はるのあめ蛙も鳴かず暮れにけり

【読み】

はるのあめかへるもなかずくれにけり


【季語】

はるのあめ(春の雨)・蛙〈春〉


【大意】

カエルも鳴かずに日が暮れてしまった、春の雨の降る日である。


【付記】

もう十年以上カエルの鳴き声を聞いていない気がする。


カエルの類義語にして歌語(=雅語)の「かはづ」は、もともとカジカガエルを指したようである。俳句/俳諧の「蛙」をカエルと読むかカワズと読むかは、わたしの手にあまる問題である。


【例歌】

かはづ鳴く清き河原を今日見てはいつか越え来て見つつしのはむ 作者不詳

かはづなくゐでの山吹ちりにけり花のさかりにあはまし物を 作者不詳

春ふかみ花ちりかかる山の井のふるき清水にかはづなくなり 源実朝


【例句】

手をついて歌申上る蛙哉 宗鑑そうかん

蓮に蛙鴬宿梅あうしゆくばいのこころかな 素堂そどう

古池や蛙飛込む水のおと 芭蕉

蓮池に生れてもとの蛙かな 言水ごんすい

菱枯れて蛙しづめり池の秋 正秀まさひで

火を打てば軒に答る蛙かな 丈草じょうそう

蛙なく田のいなづまやとびの影 野坡やば

あしの葉の達磨だるまに似たる蛙かな 木導もくどう

百姓の訴訟顔なる蛙かな もうがん

池水に蛙の波やおぼろ月 也有やゆう

月に聞て蛙ながむる田面たづらかな 蕪村

すみれ摘む袖に飛びつく蛙かな ふぢ

蝸牛ででむしや蛙の後の雨つづき 山肆

ゆうぜんとして山を見る蛙哉 一茶

蛙鳴き鶏なきひがししらみけり 同

木母寺もくもじの花を敷寝しきねの蛙哉 同

痩蛙負けるな一茶是に有 同

蛙なく夜の浅みや貰ひ風呂 井月せいげつ

溜池に蛙闘ふ卯月かな 夏目漱石

なく蛙白河に関はなかりけり 泉鏡花

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