第66話「デコトラ ト 人造デコトラ」
俺様達が教会地下の研究施設で見つけたカプセルの中では、機械でできた天使のような何かが脈動していた。
”それ”は見ている間にも少しずつ成長しているのが見てとれる。
「おいおい、あいつらデコトラを自分達で作ろうとしてるみたいだけど、そんな事可能なのか?」
【ご案内します。分析した所、不完全ではありますが可能かと思われます。
彼らはデコトラと親和性の高いダンジョンコアに
「……俺様達、本来はただの輸送機械だぞ? 崇めるようなもんじゃないと思う……」
「あーしもじゃばっちと同じ感想なんですけどー ╮(๑•́ ₃•̀)╭」
とにかく、見るだけのものは見た、という事で俺様達はさっさとその場から退避する事にした、ここにルクレツィアがいるというわけでもなさそうだしな。
「なぁどうする? あれをぶっ壊すか何かして妨害した方が良いと思うか?」
「んー、あーしもそうした方が良いとは思うけどー、
あれ本当にカミサマの代わりになるわけー? (´,,•﹏•,,`)?」
【ご案内します。あくまで擬似的なデコトラですので、知性も何も持たない機械の塊ができるだけかも知れません。このような事態は想定外ですので、データがとにかく不足しています】
「なぁ【ガイドさん】、あいつら神を作るとか言ってたけど、ここには本当に神が存在していないのか?」
俺様はレイハが招聘した神様とかを見まくっているのでどうも信じられなかった、この世界には普通に魔法もあるしなぁ。
【ご案内します。この世界には間違いなく上位的存在としての『神』は存在しておりますが、光翼教の主神もしくは崇めるべき存在が彼らからは認識できなくなっているものと思われます】
「レイハとか普通に神様呼び出してたもんなぁ。どこ行っちまったんだろうな?」
「あーしはよくこの教会で修行したり祈ってる人達見たけどー、別に何もモンダイ無い感じ?だったけどー? ୧( -᷅_-᷄ )୨」
【ご案内します。一般の信者や信徒にとってはそれでも良いのでしょうが、上層部にとっては大問題なのでしょう。
例を上げるとレイハ様ですが、おそらく国元では高位の巫女であったものと思われます。
そのような人物が、いざという時に神の力を行使できないというのはかなり問題となるはずです。
その為にも彼らは無限の可能性がある『デコトラ』により、擬似的な神を欲するに至ったのでしょう」
「なんかなぁ、怪しげなデコトラらしきものが悪さして回ってるらしいってのに、この上デコトラを増やさないで欲しいぜ」
「ねぇじゃばっちー、どうする?レティの事もだけど、このままで良いはずが無いよね? ( •́ ̯•̀ )?」
「あー、一旦戻ろう。俺様達だけの判断だと手に余る、リアやレイハにも相談しないとな」
「……てなわけでよ、教会の地下ではろくでもない実験をしてた」
「よし、潰しに行こうか」
リアさん? ちょっと待ってね? いきなりそういう事したくないから俺様達戻ってきたんだから。
「にわかには信じがたい話じゃのぅ、お主らの言葉を疑うわけではないが、そもそもデコトラというのは作り出せるものなのか?」
「何かよくわからん機械、つまり鉄でできた動く何かはできつつあったぞ、あれ放置して良いのかなぁ」
朝になって俺様達はリアやレイハ達にも見てきたものを説明はしたのだが、『神の模造品を作っている』というのが理解に苦しむようだ、おまけにそれがデコトラだしな。
「んじゃ、とりあえずぶっ壊しに行く?」
リアさん? とりあえず潰すとか壊すのやめようか。俺様もそうしたいけど、あいつら別に悪い事をしてるって決まったわけじゃないからね?
「神の存在や慈悲を感じられぬ、というのは信仰する者にとっては死活問題になりかねん重大事ではあるし、まがい物でも何でも用意しようというのはある種の信仰的行為といえる……のか?」
「レイハ様の価値観では、それは別に忌むべきものではないのですよね?」
「要は祭壇とかに飾っておる偶像とかと変わらんからの。わかりやすい目印が欲しいというだけならわざわざ止める理由も無いんじゃが、デコトラ絡みというのが放置して良いのかどうか」
「けどあいつら、闇の魔力も何かに利用しようとしてる感じはしてたぞ、あれ弄んでも良いもんではないだろ」
「それは聞き捨てならんな、具体的には何をやっていた?」
ケイトさんが確認するように、意外にもレイハはそれほど拒否感や忌避感を示さなかった。しかし、さすがに闇の魔力まで利用していたのは見過ごせなかったらしい。
【ご案内します。彼らはデコトラの効率的な増殖を促す為に闇の魔力を流し込んでいると思われ、直接的に利用しようとしているようには見えませんでした。
推測ですが、ある程度『神』が育ったらルクレツィア様の能力で浄化させるつもりではないでしょうか】
「おいおい大丈夫なのかそれ」
「ますます放置するわけにもいかなくなったのぅ」
「ねー、結局私達って、ここに何しに来たの?」
「あ」
「そういえば、ギルマスからの手紙を渡して、リアとジャバウォックの人となりを見てもらってそれで終わり、なはずじゃよなぁ」
リアの一言で俺様もレイハも本来の目的を忘れていた事に気づく。
「ちょっとぉー!レティ見捨てないでよ!あと、あーしも今は見つかるわけには行かないんですけどー! ٩( •̀ з•́)وムキー」
「待て待て、別に俺様達は見捨てるとか言ってない。それに牢に入れられてるだけだからそのうち出してもらえるんじゃないか?」
フォルトゥナもダンジョンコアを渡せばとりあえず問題は無い、のかなぁ?」
「この先どう転がるかわからぬぞ。とりあえずフォルトゥナには隠れてもらって面談を穏当に済ませておいた方が良いんじゃろうなぁ」
「えー?デコトラでみんなぶっ壊した方が早くない?」
「リア様、とりあえずは相手の出方を見ましょう、今取り返しのつかない事をするわけにも行かないでしょう」」
3度めともなるとさすがにケイトさんがリアを止めに入った、もう色々ありすぎてどうしたら良いのやら。
ひとまず枢機卿から呼ばれるんのを待つしかないのか?
「高き空の彼方におわします至高なる神よ、卑小なる我の祈りをどうか聞き届け給え、我は御身の……」
「今日も礼拝ですか、御熱心な事ですな、神は応えて下さいましたか?」
「……いえ、何も、私は至らぬ未熟者なのだと思います」
「まぁ良いでしょう、貴女の中には確かに神の奇跡としての力がある、それで良いではありませんか。ですが、その力が何のために与えられたのかを自らに問い続ける事は大事ですぞ。
今日も食事を取っておらんのですな?」
「私は、罰を受けている身ですから」
「ですが、水も飲まないのでは命に関わりますぞ、我々は罰を与えはしましたが、別に貴女に死んで欲しいわけではないのですからな。
さぁ、この水だけでもお飲みなさい。これはもやは命令です」
「で、飲ませたんだろうな?」
「もちろんですとも公爵様、これで我らの悲願にも近づこうというもの、あの者は神の声も聞けない無能ですが、最後に役に立ってもらわないと」
「さて、どちらが無能かはすぐにわかる事になろうよ、精々俺を失望させないでくれ。でなければ遠路はるばる来た意味が無い」
「いえいえ、必ずや公爵様のご期待に応えてみせますとも。我々の神を創り出してみせます」
「そうでもなければ、お前らの怪しげな研究に出資などしない、せいぜい私を楽しませてみせろ」
次回、第67話「悪役令嬢ト枢機卿ト公爵」
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