第7話 虚偽の申告と不法入国ってなんですか!?

 地下室特有の重たい空気が、硬い石床に体育座りをしている夏美の周りにどんよりと漂っている。

 夏美は軍服を着た複数の男たちに捕らえられ、あっという間に牢へと投獄された。彼らの会話からするに、この国はそこそこ治安が悪いらしく、日頃から警備にあたる兵士たちがいるらしい。そして夏美の様子を見た街の人たちが兵士たちを呼びに行き、野蛮な男たちに襲われているところを発見……そして夏美のほうが捕まり、今に至るらしい。

(なんかもうここまで来ると、現実感ないわ……)

 何かを話している男たちの様子を、ぼんやり眺めている。

(見た目もみんないいし……外国の人たちってやっぱり彫りが深くてサマになる……こんなところじゃなかったら、ワンナイトのお誘いしてたな……)

 夏美は小さくため息をついた。この怒涛の展開に、自分の脳みそが追いついていないのは確かだ。

(ここが異世界だったら、私はこの世界でどうやって生きていけばいいんだろう。住むところもないし、食べ物も……っていうかお金もないし。そう思ったら、私ここから出ても、結局いいことないんじゃ……)

 夏美がそう現実逃避を始めた頃、ギィ、と重いドアが開く音が聞こえて、弾かれるように顔を上げた。複数の人がこちらに向かって歩いて来ている。夏美も、ここに来るときに下った階段を降りて来ているようだった。

 次第に足音が近くなり、夏美もその音を聞いているうちに緊張し始めてしまう。もしここに来たらどうしよう、悪いことはしていないが、万が一殺されるようなことがあったら……と考えると、自然と俯き唇に力が入る。

「この者です」

 夏美の予感は当たり、男たちは夏美の目の前で足を止めた。人生で生きてきたどの瞬間よりも心臓が激しく鳴る。

「おい、顔を上げろ」

「……」

 自分に言われているのだと夏美は理解したが、なかなか身体が動いてくれない。なんとか時間をかけて、無理やり顔を上げて男の顔を見ると……。

(あ、アイザック……!?)

 そこに立っていたのは、昨晩ワンナイトをともにしたあの男、アイザックだった。

「お前……」

 夏美は檻の柵に手をかけて男に訴えた。

「私、何も悪いことはしてないんです! お願いします、ここから出してください!」


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