エピソード9「仙川さんはセンセーショナル」
第93話 奴隷多すぎ問題
再開します。
週二回更新は死守します!
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ゲオゾルド達を隷属化して数分した処で、九十九はふと冷静になる。
いやいや、ゲオゾルドはもちろんだけど、貧民街のチンピラどもをどうするよ? こんな連中、町のホテルに長い間放置とか難しいだろう!? 金も馬鹿にならない。
泣くワーライオンとダークエルフを見ながら、九十九は改めて頭を抱えた。いっそ殺してしまいたいがカルマポイントのこともあるし、実際殺せば後悔することは目に見えている。
特にゲオゾルドらは東方八聖とかいう肩書があるとなると、探しに来る者もいるだろう。
マジでどうするよ、とりあえず森の中で自給自足で何とか生き残るように命令するか……。いっそトマトやジャガイモなんかを育てさせるのもありだな。
そう考えた九十九はMIAにサポートを求める。
「MIA、この周辺の森で貧民街のチンピラと獣人達、それにゲオゾルド達が棲めるような空き家ってある?」
「あります。修復が必要ですが雨風がしのげる家屋があります。ヴァレリーヌさんが棲む大樹から3キロの処に、周辺で最も破損が少ない家が狭いエリアに6軒集まって建っています。ドローンの報告ではいずれも60年以上前に建てられたモノのようです」
「おっ! いいね。そこにみんな集めるか」
「ただモンスターが頻繁に周辺を徘徊しております。オークにトロール、リザードマンにコボルドが姿を見せる場所です」
「はあ、なるほど、危険だから人が棲まなくなったのか。でもゲオゾルド達だったらモンスターを蹴散らすことも簡単だろう。――そうだ! 警戒にサーベルウルフも配置すれば安全になるんじゃないか?」
「サーベルウルフを警備に充てれば広域で危険度は下がると試算できます。ゲオゾルド嬢と昼夜分担して警備に当たれば危険な〈大樹の森〉でさえも十分生活できるのではないでしょうか?」
「となるとあとは家の修繕か。うむ……チンピラ共が大工仕事ができるとは思えないな。おい、ゲオゾルド、おまえ大工の経験はあるか?」
ゲオゾルドは九十九の問いに顔を挙げる。その顔には焦燥と混乱がまだ鮮明に浮いていた。
「大工……何の話かわからない」
「普通の会話だよ。『家の修繕や改築を道具を使ってやった』ことがあるかって聞いたんだよ?」
「そ、そんなこと、するわけないだろう!?」
「はあ、どういう意味だよ?」
「大工などという卑しい仕事なぞしない! わたしは誇り高き戦士だぞ? 戦士がそんな卑賎の仕事をするわけがなかろうが!」
そのゲオゾルドの物言いに九十九はカチンときた。
「大工が卑賎? はあ――わかったよ、おまえが何でそんなに弱いのか。俺に有効打の一つも浴びせられなかったのかがな!」
「な、な・何が言いたい?」
「大工仕事を馬鹿にするようなアホだから戦士としても3流なんだよ! 世間知らずで無駄にプライドが高いから本当に大切なものがわからないんだよ! おまえが俺に負けたのはただただ頭が悪いからだ!」
九十九ははっきりとワーライオンの乙女に向けて断言した。するとまもなくゲオゾルドが瞳からの滂沱の涙を流す。
終いにはオンオンと号泣し始める。
罵倒してスッキリした九十九だったがすぐに我に返る。
「ちょっと言い過ぎたかな? 口が滑った」
「感情的ではあったと思います。しかし職業の卑賎を諫めるのは必要だったと推察します」
MIAの言葉に九十九は少し胸が軽くなった気がした。
MIAは報告に移行する。
「〈不時着時自動システム〉で動いている〈ピピン〉ですが、二つのこの星独自の鉱石の分析を終えたことで生産性が大幅に上がったことを報告します。加えて埋蔵された魔石の鉱床も発見しました」
「えっ? 魔石って地面に埋まっているの? モンスターの中にあるものだけじゃなくて?」
「はい。まだ魔石に関する研究は始まったばかりですが、地中に巨大な魔石が埋まっているのを発見しました。先日入手したキュクロプスの572倍の魔石が、地下974メートルの場所で発見されました」
「へえ~。モンスターの死骸から出てきたとしたら、どんなモンスターなんだろう。まあ、利用できるんならばよかったよ」
「はい。間もなく魔石から動力エネルギーを抽出する技術が構築できそうなので続報をお待ちください。報告した新たな金属を使えば予想よりも早く、拠点建設が行えそうです」
「そこまで画期的な発見だったんだね」
「はい。王宮の資料・保管庫を参照したところ、一つがミスリル、もう一つがアダマンチウムと呼ばれている金属でした。特にミスリルはカルデェン粒子の伝導率が高く、プロセッサー、ブリッジ、サーキットボード、コネクター、スロットなどの部品に使うことができ非常に利便性が高いです」
「おおっ! それはなにより――」
九十九はわからないまでも開発が順調であることを喜んだ。〈銀河第三連合〉とのコンタクトが取れないとなると、〈ピピン〉を頼りにするしかないと思えたからだ。いずれは大工場に成長してもらい、ハイテク装備の修繕もできるようになって欲しかった。
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