90話 【二章】エピローグ3
様子のおかしい凛がお茶を用意している時、蓮司は柔らかい声色で切り出す。
「篠原さん‥‥‥僕は篠原さんが悪いとは思ってないですよ?どうか、肩の力を抜いて下さい」
俯くシノとおばさんに優しく声をかけた
「森永さんが言ってた‥‥‥シノを煽っただけだって‥‥‥」
「でも、違うよね?凛の事が大好きなシノは脅迫されなきゃあんな風にはならない‥‥」
蓮司は頭下げた。
「凛を守ってくれてありがとうございます」
「やめて!江藤君!ダメ!暴力を振るった私が悪い!それで
シノも深く頭を下げたままだった‥‥
「シノ‥あの場で振り下ろされたのが、僕じゃなくて凛だったら‥僕はシノを許せていない‥‥‥」
シノは顔を上げると
蓮司はゾクッとさせるほど表情が無くなっていた‥
「森永さんはそれをさせる事も出来た‥‥」
シノは目を強く瞑り下を向いた
「シノ自身も自分を許せなくて最悪な結果になっていたかもしれない‥‥」
「ヤダよ‥」
キッチンで泣きそうな凛の小声が聞こえた
‥‥‥‥
それが何を意味するのか、ここに居る全員が分かっていた‥
「丹羽さんのボイスレコーダの事、僕だけが気付いたハンドサインのタイミング‥‥結果論だけど‥シノの行動はどれも自分が出来る最善の行動だったんだよ‥‥」
「‥‥そして振り下ろしたのが優しいシノである事‥‥‥辛い役回りをさせてしまったよね‥‥‥」
キッチンで鼻をすすりながらエプロンで涙を拭う凛が笑顔で強く頷いていた。
「僕も救われた‥‥凛と出会って‥シノにも出会えて良かったよ?」
優しい笑顔の蓮司を見たシノは
「‥‥‥ぅぁあ〜〜〜〜〜〜‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
詰まった物が落ち、塞き止めていた物が吹き出す様に大泣きするシノ
涙をいっぱいに溜めたおばさんはシノを抱きしめ、側に駆け寄った凛も泣きながらシノを撫でていた‥‥
しばらく泣くと
シノは落ち着きを取り戻し目を腫らしていたが表情は前の様に明るい顔に戻った気がする。
おばさんは改めて母さんに謝罪したいと言っていたが謝罪では無く同級生の母として仲良くして欲しいとお願いした。
そして、帰る間際‥‥
「シノ?‥‥‥‥」
凛は玄関でシノを呼び止めた
「この前の屋上でさ‥‥‥分かっちゃったかもしれないけど‥蓮司‥‥‥もう一人居るんだよね‥‥ここに‥‥」
凛は自分の胸ね真ん中を押えて困った笑顔になる
シノもその時の別人だった蓮司を良く覚えていた。
「でね?まだ、ちゃんとには言えないんだけど、その関係で今、蓮司と蓮司のお母さんと一緒にここで暮らしてるの‥‥」
‥‥‥‥‥
「‥‥ここに来た時からずっと凛チャと江藤君はもう結婚してたんだと思ってたけど‥‥‥江藤さん?‥」
シノはいつもみたいにからかう様な目で凛を見た。
真っ赤になった凛はシノのホッペをプニッと摘み
「違うからっ!」
‥‥‥
シノの頬を軽く撫で両手を取り
「‥‥‥‥ただ、それをちゃんとに言えなかった後ろめたさがあったから、シノに悲しい思いをさせてたと思うの‥‥」
「ごめんなさい‥‥‥」
「凛チャ‥‥‥謝らないで?‥そりゃ少し水臭いとは思ってたけど‥分かれば今は楽しめるし‥」
楽しそうにニヤニヤするシノに照れる凛
「時々は私とも遊んでね?」
シノはニッコリ笑うと手を振り
「おやすみ凛チャ!江藤君!」
おばさんと二人笑顔で帰って行った。
見えなくなるまで玄関先で見送る蓮司と凛
シノと仲直り出来た二人は安心して緊張の糸が切れたよう眠くなる。
階段をウトウト上がる凛は蓮司に半分もたれ掛かりぴったりとくっついている‥‥‥
甘えているのかと思いきやマジで寝そうらしい
目の開かない凛が蓮司の部屋の中まで普通に着いて来たので一旦凛の部屋のベッドに寝せて来た。
蓮司も寝ようとスマホに目をやるとメッセの通知が‥‥
「こんばんは、この前凛ちゃんから貰ったアドえとくんで間違い無いよね?」
リンちゃんだった
二時間も前のメッセだったし時間も時間だったので一瞬迷うも既読を付けてしまったので返信しておいた。
「こんばんは、間違いないよ」
‥‥‥‥‥‥直ぐに既読が付いた
「良かった 間違えてたらどうしようと思って寝れなかった(笑)」
「ごめんね?色々取り込んじゃってスマホ見れなかったんだ」
「大丈夫だよ!」
「あのね?」
「来月少しだけオフが貰えるんだけど会えないかな?」
‥‥‥‥
少し迷った蓮司は
「あ!もちろん凛ちゃんもね?」
返信する前に追加で送られて来た。
「分かった、聞いておくよ」
と返信した。
数分後
ブーッブッ
「もしかして凛ちゃんって彼女?」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「友達だよ」
蓮司は改めて梨花に問われ気持ちがモヤッとするのが分かった‥‥‥
大切な友達であり‥‥‥‥大事な人である事には変わりない‥
同時に凛はETOのファンであり、マネージャーである‥
‥‥‥今後、ETOが居なくなった場合、僕らの関係は変わってしまうのだろうか‥‥‥
蓮司が初めて経験する類の不安だった‥
【二章】完結
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〜おまけ〜
因みに蓮司が入院中、丹羽さんが帰った後
嬉々として着替えとタオルを用意した凛は有無を言わさず蓮司の服を脱がそうとワチャワチャしていると看護師さんが現れ変な目で見られる。
「‥‥‥‥‥江藤さん、頭を濡らさないならシャワーは出来ますよ?」
とビニールキャップを蓮司に渡した
「‥‥‥‥」
「‥病院です‥‥変な事はしないで下さいね?」
「「‥ごめんなさい」」
凛と蓮司は真っ赤に俯いて謝った
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らくがき
ありがとうございました。
にじむです
いや〜‥書いてて大変でした(笑)
本来なら残酷表現の多かった二章ですが、かなり気を使い表現を削り変えました。
出来るだけモヤモヤしないストーリー構成にしたいとは思っています
三章は緩い展開が多めで書いて行こうかと思っています
引き続き【時限の歌姫】をよろしくお願いします
次回、【三章】 Diva 公開予定です。
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