間休話2 空の上で

 潜伏中の為、薄暗い操縦席。冗談だ。長時間の任務の為に、少しでも攻撃を受けないように隠れている。


「それではワープドライブに間違いないのだな?」


 通信機の前で浮かび上がる上司の顔を前に、私は深刻な表情で答えた。


「はい、いいえ上官殿。確かに未確認の惑星が長距離を移動し、恒星第四号の付近にワープしたかのように現れましたが、かの惑星は現在も初めて観測されるバリアに包まれ…」


 報告を受けるだけの気楽な仕事だと笑ってやりたい。こっちはもう二日も休憩を取れていないのに。


「簡潔に!」

「はっ、かの惑星は惑星全体にバリアを形成し、超光速でスピタ星系に移動したものとみられます!」


 数日前に突如として現れた直系約一万3千kmの居住可能惑星は、良くも悪くも銀河を賑わせている。今更ワープ技術など珍しくもないが、惑星を飛ばそうなどと狂人染みた真似をやろうとする者はいない。


 直ぐに原因を調査すべく、調査隊が派遣された。私のように単独任務で何人も送り込んだり、技術者を含めたチーム等、同業者は今も惑星周辺を飛び回っている。


「…困ったものだ。どこの勢力にも所属していない惑星などと…ご苦労。いつバリアが解除されるか不明の為、交代要員が派遣されるまで監視任務に当たれ」

「了解しました」


 通信を終え期待のモニターが惑星を映し出す。恒星の光に照らされた地表は、灰色に染まっているがヌーパンの泥沼惑星よりは遥かに美しい星だ。


「少々汚染が進んでいるらしいが、上司の顔を見るより、よっぽど上等な風景だ」


 特務部隊であるストームに入って半年になるが、未だに新人扱いなのが気に食わない。確かに帝国ではエリート揃いの先輩方だが、戦果を上げる機会だもなければ私と似たような立ち位置だっただろうに。


「あっ、バカ」


 二隻の調査船が惑星の側で、接触し操縦士が焦ったのだろう一隻の船が、重力に呑まれ惑星に堕ちてゆく。


「赤熱…調査の通り大気があるのは確定か。ま、何も報告する内容が無いよりは、通信を繋ぐ気不味さは紛れるかぁ」


 突如あらわれた惑星は、この銀河で散乱を起こすだろう。国、商人、傭兵、軍人、ならず者。誰もが強欲に持ち主のいない宝物惑星に群がるのだろう。国は領地と資源を求め、商人は無数のビジネスの種を求め、傭兵は最高級の拠点を求め、軍人はデカイ手柄を夢想し、ならず者は巨大なブラックマーケット新たな国を起こすだろう。


「戦争が始まれば、英雄になれるかな?」


 あってはいけない。そんな未来の訪れを予感しながら、操縦桿を握り締めた私は任務を続行するのだった。

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