第65話「デコトラト教会ノ地下」
「じゃばっちー、もう少し見た目なんとかならない? あーしみたいに猫になれば良いのに ∩(^ΦωΦ^)∩」
「デコトライガーだと足音がな、生っぽくなるには練習が要るんだよ」
俺様は今、全長10cmくらいのデコトラになっている、まるでミニカーだがこの場合仕方ない。
『スキル:重力制御』と【ガイドさん】の完璧な制御で走る時の高さは安定してるし、石畳の段差や隙間なぞ無いかのようにスムーズに走っていえう。
「なんか、走りが滑らか過ぎて軽くキモいんだけどー。((((・ω・ノ)ノ」
引かれてしまいましたよ……。
俺様は今、分身の状態でフォルトゥナの案内で夜の教会の奥へと向かっている。
本体の方はリア達が眠っているコンテナのままだ。あの状態は、ちょっとやそっとの手出しをされても大丈夫と【ガイドさん】も同行している。
【ご案内します。あれを何とかする為には、教会そのものを爆破する勢いでの破壊活動が必要ですが、現状そのリスクは極めて小さいと判断いたしました】
暗殺しようにも鉄製の箱の中では手出ししようが無いというわけだ。さらにはコンテナの外壁にはデコトラブレードでハリネズミのように刃を立ててある。
「フォルトゥナがわざわざ逃げたのは、教会の奴らにダンジョンコアを渡したくなかったという事か?」
「そーそー、あいつら、いつの頃からかレティの力を邪魔に思うようになったっぽくてさー、ロコツに怪しくね? と思ったわけ。
で、ある時ちょっとこの教会を探ってみたんよ、そしたらヤバめなもの見つけちゃってさぁ。誰にも言えなくてマジ困ってたんですけどー。。゜(゜இωஇ゜)゜。」
突然夜中に戻ってきたフォルトゥナは、どうしても見せたいものがあると俺様を連れ出したわけだ。
「こっちこっち、この窓の上から地下室の方にに回り込めるからー、ってか、じゃばっちそれで壁登れる? ( `◔ω◔)?」
「いや問題無いが」
俺様は重力制御で壁登りも全く問題無いからな、ジャンプなどしなくても優雅に壁面を走れる。自由自在にスラロームだってできるぜ。
フォルトゥナからは「ゴ◯ブリっぽくてマジキモ……」とドン引きされましたよ、納得行かない。
案内についていくうちにどんどん教会の奥へ地下へと向かっていく。
「ここの階段を降りていくの、音立てたらダメだからねー? (。•ω- 。)ノシ」
「まぁそれも壁をそっと走っていけば問題無いと思う」
俺様は慎重に音を立てないように地下に向かう螺旋階段を下っていく。これだけ巨大な建築物なら地下室くらいあるのは当然としても深すぎないかこれは。
やがて、階段は終わり、目の前には重厚な扉が現れた。その扉をそっと開けるとまだ奥がある、どれだけの規模なんだこの地下部は。
広い空間にはどう考えても教会にはそぐわない機械が並んでいる、その機械のいくつかは稼働しているようで、低い振動音が響いていた。
機械からは太いパイプが何本も奥へ伸びている、もうこれは宗教施設とかじゃないな。一体何をやっているんだ?
「この扉の奥、この先に行きたいんだけど、誰か来るまでちょっと待たないとだねー。( ˙꒳˙ )スンッ」
「いや俺様なら『念動力』でこれ開けられる、ちょっと下がってくれ」
俺様はいわゆる超能力的なもので周囲のものを動かす事ができる。ドアを開けるくらいはなんでもない。
「じゃばっちホントなんでもアリだねー。引くわー。((((・ω・ノ)ノ」
なんかずっとキモがられてるなぁ、ちょっと悲しい。
フォルトゥナと共に奥に進むと、そこには青白い光を放つ巨大な透明の円筒形カプセルのようなものがずらりと並んでいた。中は液体で満たされている。
まるでどこかの映画で見たような光景だが、生物の何かを研究する医療設備か実験室っぽくないか?
「何だここは……、まるで研究施設だな」
「まるでもなにも、もろ研究施設なんですけどー。中に入ってるこれ、レテイが浄化する為に持ち帰ってきたものばかりなんだけどー。せっかくレティが浄化してくれたのにまーた闇の魔力が吹き上がってるし ٩(๑`^´๑)۶」
カプセルの中をよく見ると様々なものが入っていた。フォルトゥナの言うように黒い煙のようなものが吹き出してきている。一体何のためにこんなものに入れているんだ?疑問ばかりだぜ。
【ご案内します。これらはデコトラのものと物質構成が似ております。ですが観測できるデコトラ因子が大きさのわり少なすぎます、何らかの方法でDEを抜き取っているものと思われます。
また、闇の魔力と呼ばれるものも分離して抜き取っているようです】
つまり教会はデコトラの力か何かどころか、闇の魔力まで利用しようとしてるって事か?いや何だってそんな事してるんだよ。
「マジ? だったら浄化して返しておいた、とかレティに言ってたのは嘘だったわけ? 何だってそんな事を? ୧( -᷅_-᷄ )୨」
「闇の魔力も残っていると言うなら、それも集めて回っていた、って事か?さっきあんなに存在を否定していたってのに」
教会が何をしたいかが全く理解できなかった。教義だなんだとルクレツィアに押し付けていながら、裏ではこのような研究か何かをしている。
【ご案内します。ジャバウォック様、もう一つ報告したい事があります。この教会は宗教団体の中枢といっても良い場所なのでしょうが、『神の力』を全く観測できません】
「えっと、ごめん【ガイドさん】、何を言ってるわけ?」
【ご案内します。以前レイハ様が何度も神を招聘しておられましたが、どの神々も凄まじい存在感でした。また、周囲に放射されている覇気にも似た力を観測いたしましたが、
私はこれを『神の力』と仮に定義つけておりますが、この教会ではそれが一切感知できません】
この声は念話的なものなので同じデコトラのフォルトゥナにも聞こえていた。
「ちょ!ここってカミサマがいない、って事?……ここでそれってヤバくね?皆いったい何を拝んでるワケー? Σ(OωO )」
「あるいは、何も無い所を拝まされていたって事か?」
「あ、誰か来た、ちょっと隠れよ?」
フォルトゥナに言われるまでもなく、俺様は隅の方に隠れる。
入ってきたのは先ほどの枢機卿とその側近らしき男性だ。
「ルクレツィアの様子は?」
「は、地下牢にて大人しくしております。今も壁に向かって祈りを捧げておりますよ」
「フッ、ご苦労な事だ、いもしない神を崇め続けているとは」
「悪いお方だ、ですが彼女の場合、自らの身体に神の奇跡を宿しているからこそM信仰を失わないでいられるのでしょう」
「我々はそうもいかん、我々はいくら修行しようといくら教団での身分が上がろうが一切神の姿を見る事も感じる事もできん、それでは困るのだ」
「フォルトゥナは残念でしたな。封印などの余計な力は使えるようですが、あれではその辺の治癒魔法を使える魔力持ちとそう変わりません」
二人は会話しながら奥へと進んでいった。俺様達も後を追うと、ひときわ巨大なカプセルが鎮座していた。
その中身を見て俺もフォルトゥナも息を飲んだ。その中にあるのは明らかに何かの機械だった。しかし機械なのにまるで生物のように脈動している。
全身に管がつながれたその姿はまるで天使のような何かだった。
「我々には神がどうしても必要なのだ、だがいくら待っても拝んでいても訪れはやってこない。
だが、『デコトラ』なら、コアに各地から集めた「デコトラ因子」を流し込めば新たなデコトラを作れるはず。そうすればいすれ我々は新たな神を得る事ができる」
そう語る枢機卿はまるで神に祈りをささげるようにカプセルにすがりついていた。
おいおい……大丈夫かこいつら。
次回、第66話「デコトラ ト 人造デコトラ」
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