第12話 ギルドでのグラン

 目ぼしい依頼が無くなりグレッグは別の町へ依頼を受けに行ったらしく、ギルド内では噂になっていた。

 さらに行った先でも問題を起こしたらしく、それがこのギルドまで流れてきている。


 グレッグがいなくなったため、カレンはようやくギルドに戻ってくることが出来ていた。


 グランはEランク冒険者たちとフォレストウルフの群れの討伐に向かった。

 5人のパーティーとして向かい、グランは盾と剣を装備している。

 編成は盾2、剣士2、魔法使い1だった。


 戦闘中に、グランの相方の盾が態勢を崩し、フォレストウルフに抜けられそうになる。

 グランは咄嗟に空いた隙にカバーに入るがその際にフォレストウルフに激突された。

 衝撃でフォレストウルフは吹っ飛んだため、後方の魔法使いが狙われるずに済む。

 激突された後も大して痛みがないかのようにグランはカバーを続けた。

 戦闘後に仲間たちから心配されたがグランは気にしていなかった。

 グランの基準はファングボアで死にそうな目にあってから高くなっており、あれが基準になっている。

 立っていられるなら問題ない、という認識であった。


 その後も彼らとはパーティを組んで討伐依頼していた。

 10日ほど組んだパーティから抜けるとき、一緒に組まないかと誘われたが、グランは他の冒険とも組む機会が多いため丁重にお断りをする。


 パーティから抜けたグランの今の悩みは装備についてである。

 冒険者たちに武器の使い方を教えてもらい、一通り武器を扱えるようになったが、どうにも手に馴染むものがなかった。

 前まで一緒に冒険していた仲間たちは武器が手に馴染んでいるのか、良い動きをしていた。


 より強くなるために自分に適性のある武器を選ぶのは当然である。

 グランは装備の適正に焦りつつ、再び冒険者に武器を教わりながらいろいろ試していた。

 今では木製の武器から刃を潰した訓練用の武器を使用した模擬戦が中心となった。

 訓練のために手加減しているとはいえ、何度打ち据えても立ち上がるグランに冒険者たちは顔を引き攣らせつつ、より厳しく指導してくれる。


 ある日、冒険者との特訓でボロボロになっているグランはカレンに話かけられた。


「ドブさらいの依頼が残ちゃっているから、お姉ちゃんグランにやって欲しいな~」


 上目遣いでお願いしてくるカレンに、グランは露骨に嫌そうな顔を浮かべた。

 グランはEランクに上がってからドブさらいをやらなくなっている。

 元々はGランクの子供たちやFランクのための大事な依頼であり、独占してしまうのは良くないという考えであった。

 だが、きつい、汚い、臭いの不人気な依頼のため、お金に困っている子供ですら、やる人がおらず依頼が残ってしまう。

 カレンに拝み倒され、折れたグランは仕方なくドブさらいをする約束をしてあげた。

 くすぶっていたドブさらいはグランが定期的に掃除していた時よりも手ごわく強力になっている。

 定期的にドブさらいをしようかなと、グランの脳裏によぎったがすぐさま捨て去った。


 数日掛けて一通りのドブさらいを終えたグランはギルドに報告した。

 受付で抱き着いて感謝のキスしようとしてくるカレンを引きはがす。


「もう、やりませんからね、次は他の人にやらせてくださいよ」


 と言い残してグランはギルドから去って行った。

 その後ろ姿をニヤケ面でカレンは見送る。


 そんなカレンであったがグレッグがこの町に帰って来ていると聞いて、死んだ魚の目になった。

 俯く彼女はまたしてもギルドから休みを言い渡された。

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