第4章64話:家3

私は言った。


「これをチョコレート・ハウスと名づけておきましょう。しばらくは、ここで暮らしましょう」


「……2階建てだと、山小屋より住み心地がいいんじゃないか?」


「そこは考えない、ということで」


山小屋は1階建て。


チョコレート・ハウスは2階建て。


山小屋より居住スペースの広い家だが……


山小屋には山小屋の良さがある。


比較するのはやめておこう。







さて。


さっそく、チョコレート・ハウスの中を確認してみよう。


私はワクワクしながら、玄関扉を開けた。


アイリスとクレアベルが入ってくる。


果たして、チョコレート・ハウスの中は……


「……暗い」


とアイリスがつぶやく。


そう、めちゃくちゃ暗い。


まあ照明設備しょうめいせつびなどが存在していないからね。


まずは明かりをセッティングしなければ。


いったん外に出る。


「んー、どうしましょう……」


悩む。


クレアベルが提案してきた。


火魔石ひませきを使えばいいんじゃないか?」


火魔石は、夜のあかりとして最も使われる定番のアイテムだ。


ただ……


「火魔石は、ちょっと照明としては弱いですよね」


と私は述べる。


火魔石は、あくまでロウソクのように、火の光で周囲をほのかに照らしてくれるだけに過ぎない。


「できれば、部屋の隅々すみずみまで光を行き届かせたいのですが」


「ふむ。ならば光魔石こうませきを使ってみればどうだ?」


「光魔石……」


「ちょっと待ってろ……これだ」


クレアベルがアイテムバッグの中から、一つの鉱石を取り出す。


「光魔石は、魔力を注ぎ込むことで、周囲を明るく照らしてくれる石だ」


クレアベルによると。


光魔石は、強い光が欲しいときに用いられる魔石だという。


鉱山の炭鉱内たんこうないを照らす際などに用いられるそうだ。


ロウソクなどに比べて価格が高いので、あまり日常的には使われないものらしいが……


「お前の要望に叶うと思うぞ」


とクレアベルが言った。


私は光魔石を受け取る。


その状態で、チョコレート・ハウスにもう一度入った。


使用するときは、光魔石に魔力を送り込めばいいんだっけ?


私は、魔力を光魔石に注入するイメージをした。


すると……


「おおっ」


光魔石が綺麗なライトを放つ。


一気に、チョコレート・ハウスの屋内を照らした。


「ふおおおおおおおお! 素晴らしいですッ!!!」


と、私は興奮する。


「うまくいったようだな」


とクレアベルが微笑む。


「わぁ……中はこうなってるんだね!?」


とアイリスが目をきらきらさせる。


チョコレートだけで作られた、チョコレートの家。


カカオマスチョコレートとホワイトチョコレートが、牛柄模様うしがらもようを描きながら、床、壁、天井の全てに広がっている。


「光魔石……本当に明るいですね」


光魔石の光量こうりょうは、室内の隅々まで照らすほどだ。


前世のLED照明に負けてないと思うレベル。


ロウソクなんかとは比べ物にならないね。


「ただ、光魔石はあんまりたくさんストックがないからな。街に買いにいかないとな」


そうなのか。


じゃあいずれ街にいったときは買い集めよう。





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