第4章87話:ジル視点2と終幕

<ジル視点2>


「アキャキャヒャヒャキャキャヒハハアア!!」


少女が笑いながら、どてどてと歩く。


ジルは大樹の後ろに隠れ、身を潜める。


少女の足音。


自分の心音しんおん


聞こえるのはそれだけだ。


「……?」


そのとき。


ふいに少女の足音が止まった。


ジルはそっと木陰こかげから顔をのぞかせる。


「……いない?」


立ち去ったのだろうか。


そう思った瞬間。


背後で足音がした。


ジルは、振り返った。













「あ……」


にんまりと笑うものの少女。


まるで血の涙を流しているような、少女の姿を見て。


ジルは絶叫した。


「あああああああああああああッ!」


「アキャキャキャキャ! アキャキャヒャヒハアアアアア!!」


ジルが尻餅しりもちをつく。


そこにのしかかってこようとする少女。


「くっ!! あああああああああ!」


ジルはすぐさま体制を立て直し、少女に殴りかかった。


ドカッ!


ガッ!


ドカッ!


恐怖を振り払うように。


「しね! しね! しねえええええええええ!」


発狂する興奮によって、一時的に恐怖を忘れる。


チョコレートの少女を何度も殴りつける。


「はぁ……はっ……はぁ……」


そして。


チョコレート少女がぐったりと倒れる。


チョコレート少女を破壊したジルは、笑った。


「はは……あははははは!! ざまあみろ!!」


ジルが哄笑こうしょうする。


そのときだった。


「何がざまあみろ、なんですか?」


「……!?」


背後から声がして振り向く。


そこにいたのは。


ジルが一番会いたくなかった相手。


セレナである。


しかも……顔が溶けている。


どろりと。


肉が崩れたように。


「ああああっ!!?」


ジルが後ずさり、大木に背中をぶつける。


セレナが笑った。


「あなたを殺しに来ました」


「や、、やめっ、やめてくれ!!!」


「あなたが生きていると、いつまた家が襲われるかわかりませんし」


「もうしない! もう、お前に手出しはしないから……許してくれ!!」


「だから、虐殺します」


セレナの身体から6つのチョコレート・カッターが伸びる。


「嫌だ!! 嫌だあああああああ! 死にたくねえええええ!!」


ジルがもがくように立ち上がって、逃げ出そうとする。


しかし、その足にまとわりつく者がいた。


ジルに殴り壊されたチョコレート少女である。


ジルがすっころぶ。


「キヒャ、キヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」


「あああああああぁぁッ!!!!」


ジルが絶叫しながら振り払おうとするが。


そこにセレナのチョコレート・カッターが炸裂する。


グサッ、とジルの足に突き刺さる。


「ぐああああああ!!?」


ジルが悲鳴をあげた。


さらに肩へ斬り飛ばし。


腹に、脇腹に、背中に、


チョコレート・カッターが突き刺さっていく。


「ご、はっ……」


最後に。


「許して……くれ……」


ジルが泣きながら懇願する。


直後。


振るわれたチョコレート・カッターが、ジルの首を切り飛ばした。


絶叫と苦痛にゆがむジルの生首が、飛んでいった。


「ふう……」


これで、3人の討伐は完了だ。


セレナは、溶けた顔を元の顔に戻す。


「3人はアイテムバッグを持っていましたよね。もらっておきましょうか……」


と、つぶやいたあと。


ジルやドレアスたちから、戦利品を回収する。






かくしてジルの討伐は完了した。


私は平凡な日常へと回帰していくのだった。







第4章 完




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