第287話 思わぬ再会
「元・闇のギルドさんは我慢強いのねー? 痛みで気絶してないのに私は驚きだわ」
「あのっ! 怖い顔の――、ユージンさんは大丈夫そうですか!?」
成り行きでユージンに付き添っているスピカは、心配そうな顔でリンカに尋ねる。
「うーん……、私にできるのは自然治癒のお手伝いだからねー。あとは本人次第だけど、まぁ頑丈そうだから大丈夫でしょ」
リンカはちらりとスピカに目をやった後に、再びユージンに視線を戻してそう言った。「本人次第」と口にしながらも、彼女は全力で回復を施しているのだろう。頬のあたりを汗が伝い、相当の魔力を放っているのが伺えた。
「あたしに手伝えることはありませんかっ!? えっと……、あれ? リンデ先生……?」
「おやおや……、よーく見ると顔はけっこう似てるらしいんだけど、よく気付いたわね? 私は
リンカは、カレンやランギス、それにシャネイラといった仲間からの噂によって、「重力魔法の使い手」としてスピカのことを知っていた。
ユージンが運び込まれた際に、「空から少女が運んできた」と聞いていろいろと察していたらしい。
「まぁ、なんてーか……、優秀な魔法使いちゃんになら手伝えることあるんだけど、他所の子に頼むことじゃないからねー」
そう言ってリンカは、近くにいた部下に声をかける。指示を受けた救護隊の隊員は、一瞬戸惑った様子を見せたあとに頷いて、部屋を出ていった。
そして数分後に戻って来たかと思うと、その傍らにはスピカもよく知っている少女の姿があった。
「あの――、お呼びですか? リンカさん?」
「あれっ!? ウェズンさんですか!?」
「あらあらぁ……、スピカさん? どうしてこんなところに――」
思わぬところで思わぬ人物との出会い、スピカとウェズンはお互いに目を丸くして見つめ合う。
「はいはい、同級生とのご挨拶はあとあと。こっちは急ぎでねー。ウェズンちゃん、悪いけどさー、ちょっとばっかし力貸してほしくって」
リンカは気怠そうな言い方で、スピカとウェズンの話を遮ると小さく手招きをした。そして、まるで忠犬に「お手」を求めるかのように手を差し出す。
「ウェズンちゃん、この手をぎゅーっと握ってくれるかな?」
「ええ…っと、握るだけでいいんですの?」
「そそ、愛しい人の手を取るように、ぎゅー……、とお願いね?」
ウェズンはリンカの例えにかすかな苦笑いを浮かべたあと、言われた通りにリンカの手を力強く握る。
すると、彼女はまるで透明人間が膝の後ろに触れたかのように、ガクッと膝を折ってその場に余った方の手を付いた。
「ウっ…、ウェズンさん!?」
「なっ……、なにを? リンカさん、一体なにを…したんですの?」
「ごめんねー、リンカちゃん。ちょっーとばっかし魔力消費が激しくってさ。補給させてもらったわよ」
相手が警戒心なく手を握った際にのみ発動できるリンカの魔法、「マジカルドレイン」。これこそがリンカがウェズンを「秘密兵器」と言った所以。
彼女はウェズンを「魔法使い」という戦力的な意味で捉えてはいなかった。もっとも能力としては十分なのだろうが、正式所属しているわけではなく、ましてや学生で療養中の彼女を戦わせるつもりなど毛頭ないのだ。
ただ、自分が大量に魔力を消費してしまった際の切り札、「魔力貯蔵庫」として、緊急事態では利用することは考えていたようだ。
「遠慮なしにいっぱいもらっちゃたけどさ? 治療代だと思って大目に見てよね?」
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