第4章85話:逃亡と追跡

チョコレート・ハンドが、ぐぐぐと力を込める。


ドレアスを握りつぶさんと、握力を強めていく。


「ぐ……!」


ドレアスが歯を食いしばって、チョコレート・ハンドの握力に抵抗する。


だが。


「ぐ、おおおおぉぉォォーーーーッ!!!!?」


ぐしゃんッ!!!


チョコレート・ハンドが、ドレアスを握りつぶした。


首から下を"圧縮"されたドレアスが、口から大量の血飛沫ちしぶきを吹き出す。


「あ、あぁ……ッ!」


ジルが、ガクガクと震えた。


「ああああああああああああッ!!」


恐怖に駆られたジルが、一目散いちもくさんに逃亡した。


とりあえずドレアスを地面に放り捨てる。


私はジルの背中をじっと見つめる。


「最後は彼だけですね」


私の家を破壊したジル。


私を殺そうとしたジル。


……生かしてはおけない。


ゆえに殺す。


よし。


せっかくなので、ホラー演出でぶっ殺そう!


「ぬん!」


チョコレート魔法を使う。


チョコレート・ゴーレムを生成した。


まず全身をホワイトチョコレートで形作る。


ホワイトチョコの服を着た、少女のゴーレムだ。


私と背丈も体格も同じぐらいのゴーレム娘。


さらに。


目は空洞にする。


その空洞から、まるで血の涙が流れているかのような想定で、カカオマスチョコを垂れ流す。


「うん、おどろおどろしい見た目になりましたね」


オバケみたいな少女である。


「ではゴーレムちゃん、ジルを追いかけてください」


「……」


こくん、とうなずいたゴーレム娘。


軽快に走り出す。


「あ、ストップ!」


私は呼び止めた。


ゴーレム娘が足を止める。


「もっと、気色悪きしょくわるい感じで走ってくれませんか?」


「……」


こくん、とうなずくゴーレム娘。


さらに私は指示を出す。


「あと、狂ったみたいにケタケタと、笑いながら走ってくれると嬉しいです」


「……」


こくん、とうなずくゴーレム娘。


現在の私は、ゴーレムに簡単な発声をさせることも可能である。


まあ、滑らかな声ではなく、ぎこちないゼンマイ人形のような感じだが……


今回は、そのぎこちなさが良いあじを出してくれるだろう。


「では、ジルの追跡ついせきをお願いします。ジルを発見したら『みぃつけた!』と言ってから、襲いかかってください」


「……」


こくん、とゴーレム娘はうなずいた。


そしてジルの逃げた方角へと、走り出すのだった。

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