぱりなんでもプロってすごい。
私はゴルフ全然わかんないけど、おねえさんの藤原プロがすごいって言うことだけはわかる。
周りのギャラリーも沸いてるし、なんかすごい。
実際に売ってみるとそのインパクト音?っていうのかな。
ボールに当たったときの音がすごかった。
なんかで撃たれたかと思った。
でも我らが吉弘くんはさらに凄かった。
トレーナーさんに聞いてみると、ツアープロ?としてもおそらくやっていけるだろう実力は十分あるとのこと。
なんでそんな人がピアニストに…?
でも体鍛えてて本当にアスリートみたいな生活してるから、ゴルフやってないからって全く練習してないわけじゃないんだろうね。
これだけうまいってことはさ。
結局飛距離対決は吉弘くんが制して、ベンツをもらっていった。
なんかもう、Vシネマ的な展開…。
商品の桁がおかしいでしょ…。
家族に紹介してもらったと言うことは、私が一歩リードしているということでいいね?みんな。
まだ他の子は家族に面通してないでしょ?
あ、そうそう。
その後、皆で街に出たとき、ボッテガのお店とロエベのお店があったので
こっそり吉弘くんに耳打ちして
買ってあげなよって言っといた。
でも、今回の2週間弱の間に、たっくさんのいろんなことがあったけど、惜しむらくは吉弘くんと何一つ進展できなかったこと。
うーん、なんとかもう一段進みたいんだけど、
最後の最後で一本の線が引かれてるんだよね。
それを感じちゃうとこっちも行きにくいと言うか。
もう襲うしかないか?
いやいや、それは…。
そんなこと考えてたらいつの間にか日本領に入っちゃったし、今回はビジネスクラスだから吉弘くんにくっついていちゃいちゃできないし…。
隣が吉弘くんなので仕切り窓を下げて覗いてみると、まぁなんと美しい寝顔ですやすやでしたわ。
まぁ悲しいけど、頑張ってアプローチ続けます。
おぉ、羽田が見えてきた。
そろそろ着陸態勢だな、吉弘くん起こして椅子戻さなきゃ。
「吉弘くん。そろそろつくよ。」
「んん…。もうちょっと…。」
…は?
可愛すぎんなんだが。
あ、負けちゃいけない。
このまま寝かせちゃうとCAさんに吉弘くんが取られちゃう。
「ほら起きて起きて」
「あぁ~、うん…起きた。」
吉弘くんは今日もかわいかった。
誰にも渡したくないよぉ~。
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