第9話 掃討戦 若鳥
side 主人公
「掃討戦参加の若手冒険者たちよ!注意!ゴブリン上位種およびホブゴブリン、オークが来る!数、200!」
「新人冒険者たちよ!若手冒険者たちの邪魔にならない場所に移動し、今度は魔法支援!無理はしないこと!」
上位種との声に緊張が走るがすぐに落ち着きを取り戻す。1体つづ囲み、連携させない。
手早くとにかく早く、確実に頭と胴を切り離してとどめを刺していく。
一通り、倒したところで。
「つぎ、オークとハイオーク!数200!備えー!」
「つぎ、ダークウルフ200!回復!!」
ダークウルフの魔法攻撃や毒爪に注意しながらこちらにも対応できている。
「つぎ、アントとキラーマンティス、数400!」
波状攻撃さながらの間断なく襲ってくる魔物の行動にもちゃんと食い付いて闘っている。しかしあれから1時間強、さすがに疲労が感じられるようになってきた。
いったん片付いたので休息をとる。新人たちもよく頑張った。
用意してきた昼食を各自摂りながら、回復魔法を受けたりしている。もちろん回復ポーションも携帯している。
「午後は、随行冒険者たちによるBランク級魔獣および魔物の討伐の見学および後方支援だ。あくまで邪魔にならないようにする、怪我しないが最優先!では各自準備!」
side ある辺境伯???
えぇー!かなりすごい、統率がとれていてなんていうかもう戦力!みたいな感じ!
新人も若手冒険者たちもみなよく頑張った!ちゃんと闘いになっていて、役割もこなしていて頼もしい姿だ。この子たちがわがサンドルを担っていくのだと感じて嬉しい。
今は新人と若手が討伐した魔物などをそれぞれ1箇所に集めたり、魔石を拾い集めたりしている。後でギルドで戦功を確認しながら分配するのだ。
戦場となっている森の外周部分もいくらかきれいになった。
しかし驚くべきなのは、これほど整理されて追い立てることが出来る勢子の力量である。いや無理だから普通は!種類ごとランクごとにある程度まとめて投入とか!いったいどうやってとどめたり、分類しているんだ!
こんなふうに管理できたら、普通の討伐はもちろん、戦争だって有利に戦えるよ!まぁ、討伐はともかく戦争には適用できないな。なにしろ相手も必死に裏をかいてくるんだからな。
どのみちコレは異例中の異例だな。
しかし見物のつもりでついて来た冒険者たちも災難だな!結局イベントに強制参加だ。だが目の前で闘っているのを見ているだけというのは落ち着かないから、こんな不意打ちでも出番があって良かったのだろう。わたしにはないがな!
もちろん後でギルドに文句がいくだろうが。おっ!ギルマスの目が死んでいる!あれはギルマスやギルドも不意打ちだったか!
side あるベテラン冒険者???(イベントの舞台裏)
後方の安全な場所で他の奴らと見物していると、雛鳥のリーダーに見物人を集めてほしいと頼まれた。何人かで手分けして集めてくると、話があるという。
見物人の中には高ランク冒険者も紛れ込んでいる。なにしてんだ、あんた?
さて、リーダーの話はいい機会だからもう少し高ランクの魔物や魔獣も間引かないか?というのだ。人数もかなりいるし、本格的な討伐の負担が軽減されて冒険者の被害も少なくてすむのではないかと。
勢子は引き続き自分がやる、許容量以上は回さないから、と!もちろん討伐実績分の分配のほかに、可食部位の優先配布(肉は買取に出せば報酬の上乗せになる)をする。自分で食べてもいいし、冬への備えにもなるのでオススメだそうだ。
うちは家庭持ちだから肉はありがたい。討伐で稼げても肉まで持ちかえるのはなかなかできなかった。みんな持てる分はアイテムボックスに入れたり、魔法のバックに入れたりするが、討伐はたいていいつも厳しく疲労困憊しており、肉の調達は最低限だ。
今日は完全にお遊びのつもりだったが、装備はいつも通り。外に出るのに丸腰の冒険者なんているわけがない。
みんないつでも出られる格好だ。腹ごなしには丁度いいだろう。俺はやる。
side ある見物人の冒険者???
えっ!出番あるんだ!と驚いたが、なるほどいいメンツだ。これだけのメンツなら活かさないのは勿体ないよな。
ちゃんと討伐実績を考慮してくれて報酬がでるならやるよな。その上、突然の話なだけに色つけてくれるわけだ。さすがリーダー、分かってる!肉は買取かな?ってどれくらいくれるんだろ?まぁ、心付け程度でもいいさ。もともとヤバい時は加勢するつもりで来ているんだろうから。俺は違うよ!見物、見物!じゃあなんで剣持ってきているかって?冒険者が剣がなくて平気な訳ないだろ!腰がすうすうするんだよ!
でもさぁー!ゼットさんまでいるんだぜ?過剰戦力な気もするけど、その分安全が増すわけだから文句なんかないさ。
それにしてもやっぱりカッコいいぜ!高ランク冒険者たち!スゲェー!マジ最高!
なんだかいつもより動けてる気がする?なんだか落ち着いて対応できてる気がする?なんで?
疑問が顔に出てたのか、ゲンコツを食らった。ひでぇー!今戦鬪中なのに!
side とあるギルドマスター???
やれやれ、どんだけ狩るつもりなんだ?まだ狩るのか?全部持ち帰るつもりか?なんてがめついんだ!いやっ!独り占めのためではないのは分かっているが、いつもの討伐なら捨てていくような物まで!ゴブリンはいいのか?そうか!いいのか!そうか、安心した!ゴブリンなんか持ち帰ったらどうしよう、とちょっと心配しただけだ。
それにしてもまだヤルのか?あとちょっとだとぉ!もういいから、誰かあいつをとめてくれ!
それにしても、いつもより動きのいい奴らがいるな!もしかして、適量?だからなのか?
side 主人公
いやぁ!胸が空くような戦いぶり!とはこのことだろう。
やっぱりすごいな!高ランク冒険者たち。安定感と瞬殺具合が気持ちいいよ。
でも今回の掃討戦はぶっつけ本番、みんなお祭り気分で体調だって完璧ではないだろうから、軽くで引き揚げよう。えっ!もっともってこい!って、それっ、あなただけでは?まったくノリノリなんだから!
午後からの魔獣、魔物の討伐もほぼ怪我人もなく終了できてホッとしている。むちゃぶりしたのは分かっているし、ベテラン冒険者たちの好意に甘えた形なのだからちゃんとお礼しなきゃ!だよね。
わたしも頑張るよ!なにをかって?決まっている。みんなの獲物はひとつ残らず持ち帰る!素材は血の一滴たりとも無駄にはしないよ!必ずや街の人たちや冒険者たち、それに縁の下で頑張ってくれたギルドにお返しするよ!
おお!ちゃんと種類ごとに分けてある。ヨシヨシ!
雛鳥と若鳥のみんなも待機しているね。じゃあはじめようか!
おお、みんな驚いてる、ワハッハツ!そうだろ、そうだろ!すごいんだよ!この魔法!
わたしはまず血抜きを兼ねて素材のひとつ、血液の採取からはじめた。見渡す限りの戦果の数々、一気に魔法をかけていく。つぎつぎできる、密閉された甕を雛鳥と若鳥が魔法のバックに仕分けして入れていく。
つぎは、血抜きの終わった獲物をどんどんわたしのアイテムボックスに入れていく。
回収した魔石も一旦すべてギルドに持ち込むので、仕分けしてアイテムボックスへ入れる。今日のわたしは荷物持ちも兼ねているのだ。
途中、ギルドマスターや冒険者の人たちにその魔法はなんだ?というから血抜きの魔法を考えた!といったら冒険者たちはヘェ〜便利。と喜んでくれたが、ギルドマスターは頭を押さえていた。?なぜ?便利なんだよ。しっかり血抜きするとお肉も美味しいし。
森の周りも片付け終わり、撤収準備もできた。ギルドマスターが訓練終了を告げ、ご領主さまたちを見る。わたしは進み出て魔法を展開した。みんなかなり消耗しているはず、討伐の季節はこれからが本番だ。ただのお祭りで疲れてしまっては意味がない。帰りは送ることを考えていた。ご領主さまも城をそんなに空けられないだろう。来る時も馬車の者、歩きの者様々だった。
展開したのは転移の魔法陣、街の前の広い空き地に転移できる。まず安全の確認のため騎士の1人が転移して確認する。問題なかったので、まずは主催であるギルドが先導する形で騎士団とご領主さまと一緒に転移していく。
つぎに見物の皆様、若手冒険者たち、雛鳥を含む新人たちが移動を開始。訓練場となった森の外周部分に取り残された者がいないことを気配探査で確認し、唯一の残骸であるゴブリンのむくろ、そして飛び散った血と肉片。討伐とは血汚れと無縁ではいられない。わたしはいつものようにチリに還す魔法と浄化の魔法を周囲に放ち掃除を完了する。
空気もきれいになった。森は女神さまの眷属の領域でもある。荒らしたまま去ることはできない。女神さま、ありがとうございます。季節の恵に感謝を!今年も着々と冬支度が進みます。
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