間休話1 地下倉庫の物色

 これは私が初陣を果たし、セーフハウスを広げるために倉庫の物品を整理していた頃。これは無数のガラクタとの戦いの記録ログである。


 フィールドワーク社、それは創業千年を超え老舗企業。会社の規模こそ中小企業に留まるが、その歴史の長さから、あらゆる事業に、業態に手を出している。一度は、と但し書きが付くのですが。


 ガイドノイドと宇宙船用のエンジンが放置されていた現状を鑑みて、宇宙に出る為の準備などとその気になっていた私は愚かだったようです。


 地下倉庫の実態、それは勿体ない精神が産んだ。いつか使う日が来るかもを保管するための施設だったのです。通りで古い倉庫のロボットが配置されていた訳ですね。管理を任されていた者が居たのなら、相当な閑職と言えるでしょう。ひなが一日座って過ごすだけなのですから。


 フィールドワークの名が示す通り、創業当初から屋外での活動をサポートする製品を長く扱っていました。自然が荒廃し、岩肌ばかりとなった現代百年前だもキャンプは人気があったようです。


 テント、焚き火台、野外調理器、釣具。今や何の役にも立たないかつての娯楽が廃品となって転がっている。金属部分は溶かしてパッチワーカーへ、釣り糸は糸というだけで使う先がいくらでもあります。燃料は貴重なので保管しておきまさょう。


 ライトは割れて殆どが使えない物になってしまっています。破片が危険ですので使い道のない穴だらけのテント生地に包んで外へぽいです。使える物は出入り口の壁際に置き場を作って、そこに配置します。余ったものは荷物置き場にでも置いておきましょう。


 続いてあらわれたのは、いくつものタブレットが入った木箱。いつ頃の物なのか、既にタブレットより木材の方が貴重な時代です。機能面はお亡くなりになっていますが、箱に入れられたおかげでしょうか、液晶が無事の個体が数点あります。元がタブレットですので、それぞれのキバンに手を入れ、私に直結して算譜プログラムを構築します。昔は家庭用遊技機程度の演算能力で宇宙に出たのですから、これでも上等なものです。私を使っても良いですしね。


 水着は使い道がないので外にぽいです。着ても良いのですが、みずみずしいスキンを手に入れて、倫理的に服が必要となった後のお話です。人類の前で服も着ない蛮族と酷い扱いされたくありませんからね。


 次に飛び出したのは、これまた貴重な書物です。内容はともかく、紙の本は貴重になりました。紙の部分は虫に食べ尽くされてしまっていますが、表紙の色ぐらいは判別できます。残念ながらこれもゴミです。


 続いて出てきたのは古代からの伝統技術。花火の入った袋が縦六百三十mm、横四百四十mm、深さ三百mmの箱いっぱいに入っている。そんな箱が五十以上も積まれている。この事業は上手く行かなかったようで、大量の不良在庫が積み上がっています。あのロボットが配備されたのは、大量の火薬を管理させる為だったのかもしれませんね。


 花火から火薬を取り出せれば、武器として頼もしい存在となります。廃材とスクラップで出来た銃がどこまで信用できるのか不安ではありますが、いくつか試作しておきましょう。


 丁度いい所に屋外用の折畳式の卓を見つけました。無事なものがいくつかありますから、一番大きな物を配置して、残りは予備に保管しておきましょう。


 近くに保存食が入った鞄が置いてありました。避難時に使う防災対策に売り出された商品の様です。私に飲食物は必要ありませんが、人間のふりをする可能性はあります。廃棄はいつでもできるので、念の為に保管しておく事にします。


 注射器や金属製のナイフ、酸素ボンベ。まとまりの無い廃材を相手に、この後数時間格闘を続けることとなったのでしたのでした。

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