かへる子をまねきかへすやすすきの穂
【読み】
かへるこをまねきかへすやすすきのほ
【季語】
すすき(薄/芒)〈秋〉
【大意】
家に帰るこどもを、ススキの穂がまねき返すのであった。
【付記】
ホラー風味のつもりである。ススキの穂が風になびくようすは、在原棟梁(?-898)以来しばしば手招きに見立てられたようである。まねき返すことに成功したか否かは読み手の判断するところである。
「かへる子」を「蛙子」(=オタマジャクシ)と見なすのは、時期的に無理があろう。
なお、「かや(萱/茅)」は「屋根をふく材料とする草。イネ科のススキ・チガヤやカヤツリグサ科のスゲなどの総称」のよし(デジタル大辞泉)。秋の季語であることもふくめて執筆時にわたしは知った。端午の節句には屋根にあやめ(=ショウブ)をふく風習があるが、それはカヤに含めない気がする。
また、ススキには「尾花」という別名もある。
【例歌】
めづらしき君が家なる花すすき穂に出づる秋の過ぐらく惜しも
秋風の吹き散るごとにあなめあなめ小野とは言はじ薄おひけり
秋の野の草のたもとか花すすき穂に出てまねく袖と見ゆらん
【例句】
何ごともまねき果たるすすき哉 芭蕉
稲妻や顔のところが薄の穂 同
しら露や萩と薄がこころもち
山は暮て野はたそがれの薄かな 蕪村
夕闇を静まりかへるすすきかな
雨そそぐ岡の小家や花芒
ありたけの蚊をふるひ出す芒哉 一茶
押し分くる芒の上や秋の空 夏目漱石
萩芒草さまざまに秋立ちぬ 寺田寅彦
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